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【書評】指揮官の流儀 直球のリーダー論/曹貴裁/角川学芸出版

指揮官の流儀 直球のリーダー論/曹貴裁/角川学芸出版
(このnoteは2019年4月23日に他サイトに掲載した記事の転載です)


Jリーグの湘南ベルマーレのフロントの戦いが綴られた

「たのしめてるか。」

を読んでから、湘南ベルマーレのチーム作りについてどんどん惹き込まれていっていた。

そこから、本当に奇跡的に、1ヶ月ほど前にミーティングした吉谷吾郎さんという方に、

「最近ベルマーレに興味あって・・」

という話をしたら、以前一緒にお仕事をされていたということが判明し、

なんと、ベルマーレの練習見学に行かせていただけることになった。

(ここまで色々と省略している部分ありますが書評なので悪しからず・・)

そうなったら、実際に本の中に出てきたチームの方々とお会いする貴重な時間をより濃密なものにしたいと感じ、手に取ったのが、

この本である。 ←前置き長め(笑)

ちなみに、僕は中学までサッカー少年だったこともあり、サッカーのことは元々大好きなのである。

さて、「たのしめてるか。」を読んでいた時から感じていた、

曹貴裁(チョウキジェ)監督に対して持っていたイメージとして、

チームとその選手一人一人への熱い思い

ブレない軸

必ず言葉に想いを込めるところ

などにとても魅力を感じていたこともあり、

この本を通して、

「曹貴裁」という男をより深く知ることができ、たくさんの感銘を受けた。

今回、特に心に残ったのは下記の3点である。
1 好きになることで言葉が相手に届く
2 子どもとの向き合い方 
3 自分がどのように見られているかよりも、自分がストレートに生きていくことに対して周りがどう反応するかが全て。

実際に直接お話して感じたことも交えながら説明していく。

―――――

1 好きになることで言葉が相手に届く

この本を通して、また、実際に練習に足を運んでみても感じたことである。

とにかく、選手を大切にする

心の底からのメッセージを伝える。曹さんの言葉には必ず表面的なワードだけに意味はない

話すタイミング、話す相手、相手がどう考えているのか、こう言ったらどう反応するのか

を常に考えて言葉を発している。

言葉の本質を意識しているからこそ、どんなに厳しい言葉にも、そこには愛がある。

その言葉に愛を生み出すのが、他でもなく、自分のチームの選手との信頼関係。

その信頼関係の大前提として、

選手全員を好きになること

を挙げている。

自分が心の底からその人たちと生きていきたいと思って接すれば、それは周りに伝わる。

どんな相手とのコミュニケーションも、全ては自分次第であるのだ。

曹さんは、自分の預かった選手に可能性がないと突き放したことはなく、自分の寄り添い方次第で、どうにでも関係性を築いていけるものであると信じている。

実際に、練習を見学に行った時も、練習の前後でよく選手と対話しているなという印象があった。案内をしてくれた広報の遠藤さちえさんいわく、それはいつものことのよう。

関係性を築くために、とにかく相手を知ること。好きになること。そこから、相手の気持ちに対しての想像力を働かせ、言葉に想いを込める。

自分は監督ではないが、

一人の選手として、共に戦うチームの全員とそういった関係が築けているかと考えたら、全然まだまだ。

いろんなタイプの人間がいるこのチームの能力を最大限に引き出すためには、チーム内でのそういった関係性から生まれるものであると感じた。

まずは、自分が一人一人を好きになることから。

意外と簡単そうにみえて難しいことだと思うけど、難しそうにみえて簡単そうにも思える。

とにかく、実践あるのみ。

また、実際に見学にいって感じた一番のところも、この、

人を大切にするというところである。

正直にいって、小さい頃から憧れていたJリーグのチームは、どこのチームも最高の施設、環境の中でサッカーをしているものなんだと、勝手に思っていた。

しかし、ベルマーレは、ロッカーやトレーニングルーム、食堂、グラウンドは全てバラバラの施設であり、建物もパートナー企業から寄贈してもらったり、グラウンドも借り物である。

比較的、トップリーグの中でも施設に関しては遅れをとっている自分のチームと重なる部分を感じた。

そんな、環境面では豪華なものでなくても、このチームが大切にしているところはそんなところではなかった。

自分たちのスタイルを貫くこと

選手の成長

たのしめてるか。

環境面に驚きを感じたと同時に、このチームの魅力が凝縮されて浮き彫りに見えて、

このチームの文化に触れることができて良かった。

2 子どもとの向き合い方

長い期間、育成組織を指揮していたこともあり、

子どもたちをコーチすることに対しての考え方がとても印象的であった。

育成部のトップの方に

「一生で一番大事」

であると言われたという、この育成チームのコーチング。

自分自身、そんな世代をコーチングしたことないので、なるほどなと思った。

きっと、大人に対して、中途半端なコーチングをしても、頭のいい大人だから、「なんだ、ダメなコーチだな」と言われて終わる。

しかし、吸収力100%の子どもたちに対しては、そうはいかない。

曹さんが、

「育成年代の指導者をステップにした、という発想が僕自身の中にない」

と話しているように、指導者が背負う責任という意味では、育成年代を指導する方が、圧倒的に重いということである。

そして、子どもたちをコーチングするというのは、単にサッカー選手として育てるだけでなく、

一人の人間として立派な人間に育てていかなくてはならない。

試合に勝ったから良いとか、点を決めたから良いとかではなく、

取り組む態度や、人としてどうなのかということまでサッカーを通して伝えていかないといけない。

また、子どもたちに対しての影響は、指導だけではない。

本にも書いてあり、広報の遠藤さんからも聞いた話だが、

たまに中学生のアカデミーの現場に顔を出すときに、30人近い選手の名前を全員分覚えて参加するそうである。

トップのチーム監督にそんなことされて、どれだけ嬉しいことか、曹さんはグレード関係なく、相手の気持ちになって人と向き合う人だった。

自分は、あまり複数の子どもたちと触れ合う機会は多くはない。

それでも、こんな自分でも試合会場で握手を求めてきてくれる子どもや、ファン感謝祭で触れ合う子たち、たまに教えたりするラグビースクールの子たちとの、一人一人との時間は長くないが、自分の影響力の大きさを考えて接していかないといけない。

3 自分がどのように見られているかよりも、自分がストレートに生きていくことに対して周りがどう反応するかが全て。

この言葉は、もうそのままである。

自分自身が何を大事にしていきているのか。その本質。

相手にどう思われているかありきではなく、自分が信じて正しいと思っていることにを心を込めて相手に伝える。

相手を考えないわけではない。まっすぐに想いを伝える。

そこからしか、相手との関係性は深まることはない。

―――――

曹さんと実際にお話して、不思議と接しやすかったのが、

ただようラグビーっぽさ

を感じたからだ。

聞くところによると、曹さんはもともとラグビーが好きなようで、

ラグビーから学ぶべきことがたくさんある。

とミーティングでもよくお話するそうだ。

めちゃめちゃ厳しいんだけど、裏にメッセージがある。それを考えさせられる。

日本代表時代にエディージョーンズから受けた指導に共通する部分を感じた。

それを表面的に受け取ってしまうことほどもったいないことはない

自分は監督ではないし、今のところそんな将来図を描いているわけでもないが、

そんなことは関係ない。

曹貴裁監督の指揮官としての流儀には、一人の選手としても、リーダーとしても、人間としても、学ぶべき部分が多くあった。

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