今、BUMP OF CHICKENに「ありがとう」を伝えたい。
BUMP OF CHICKEN。
15歳の時に出会ってから今日に至るまで、僕の人生を彩り、導き、救い続けてくれている彼らの音楽について。持ち得る言葉を全て振り絞って綴っていきたい。
この記事が、あなたがBUMP OF CHICKENと初めて出会うきっかけ、もしくは、再会するきっかけになったら、そして、僕と同じように、長年にわたって彼ら4人の音楽に救われてきた人と同じ気持ちを共有できたら嬉しい。
2019年7月から開催された全国ツアー「aurora ark」、および、そのツアーファイナルである東京ドーム公演の基軸となったのは、7月に発売された最新アルバム『aurora arc』の収録曲である。全14曲の収録曲の内、11曲もの楽曲が、CMやテレビドラマ、映画のタイアップソングとなっている。もしかしたら、この記事の読者の中には、普段の生活の中で気付かない間にBUMP OF CHICKENの音楽に慣れ親しんでいる人も、決して少なくないのではないだろうか。
次々と披露される最新曲たち。既に日常に浸透しているはずのポップソングの数々が、全く新しい輝きを放ちながら東京ドームに鳴りわたってゆく。その驚きを、興奮を、歓びを、5万人のリスナーと共有できた時間は、あまりにも眩いものであった。
もちろん、今回のツアーで披露されたのは、最新曲ばかりではない。"車輪の唄"、"真っ赤な空を見ただろうか"、そして、"GO"の導入部において藤原基央が歌詞の一節をアレンジして口ずさんだ"メロディーフラッグ"。長年にわたってBUMP OF CHICKENを応援してきた人たちは、そうした往年の名曲が披露されるたびに、きっと報われるような思いを抱いたのではないだろうか。何を隠そう、僕がその一人だ。
ライブが進んでいくにつれて、一つ気付いたことがある。そしてそれは、すぐに確信に変わった。
BUMP OF CHICKENの表現の出発点、そして核心は、いつまでも変わることはない。それは「切なさ」である。
「過去」と「今」と「未来」は一直線上にしか存在することができない。自分自身の時間軸しか生きることができない僕たちは、大切な人の「過去」を遡ることも、「未来」を覗き見ることもできない。同じ記憶を積み重ねて、同じ明日を思い描くためには、同じ「今」を共有するしかない。だからこそ、残酷に過ぎていく一瞬一瞬があまりにも尊い。そして、当たり前のように隣に居ることができている時間でさえ、どうしようもなく切ない。
出会いがあれば、いつか必ず別れが訪れる。得るものがあれば、いつか必ず失う時が来る。しかし、いや、だからこそ、「今」この瞬間が懸命に輝きを放つ。そうした前提の上に成り立つからこそ、BUMP OF CHICKENと僕たちの音楽を通したコミュニケーションは、いつだってかけがえのないものになるのだ。BUMP OF CHICKENが表現し続けてきた「切なさ」の輪郭が、数々の名曲によって浮き彫りになっていく感動的な展開に、僕は強く胸を打たれた。
本編終盤、"supernova"において、藤原は、オリジナルの歌詞をアレンジしてこう歌った。
そして、あっという間に訪れてしまったアンコール。"バイバイ、サンキュー"、"ガラスのブルース"を披露した後、藤原はこう語った。
アンコール4曲目、本ツアー正真正銘のラストを飾った"花の名"。ここでも藤原は、渾身の想いを込めるように、オリジナルの歌詞をアレンジして、こう叫んだ。
やはりそうだ、彼らが讃える「今日」、「今」この瞬間の輝きは、どうしようもなく切ない。だからこそ、BUMP OF CHICKENのライブの一瞬一瞬には、あまりにも深く切実な意義が宿るのだ。
5万人の観客が、どのような日常の先に、どのような想いを持って東京ドームに集まったのかは、決して知る由もない。それでも、一人ひとりの「僕」と「あなた」の物語は、あの日、あの時、BUMP OF CHICKENの音楽を通して、鮮やかに彩られ、力強く肯定され、そして一つに結ばれた。
それぞれの旅路の先に、「今日」を、いや、「今」この瞬間を、4人と5万人で共有できたこと。だからこそ、破格なスケールの感動を味わうことができたこと。その奇跡のような現象に、涙が止まらない。音楽の根源的な力、そして規格外の可能性を、僕はあの日、空気の震えを通して確かに体感した。
溢れ出んばかりの想いを、一つたりともこぼすことなく、丁寧に言葉にして伝えていく藤原。そして、BUMP OF CHICKENの4人は、何度も何度も僕たちに感謝の想いを告げながらステージを後にしていった。
しかし、彼らに「ありがとう」を伝えたい気持ちは、僕たちだって同じだ。いや、「ありがとう」を伝えなければならないのは、僕たちのほうだ。
僕は、これからもきっとBUMP OF CHICKENの音楽に救われ続けていくのだと思う。だからこそ、彼ら4人への「ありがとう」の気持ちを、こうして言葉にして伝え続けていきたい。
そして、いつか必ず、またライブ会場で会いたい。新しい「今」を紡いだ先に、光輝く「未来」の物語が続いていくことを、僕は強く確信している。
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