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【書評】どん底から何度でも這い上がる 折れない心の21の物語/梅崎司/双葉社

どん底から何度でも這い上がる 折れない心の21の物語/梅崎司/双葉社
(このnoteは2019年4月25日に他サイトに掲載した記事の転載です)

湘南ベルマーレ、曹貴裁監督の書籍「指揮官の流儀」を読んだ時と同じ理由で、

ベルマーレの練習見学に伴い、その時間をより濃厚なものにしたいと思って手にしたのが、この本である。

これまで、ベルマーレに関する本は、

主に運営・フロントスタッフ側の目線で語られている「たのしめてるか。」

監督、コーチ目線で語られている曹貴裁監督の「指揮官の流儀」

の2冊を読んできたが、

今回の本は、現役の選手である梅崎司選手の執筆した本である。

現役のスポーツ選手の執筆した本を読むというのは、自分の中ではそんなに多いことではないが、

違う競技とはいえ同じ現役選手として感情移入できる部分がたくさんあり、

シンプルにとても読みやすかった。

今回、心に残ったのは下記の3点である。
1 その経験をどう感じるか
2 共感するストーリー
3 ベテラン選手としての振る舞い

―――――

1 その経験をどう感じるか

読んでいてまず感じたのが、

自身の経験を分析できる人である

ということ。

これはきっと普段からノートをつけていることで、自分の経験、そして自分自身を客観的に見て考えてきているというのが、よくわかる。

悔しい経験、嬉しい経験、心に変化があったときのこと、

ノートを見ると、それはただの記録ではなく、

自分との対話

であると思った。

自身の経験を経験で終わらせるのではなく、そこから何を感じ、どう動いていくのかという思考の作業を自然とできている。

ここまで思慮深い人というか考えを凝らすアスリートというのは、なかなか身近なところにたくさんいるものではない。

自分も10年日記をもう7年ほど毎日つけているが、ここまでの深みは、ない。

どちらかというと、将来自分があの時を思い出してクスッと笑えるような記録のようなものを書いている。

また、ラグビーノートもマメに書くようにしているが、

10年日記にしてもラグビーノートにしても、もう少し深い感情を書いてみようかな。

どう感じて、じゃあこれからどうしようか。

そのときの経験をぶつ切りにするのではなく、未来につなげていく。

毎日の習慣にもう一つ深みを加えてみることで、自分の行動や言動の重みが変わっていく気がした。

2 共感する考え方・ストーリー

純粋に、一人のスポーツ選手として、共感できるような考え方やストーリーが多くあった。

・両膝の前十字靭帯を断裂したことはないが、両膝で半月板や後十字靭帯の痛みに悩まされ、ここまで4度の手術を乗り越えてきたこと。

・人と同じことをやっていては勝てるわけがないという思いで、自分の時間を作り出して、強くなるために考えて行動してきたこと。ただがむしゃらにやるだけじゃなく、どうやったら勝てるのか、自分に何が足りないのかを考える思考は似ていると感じた。また、それと同時に、自分と同じように不器用な部分もあるのかなとも感じた。

・梅崎さんが東日本大震災のニュースから、自分の悩み事がちっぽけだと感じて、生きていること自体が幸せだと感じたこと。そこから這い上がれたというエピソード。僕の場合は、そのトリガーとなるのは東日本大震災ではないが、宇宙のことを考えたり、星を見てその光が何万年も前の光なんだ、とかそんなことを考えると、自分の小ささを感じて、自分の悩みがそんな宇宙規模で考えたらちっぽけだなと感じる。

これはちょっと違うか。

・自分だけで考えるのではなく、ヒントはいろんなところにあると、常にアンテナを張って学び続ける意欲があるところ。

など、様々あった。

そんな中でも一番共感できたのが次のエピソードである。

・北京オリンピックの代表選考で最後の最後に落選したという梅崎さんの経験は、2015年のラグビーW杯の時に最終選考で落選した自分と重なる部分を感じた。梅崎さんのお母さんが、自分の息子がオリンピックに出ることを信じてパスポートをとって北京に行くことを楽しみにしていた、というお話も、僕の家族がW杯の開催国イギリス行きのチケットを用意していたことと重なり、その時のなんとも言えない悔しさや申し訳なさ、情けなさや悲しさを、ああ、梅崎さんも同じような経験してるんだ。と、勝手ながらめちゃくちゃシンパシーを感じてしまった。あの時のあの感情は、なかなか他で味わえるようなものではないし、思い出しただけでも胸が苦しくなるような経験だった。自分としてはそこから切り替えるのはとても時間がかかる試練だった。

そして、そこから年月が経ち、30歳を超える今、改めて自分は再び日本代表に選ばれることを目指して選手生活を送っている。そんなことを世間にどう思われようが関係ない。シンプルに圧倒的なチカラで活躍したらいいのだ。チャンスは必ずくる。自分の目標のために、そこだけはブラさずに、歩んでいく。

3 ベテラン選手としての振る舞い

チーム内で最年長であるという梅崎さん。一選手として、再び日本代表に選出されることを目標している傍ら、チームの中での役割としてはベテランとしてチーム作りに貢献している。

自分もチームの中では最年長ではないが、年齢は上の方にあたる。

そんな同じベテラン選手として、自分には足りない部分を兼ね備えているなと感じたのが、

若い選手から

「ここはレッズ(前所属チーム)じゃないです。そういうプレーをしてたらチームとして困ります」

と言ってもらえる「チーム内での関係性」である。

グラウンドに出たら、年齢など関係ない。そんなことはわかっている。それでも、若い選手が年の離れた選手に対して、何でも言いたいことを言えるというのが難しいというのは確かである。

「言えない若手が未熟なんだ」と若手にハッパかけることが正解ではない。

この関係性の場合は、ベテランがどれだけ言ってもらえるように寄り添えるか。

「言いたいこと、何でも言っていいから」なんて言葉で言ってもらえるなら簡単だが、深い関係性になるには、もっとお互いを理解し合わないといけない。

試合に出ることだけだったら、もしかしたら自分だけのチカラでもぎ取ることはできるかもしれない。

しかし、

試合で勝つためには、自分だけのチカラで勝つということは100%できない。絶対に仲間と繋がらないことには成し遂げることはできない。

年齢・国籍・バックグラウンドの違う仲間と勝利を掴むために、自分の立場なりにどう仲間に寄り添うべきか、とても参考になった。

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これまでに感じてきていた、

「人を大切にするベルマーレ」

にぴったりな選手であるなと感じた。

ベルマーレに加入して2年目の選手に対してだ。

それは、そういう人間をベルマーレが獲得したのか、ベルマーレに入って変わったのか、そんなベルマーレとわかってて入ってきたのか。

たぶん全てに当てはまると思う。

人を大切にする文化のあるチームと、それに集う人たちに出会えて、

改めてこのチームへの魅力が深まった。

そして、自分たちなりのスタイルで、

人に魅力を感じてもらえるチームになりたいと思った。



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