記事一覧
ショートショート『あの子』
あの子は今も元気だろうか。
朝ドラのヒロインぶるように、窓にいつも、もたれかかっていたあの子は
今も元気かな。
はっきりといってしまえば、顔はあんまり見たことがなかったような気がしたあの子は
今も元気かな。
保健室のベッドで眠っていた時、くちづけをしたような感覚があった。
それはそれはやさしかった。
あの正体は誰なのか。
夢から覚めた時に、ぬいぐるみを抱いていたはずの両手に
不自然な温
日記 帰省する頻度が増えたわけ
昨日、ある大学の学内ライブを見に行った。
自分のふるさとである県のため、帰りに弾丸で帰省しようかなと思い、母に連絡。
「時間遅くなっちゃったけど、今から帰ってもいい?」
数十分後。
「いいよー、いつでも帰っておいで」の返信。
決して寂しくなったとかでは無い。
なぜならこの前の学祭で会ったばかりであるし、なんなら家族と喫茶店にも行った。
終わった時間は20:30頃。
一緒に行ってくれた同サ
ショートショート「あの香り」
喫茶店に行って、パフェを食べていると
マダムが2人窓際で目を閉じ眠っているようだった。
この辺りは、栄えていてはありながら人通りが少なく心地よい、簡単に言えばお気に入りで、難しく言えば宝物であった。
作家としての人生を歩み始めてからというもの、普段と変わらず私は家で集中することに対して無頓着すぎる故、こうして外で読者からの便りを眺めたり、創作のテーマなどを考えたりなど、このお店の固めのプリンを嗜み
ショートショート『あ・い・す』
アイスクリーム 甘い 甘いなら 幸せである
愛すこと 甘い そして濃くもあり 幸せである
ふたつに共通すること
それは とけて 無くなること
不老不死の未来が叶うまでは
生きものはみんな
皮膚も臓器も体液と一緒にとけていく
骨になって死ぬ
アイスクリームという食べ物は
熱いところに置いてしまうとすぐ溶ける
だから私の周りは「早く食べなさい」と言った
思い出というもの
それは一瞬
一生のこ
ショートショート『地球の広さを知ったとき』
「ばあちゃんは、まだここさ行ったことねぇんだよ」
私は小さい頃、世界はとても小さなものだと思っていた。
番組に映るところだけが、国の全てであり、きっと自分も大人になれば世界一周とかいう壮大なことも簡単にできると思っていた。
自分が小さい頃には既に70歳を超していた祖母は、それはそれはいろいろなことを教えてくれた。
大好きだったおやつのレシピ、母が全然作らないような手の込んだ料理の振る舞いだとか、
vlog 一歩を踏みだして
お元気ですか。澄幹露乃です。
そろそろいろいろと身バレしそうなのですが
別にそれは良いとして大学2年生前期の振り返りをしようと思います。
今日はいつもと違って、いつも話しているような口調で書けたらいいなと思います。
予めワンクッション置きますが、暗い内容もどうしても含んでしまうのでここで見たくないと感じた方はそっと閉じて頂けると嬉しいです。
4月
無事フル単で2年生に進級し初めて大学で後輩がで
短編小説『風向きと手紙』
お元気でしょうか、お元気で、いられているでしょうか。
すでに騒がしい街と過ごしながら何年経ったのでしょう。
いつ会えるか分からないあなたへ、つらつらと手紙を書いていられるくらい、穏やかな毎日です。
最近は、悪い噂が強いですが、それにも負けずに生きられています。
もしかすると、近いうちに会えるかもしれないし
会えないまま去っていくかもしれないですね。
明日のことって、前の日からわからないから
ほん
19歳の自分が考える「最期」と「葬式」
はじめに これは「死にゆく過程」というものがこういうものです、ということを定義しているわけでもなく、そして、書いている今の自分が死ぬ間際にあるわけでもありません。
今生きているうちに自分が「死ぬ」ことについて、今までの人生からどう思うようになったのかを書かせていただいたものです。
絶対的な事実として、いつか、私も皆さんも、死ぬのです。
ずっとずっと先のことにもなりますが空も植物も建物も、絵も
ショートショート『メロンパン』
食いだめができない人間は、毎日何かしら口に入れてそれが消化されるまで活動を行う。それは数時間、人によっては半日くらいだろうか。
とにかく何かを「食べたい」と感じられているのなら、感じられるなりに、時々は特別なものを与えないと人は食べる気力をも失いそうになる。
だから私はひとり、メロンパンを食べる。
メロンパンは、食事なのかおやつなのか分からない部類だからだ。
大体は大きくて、クッキーのような歯切
ショートショート『マスク』
顔に当たるのは毛布だけがいいなと思っているけど、3年も続いたある時期が明けてもまだ続く文化、というか外せないものがある。
「マスク」
本来は外気に生息する病原菌から身を守る術のひとつ。鼻と口をしっかりと覆い、鼻に乗る針金にもしっかり折り目を付ける。
でも、世の中から自分が守るべきものはマスクだけじゃ解決できない。
この前は病院に行き、薬を処方してもらった。
また飲む量が増えた。
その前は人前
ショートショート『休日』
人は眠らなければならないし、食べなければならない。
お風呂にも入らなきゃいけないし、汚れた服は洗濯しなきゃいけない。
それでも、駆け回って過ごす私たちは素晴らしいから、週のどこか一日だけでもいたわるというものは必要だと最近感じるようになった。
焼きたてのトーストを熱いコーンスープで流し込み、窓を開ける。
それからみずみずしい野菜の繊維をかじって、咀嚼して、まだ食べ物を取り込めるという達成感を味わ
短編小説「カレーライスのはなし」(過去作)
老若男女問わず愛されるカレーライス。
日曜日のお昼より少し早い時間からその匂いがするのが、一種の日常のような感覚でいた。
3歳の時からずっと動き続ける換気扇と、グルメ番組、炊飯のタイマー、この3つがだいたい組み合わさっていた。しかしながらお腹は鳴らない。可笑しい。
唐突だが、私はちっちゃい時不思議だったことがある。
給食のカレーがお米と分けられていたこと。
地域によって異なるが、私の地域では、半