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【書評】1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法/山口揚平/プレジデント社

1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法/山口揚平/プレジデント社
(このnoteは2019年4月17日に他サイトに掲載した記事の転載です)

いつも書評を書く時に、なんでこの本を読んだのかというのを振り返ってみているが、

つくづく読書にはいろんな入り口があって面白いなあと感じる。

今回この本を手に取ったのは、通っている順天堂大学院の先生でもあり、同じラグビーを愛する人間としても親しくしていただいている、雪下岳彦先生から、

「春休みの課題図書です!」

と紹介され、いくつか読もうとしていた本があったので春休みを越してしまったが、

そんなきっかけでこの本を

正直何も考えずに手に取って読み始めた。

いつもは「知りたい!」から読み始めたり、立ち読みをして読みたくなったり、興味のあるものを自発的に手に取っていたが、今回は受動的な読書。

勝手ながら、この本は雪下先生からのメッセージなのか?!と考えてしまった。

本の題名から推測するに、

「プロアスリートとして、スポーツ以外のことにも取り組む自分に、より効率の良い時間の使い方やものの考え方を気づかせてくれるのではないかな」

という期待を胸に読み始めた。

今の自分にとって特に心に残った点は下記の3つである。
1 すべては分かれているように見えて、有機的なつながりをもっている
2 ハイブリッド人材
3 幸福の半分は天才性に気づいているかどうかで決まる

―――――

1 すべては分かれているように見えて、有機的なつながりをもっている

20世紀から21世紀にかけて「頭の良さ」の定義が変わっていきている。

インターネットが普及する前は、情報を持っていることや知識が豊富な人間が頭の良い人間とされてきた。高学歴の人は、受験戦争においてひたすら暗記し、戦い抜くことで、偏差値の良い学校、大手企業という道を、知識や情報の豊富さで勝ち取ってきた。

しかし、インターネットが普及してきた現代においては、知識や情報はグーグルで検索したらすぐにわかってしまう。

そんな現代、21世紀においては、

思考力・想像力

こそが大事になってくるのだ。

思考力や想像力を養うことで、「つながりを見出す力」「物事をイメージする力」「本質を見抜く力」が培われていく。

いかに思考を凝らして物事の本質に気づくことができるか。

かつてアインシュタインが

「我々の直面する重要な問題は、それを作ったときと同じ考えのレベルで解決することはできない」

と述べたように、

物事の裏に隠れている本質的な部分というのは、表面的な部分を見ているだけは見抜くことはできない。それを俯瞰してみないとわからないし、一見矛盾していると思われる要素も実はつながっているということが、思考力・想像力を養っていくことでわかっていく。

この本の中で使われている「メタ思考」という方法は、

物事を一度抽象化し、一つの言葉を再定義していくことである。再定義することで、そのことの本質をついていく。

「それってつまり、〇〇ってことだよね」

という思考で本質を突くことで、

「それって、ラグビーにおいては〇〇ってことだよね」

「それって、料理においては〇〇ってことだよね」

というように、世の中のあらゆることを有機的につなげることができる。

思考力や想像力が大事になってくる中で、知識をつけることをおろそかにして良いわけではない。思考の材料となるのが他でもなく頭の中にある知識であり、それを意識的にコントロールして結びつけたり切り離したりすることで思考力を高めることができる。

物事を独立したものとして考えずに、広い視野で考えて、固体と個体の関係性を把握していくことで、その根本的な問題の本質にたどり着くことができる。

だから、いろんなものにアンテナを張って生きていきたい。

自分から遠いものほど、知らない世界。苦手だと思っていたところに足を踏み入れることは、自分に新しいものをもたらしてくれる。

そこで得た知識と、自分の周りにある問題を結びつけてみた時に、どんなつながりを発見することができるのか。

今回のように親しくしていただいている偉大な先生から薦められた本というのは、非常にワクワクする。

それにしても、最近は「物事の本質を見抜く」とこの大切さを痛感させられる本によく出会う。というか結局そこに行き着く。それこそが全てにおいて大事なことであり、そんなことを考えながら生きていくことが、ここのところ習慣になってきた。

本の題名でもある、「1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法」というのは、そういった考え方で物事(問題)に取り組むことで、効率的かつ、より多くのことに触れていくことが可能になっていく、ということなのかと思う。

これこそが、本を薦めてくれた雪下先生からのメッセージか・・・?

2 ハイブリッド人材

シンプルにかっこいい言葉だなと思った。

これは知らなかったのだが、

「モナ・リザ」や「最後の晩餐」などを描いたレオナルドダヴィンチは画家のイメージが強いが、実は天文学・建築学・解剖学・物理学などでも素晴らしい業績を残しているよう。

先ほど1「すべては分かれているように見えて、有機的なつながりをもっている」でも話したが、彼の場合は、絵画も天文学も建築学も解剖学も物理学も全て同列で見ており、全てがつながっているのだ。たまたまその一部が、その時代・場所で社会に受け入れられていたのが絵画だった。

ダヴィンチも思考を広くもっていることで、自分自身を様々な形で表現することができたのだ。

1で考えた思考法を使いこなしていくことで、自分もハイブリッド人材を目指していく。

「ハイブリッドアスリート」 ←勝手に命名。

自分自身をいろんなフィールドで表現して、人生をより豊かなものにするために生きていく。

取り組むものは同列に。

100ある力を分散させてラグビー80、他20みたいにするのではない。全てつながっている。

100ある力はその時その時100使っていくと、それが全てにおいてプラスに働く。

ちなみに、この書評においては、思考力・想像力と共に、物事(問題)を抽象化する力や表現力も磨いている。

ラグビーチームという組織で生きていく上で、必要となるスキルだ。

3 幸福の半分は天才性に気づいているかどうかで決まる

なるほど、こんなこと考えたことなかった。

この初めて聞くフレーズが、ズドンと心に刺さった。

「好きなこと、得意なこと、人に必要とされること、喜んでもらえることの全てに当てはまるようなことを仕事にできたら幸せだろうな。」

なんて考えたりしていたことを一言で表現した感じ。だから、考えたことなかったわけではないのかもしれないけど、すごくしっくり、心に落ちてきた。

徹底的に自分自身を分析した上で、心の底から好きなこと、得意なことを理解して、それを仕事にする。

天才性に気づくための方法として紹介されているのが、

・多くの経験をすること

・周りから褒められることに天才性のヒントが隠れていること

天才性に気づくための第一歩が、とにかく多くのことを経験することである。

人の選択は必ずそれまでの経験に基づいて判断されるものだ。その判断材料を1択にするのか10択にするのかは、それまでどれほどの経験をしたかによるというほかない。

日本の一括採用文化によって、とりあえず新卒で雇ってくれるところに入ってイメージとのギャップに悩まされながら40年以上働くのか、自分に本当に合うものを10年かけてでも探して、出会った最高の仕事を死ぬまで幸せな気持ちでやっていくのか。

多くの経験をすることで、自分にとっての本当の幸せに気づくことができる。

周りから褒められることというのは、自分を客観的に知ることができる。褒められるということは、人に喜んでもらえること。自分が知らない自分の姿を知ることができる。

ただ、ここでもその褒められたことの本質的な部分を自分で理解しないといけない。

ダンスが上手いから「ダンサーになろう」ではなく、もっと細かく、何が良いのか。リズム感なのか、柔軟性なのか、体幹なのか、それによってダンサーという枠を超えて自分の天才性を知る材料が増えていく。

今の所、ラグビー選手として活動している中で、自分が好きであり、得意であり、人にも評価してもらえる仕事ができていると自負している。今とても幸せだ。

ただ、いつかやってくる引退のタイミングで、自分の天才性に気づいて本当の自分を活かせる次のフィールドにいけるのかどうか。

現役選手としている限り、ラグビー選手生活を充実させることと同列に、常に考えながら過ごしていかなければならない。

―――――

自分のアスリートしてのスタイルを理解している雪下先生から薦められた理由がよくわかる一冊だった。

人から紹介された本から受け取るメッセージは、自分に対するフィードバックとして、得たものを自分の思考力UPのために活かしていきたい。


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