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日向坂46、約束の彼の地へ。東京ドーム公演を経て、彼女たちはもっと強くなる。
【3/30(水) 日向坂46/「3周年記念MEMORIAL LIVE ~3回目のひな誕祭~」 @ 東京ドーム】
乃木坂46、櫻坂46(元・欅坂46)に次ぐ坂道グループとして、2016年5月の1期生加入以降、3つ目の坂道を懸命に駆け上り続けてきた日向坂46。2022年3月、ついに彼女たちは、けやき坂46時代から目標としていた「約束の彼の地」である東京ドームへと辿り着いた。
今回の公演は、もともと2020年12月に予定されていたものが、コロナ禍における延期を経て実現したものである。2019年3月を日向坂46の正式デビューとすると、当初の予定では、彼女たちは、わずかデビュー1年9ヶ月で東京ドームへ至ったことになる。その事実だけを切り取った時、もしかしたら多くの人は、日向坂46の順風満帆な歩みを想像するかもしれない。
しかし、彼女たちが歩んできた道のりは、決して平坦なものではなかった。それどころか、今回の東京ドーム公演の実現に至るまでの過程には、数え切れないほどの逆境や困難があった。
2016年5月、欅坂46(通称:漢字欅)と並行する形で結成されたけやき坂46(通称:ひらがなけやき)。しかし2017年9月には、グループ結成のきっかけとなった1人目のメンバー・長濱ねるの兼任解除が発表され、彼女はそれ以降、欅坂46の活動に専念していくことになる。
突如として、グループ結成の立脚点を失ったけやき坂46は、空白の存在となってしまった自分たちの存在意義を自らの手で証明するために、迷い、傷付きながら、それでも力強く歩み始めた。
遥か先を行く乃木坂46、欅坂46の背中を追いかけるようにして、一つずつオリジナル楽曲のレパートリーを増やしながらライブを重ねていき、そして2018年1月には、欅坂46のピンチヒッターとして3日間の武道館公演を堂々と成功させる。同年6月には、初のフルアルバム『走り出す瞬間』をリリース。あの作品は、先輩グループの後を追うのではなく、「自分たちの坂道を歩む」という彼女たちの力強い意思を表明するものであったと思う。
いつしか彼女たちは、先輩グループの楽曲に頼ることなく、自分たちのオリジナル楽曲だけでライブを成立させるようになった。そして、第3の坂道グループとして、少しずつ認知を広げ、新しく支持を獲得していく。
そして2019年3月、彼女たちは、日向坂46として第2のデビューを果たす。グループカラーは緑色から空色へ。どのようなネガティブな感情も、ハッピーオーラで包み込む。そうした天真爛漫さを武器に走り続けてきた彼女たちが新しく選んだ坂道、それは、まさにアイドルの王道であった。
「キュン」「ドレミソラシド」「こんなに好きになっちゃっていいの?」「ソンナコトナイヨ」といったシングル曲を重ねながら、令和時代における王道のアイドル像をアップデートし続ける彼女たちは、もはや無敵にすら思えた。
しかし、そのタイミングでコロナ禍へと突入する。日向坂46としてのデビュー2年目、更にアクセルを踏み込むべきタイミングで訪れた音楽業界全体の混迷によって、数々の活動が中止・延期に。冒頭でも触れたように、当初2020年12月に予定していた東京ドーム公演も無期限の延期に追い込まれた。
そしてその過程では、1st〜4thシングルでセンターを担い続けた小坂菜緒を含めた複数名のメンバーの休養もあった。休養に専念するメンバーたちが帰ってくる場所を守るために、そして、日向坂46の可能性を広げ続けるために、残されたメンバーは、先行きの見えないコロナ禍の日々を懸命に駆け抜け続けた。
前置きが長くなったが、こうした数々の逆境を乗り越えながら、ついに辿り着くことができたのが、今回の東京ドーム公演「3周年記念MEMORIAL LIVE ~3回目のひな誕祭~」である。
これまで「約束の卵」で歌い続けてきたように、今回の東京ドーム公演は、まさにメンバー全員の悲願であった。残念ながら、濱岸ひよりは体調不良のため不参加となってしまったが、約9ヶ月の休養から復帰した小坂菜緒を含めた21名のメンバーは、濱岸の想いを背負って東京ドームのステージに立った。
今回の公演で最も感動的だったのは、けやき坂46時代の楽曲が、次々と惜しみなく披露されたことである。日向坂46としての第2のデビュー以降の歩みがあるのは、言うまでもなく、けやき坂46として、迷い、傷付きながら、それでも自分自身やメンバーを信じて走り続けてきたかけがえのない日々があったからだ。そうしたこれまでの歩みの全てを、自分たち自身で丸ごと肯定してみせるような、とんでもなくポジティブなエネルギーに満ちた3時間だった。
決して懐古的なムードはなく、過去も今も含めたこれまでの全ての歩みは、これからも続いていく物語の序章に過ぎないことを思わせてくれるような、とても未来志向のライブだったと思う。
ずっと夢見ていた東京ドームのステージに立った感慨は、きっとメンバーたちにとっては非常に深いものだったはずだが、あの日、あの時、これまでの物語に一つの区切りを付けることが彼女たちは、既に、次の景色を見据えている。次々と畳みかけられていく新旧の楽曲の連打を観ながら、そう強く感じた。
数え切れないほどの逆境を一つひとつポジティブな物語へと変えながら、かつ、これほどまでに爆速で東京ドームまで辿り着いた女性アイドルグループは、かつて存在しなかった。もちろん、その過程では、ファンの想像を絶するような苦難や葛藤もあったはずである。それでも、メンバーそれぞれがお互いを信じ合い、助け合いながら、かつて前例のないほどの怒涛の快進撃を実現したことは、あえて無防備な表現を用いれば、とても奇跡のような事象なのだと思う。
彼女たちの持ち前のハッピーオーラが、この快進撃を支えているのだとしたら、それこそまさに、言葉では表し切れないほどに美しい物語である。そして、どのような壁や溝を前にしても、それでも笑顔を忘れずに乗り越え続けてきたタフネスを胸に秘める彼女たちは、これからも、きっと、もっともっと強いグループになっていくと思う。
日向坂46「3周年記念MEMORIAL LIVE ~3回目のひな誕祭~」をご視聴頂き本当にありがとうございました☀️
— 日向坂46 (@hinatazaka46) March 31, 2022
日向坂46の応援を引き続きよろしくお願いいたします!👌🏻#ひな誕祭最終日#日向坂46https://t.co/7tQkJ6gPdm pic.twitter.com/G5lhEAs4Ej
現在、日向坂46は新メンバーとなる4期生の募集を行っている。かつて2期生や3期生のメンバーが1期生の姿に憧れてグループに加入したように、あの日、あの時、東京ドームの観客席から日向坂46のライブを観ていたファンが、未来のメンバーとなるかもしれない。
そのようにして、彼女たちが大切にし続けているハッピーオーラの精神が次の世代へ受け継がれていくとしたら、それ以上に美しい物語は他にないと思う。
乃木坂46が、櫻坂46が、それぞれの坂道の物語を更新し続けているように、日向坂46の物語の第2章は、まさにここから始まっていく。
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