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「護られなかった者たちへ」ぜひ映画観る前に読んでほしい。

護られなかった者たちへ
中山 七里 著 
2021年 8月の本 

本書は2018年1月にNHK出版より単行本として刊行された同名作品を文庫化、と巻末にあり

 震災と格差社会といろいろと考えさせられ、2021年10月1日に映画公開が行われる前に、ぜひ読んでもらいたい本

 僕は小説をほとんど読まない。 ほかにも読みたい本がたくさんありすぎるから。しかしながら、たまには読みます。 先日の日曜劇場『ドラゴン桜2』での桜木先生の名演技が自分にとっては非常に印象に残っていた、阿部寛さんがジャケット写真に使われている本。 阿部寛さん出演で映画化される小説なら間違いなく興味深いものになるだろう、と、ジャケ買い?しました。
 内容に関しては、昨年ごろからブレイディみかこさんの影響でいくつか勉強してきた、格差社会の件や貧困のスパイラルの件、生活保護の観点、等々、現在の社会課題に対してすごく問題提起しているメッセージ性の強い本だと思いました。 
 少しながら勉強してきたこともあり、震災関連では宮城仙台の先の七ヶ浜にも何度かボランティアで足を運んだこともあり、自分なりに共感というか、感情移入してというか(このへん自分の表現力の稚拙さに情けなくなるが)読んでいきました。 しかしながら、自分の経験では、どんなに想像しても寄り添うことのできない難しさ・途方もない距離感も感じた、というのが正直なところです。

 巻末の映画化記念対談という特集あり、著者の中山七里さんと、映画化を担当された瀬々敬久監督のやり取りがある。読み終わった際に以下のやり取りが気になった。

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瀬々 小説を映画化するということは、違う論理の組み立てでもって、もう一度書き直すということですからね。だからこそ、両方を楽しめるという良い点はあります。
中山 カンちゃんの設定も大胆に変えられましたが、小説がミステリーに比重を置いているのに対して、映画の方は比重をかけられた部分が少し違いますからね。
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 気になる気になる。 どう映画化されるんだろう? カンちゃんの設定が大胆に変わるって? ジャケ買いした本で、阿部寛さんが笘篠だろう、ということは本を読んでりゃすぐイメージついたし、笘篠の一つ一つの発言も阿部さんが話されているようなイメージで小説を読んでいた。
 佐藤健さんが、利根なんだろう、とは二度読みのときにはすぐわかった。 なるほど、だとすると、この小説のほかのキャストって誰??と調べて行ったらナルホド!

 
 

 10月1日以降、改めて映画館でこの小説がどう表現されてくるか(映像化が難しいシーンもたくさんあったと思うが、それを映画という媒体でどう届けようとするか)大変楽しみです。
 予告編の動画を見るだけで、小説とはだいぶ違った表現方法がなされていることが伝わってきました。 (もう下記見るだけで泣いてしまいました… せっかくなんで、あえて主題歌スペシャルトレーラーのほうにしました)


 読んでから観るか、観てから読むか、とよく言われる映画化小説ですが、これはぜひ読んでから見ていただきたいですね。


さて、小説なんで抜粋は少なめですがいつも通りの抜粋です。
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P216
 「偽善者なら、見下げ果てた人間なら殺されて当然だというのは危険な理屈だ。それこそ無差別殺人をやらかすクソッタレどもの喚き立てる理屈だ。そういうヤツらと同列になりたいのか」
 さすがに蓮田は押し黙る。
 「別に塩釜福祉保険事務所の人間を擁護する訳じゃないが、俺が怒っているのは彼らが捜査に協力するどころか情報そのものに歪曲を加えたからだ。厚労省の思惑も役人どもの保身も興味がない。俺は一刻も早く二人を殺した犯人を挙げたいだけだ」
 「笘篠さんは根っからの刑事なんですよ」
 「それ以上のことは期待されたいないし、実行できるとも思っていない。自分に課せられた仕事を自分の能力の範囲内で片づける。それが一番真っ当だと思わないか。どんな人間にもどんな組織にも限界ってものがある」

もうこの文言読んでただけで、阿部寛さんの強い口調で言い放ってるシーンが想像されました。 ロスジェネの逆襲の半沢部長の「戻るとか、戻らないとか、そんなつまらんことは人事部が判断すればいい。与えられた仕事に全力を尽くす。それがサラリーマンだろ。なにかヘンか?」とは違うが、なんとなく、与えられた仕事に全力を尽くす感が似た印象を感じました。


P262
 「ああ、もう最近の若いヤツってのは人の厚意までカネで返そうっていうのかね」
 「いや、そんなつもりは」
 「人から受けた恩は別の人間に返しな。でないと世間が狭くなるよ」
 「どういう理屈だよ」
 「厚意とか思いやりなんてのは、一対一でやり取りするようなもんじゃないんだよ。それじゃあお中元やお歳暮と一緒じゃないか。あたしやカンちゃんにしてもらったことが嬉しかったのなら、あんたも同じように見知らぬ他人に善行を施すのさ。そういうのが沢山重なって、世の中ってのはだんだんよくなっていくんだ。でもね、それは別に気張ってするようなことでも押しつけることでもないから。機会があるまで憶えておきゃあ、それでいい」

先日、喜ばれる人になりなさい を読んだこともあり、こういう母親(今回の場合は血のつながりのない母親的存在な方だが)からの声がけってすごく身に沁みますよね。 ほかの方のレビューでも引用されていたのを確認して、あぁやはりそうなんだな、と思いました。


P282
 「まあ頭からペンキを被るぐらいがちょうどいい罰だろうね。それ以上厳しかったら、加害者と被害者が逆転しちまうから。だからね、カンちゃん。今のうちにあの三人と手打ちしておきな。こういうのは早い方がいいんだ。」
 カンちゃんは意外そうに訊き返す。
 「仲直りしろって、今更?」
 「敵を作るより味方を作っておいた方がいい。味方が多い人間は強いよ。そして強い人間に盾突こうとするヤツは少ない。どっちが楽だと思う

こちらも遠島けいさんからの言葉のシーン、落書きをされた犯人の同級生に反撃をした直後のシーン。 仕返しをした瞬間に手打ちを提案する、そしてそれは味方を作ることになる、味方が多ければ強くなれる、と。人生経験にあふれたすごいシーンですよね。(おそらくこのシーンは映画化には時間の都合上ならない気がしている)


P355
 「放っておけば、利根は必ず第三の犯行を重ねる。あんただってこれ以上、利根の立場を悪くしたくはないだろう。罪を悔いる人間は更生だってするだろうさ。じゃあ聞くが、利根は塀の中で自分のしたことを悔いていたか?悔いていなかったのなら、必ず同じことをしでかすぞ」
 こちらを覗き込んでいた五代がふっと口元を緩ませた。
 「刑事さん。今の質問に答えると、ムショの中に放り込まれても、利根ちゃんは後悔なんてしていませんでしたよ。自分の行為は正当だけど犯罪だった。だから懲役は甘んじて受ける。そういう態度だった。今度も、利根ちゃんは自分の信じることをしようとしているだけですよ、きっと」

利根は非常に真面目で、真面目だからこそ罪を犯すってことは往々にしてある、という櫛谷さんのシーンもあった。真面目で一本気で直情型で、そこで自分の行為は正当だけど犯罪だった。だから懲役は甘んじて受ける。と言う表現。 まっすぐで、インテグリティだな、と感じたシーンでした。

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以上となります。 最後まで読んでいただいてありがとうございました。毎週金曜投稿を続けていて、いつもは朝に書ききるのですが、読み切ったのが最近でして、夜になってしまいました。 それでも読んでいただいてありがとうございます。 気に入っていただいたのならスキしていただけると励みになります。 10月1日、初日に映画館行こう、と自分に予約をしました。

いつものブクログです。(ほかの人のレビューを見るのも楽しい)


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