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嵐、約束の場所へ。「アラフェス2020」を振り返る。

【嵐/「アラフェス 2020 at 国立競技場」】

2020年11月3日。

嵐の5人は、デビュー21周年を迎えたその日に、グループ初となる無観客ライブの配信を行った。

その公演の名は、「アラフェス2020」。

「アラフェス」とは、ファンからのリクエスト投票の結果を元にセットリストを構成する特別なライブであり、過去に、2012年、2013年に旧・国立競技場で開催された。

そして本来、7年ぶりとなる「アラフェス」が、今年の5月、新・国立競技場で開催される予定であった。しかし、2月26日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、日本政府が、大規模イベントの中止・延期を要請。それを受けて、5月の「アラフェス」開催の告知、および、リクエスト曲募集が延期となる。

4月7日、7都府県に緊急事態宣言が発令されたことに伴い、5月の開催を正式に延期することが決定。メンバー5人、およびスタッフは、先の見通しが立たない中、懸命に、延期公演の実現の可能性を探り続けた。一度は水面下で、10月23日〜25日の開催が決定しかけるも、更なる感染拡大の報せを受けて、その可能性さえも途絶えていってしまう。

最終的に、ジャニーズ事務所としては、有観客ライブの開催を断念。無観客でもなお、新・国立競技場で「アラフェス」を行うか否か。その判断は、嵐の5人に委ねられた。


そして、メンバーの決断によって、今回の無観客ライブ配信に向けて準備が進められた。Netflixのドキュメンタリー番組『ARASHI's Diary Voyage』(#17)において、それぞれのメンバーは、「アラフェス2020」に懸ける想いについて、次のように語っていた。

櫻井「やっぱり国立って特別で、自分にとって、思い描いていた夢のその先の先だったから、初めて立った時ほんと嬉しかったし、改修工事に入る前に、コンサートの最後に松潤が、『またここで会いましょう』って言うんだけど、その時には、またそこでできる確約なんかなかったから、やっぱまたあそこに立てるっていうのは、かなり特別だね、自分にとって。」
大野「(無観客ライブは)初めてだし、終わってどう感じるかも分からないし、ファンの人たちも配信を観て何を思うのかも、たぶん終わってみなきゃ分からないと思うんだよね。寂しいは寂しいけど、それも楽しみの一つになれればいいなとは思ってるけど。」
相葉「本番に向かっていく緊張感みたいなのは出てくるかな。ちょっとでも豊かになったり、楽しくなったり、気持ちがね、心が、なってくれたら一番嬉しい。」
松本「どれだけ魂を込めるかってことなんじゃないかな。何ができるか、何をするか、だと思うから。本当はそこにみんながいてっていうのが、今まで当たり前だったけど、当たり前が当たり前じゃなくなってる今、どういうライブになるかね。変わってしまった中、変わらないものが何か。また、変わった中だからこそ、できることは何か。今だからこそ表現できることは何か。それをみんなに、どう届けるか、5人で。」
二宮「(新・国立競技場は)我々嵐が、初めて(ワンマンライブを)やる場所である、っていうことが大きいかな。プレッシャーというか、使命、責任というか、そっちも同時に感じなきゃダメだよね。『エンターテインメントの国立競技場』の歴史が、そっから始まるわけだから。それはちゃんと誇りに思って、敬意を払って、あそこに立つっていうのが、責任として我々にはあるよね。」



そして、ついに迎えた配信日。

今回の公演は、2部構成となっており、ファンクラブ会員のみが視聴できる「PART 1」では、"Love so sweet"、"PICA★★NCHI DOUBLE"、"One Love"をはじめ、リクエスト投票ランキングの上位曲や、メンバー5人のソロ曲などが披露された。(なお、「PART 2」の開始前には、この公演のダイジェスト映像が配信されていた。)

今回は、「アラフェス2020」の後半戦「PART 2」の模様を振り返っていきたい。


1曲目は、今回のリクエスト投票ランキング(アルバム曲)で第1位に輝いた"5×20"。国立競技場の超巨大ビジョンに、デビューから現在に至るまでの5人の写真が、次々とハイライト形式で映し出されていく。そしてその上に、メンバー5人が自ら手掛けた歌詞が浮かび上がる。

《次は何しようか  気にしないでいいか/嘘じゃない今までが  教えてくれるから》("5×20")

この着飾らない言葉は、まさに、5人同士の確かな信頼関係を表しているのだろう。活動休止を約2ヶ月後に控えた今このタイミングで聴くと、前回のツアーの時とは異なる響き方をしていたように思う。


そして2曲目には、一切の出し惜しみなく、いきなり"Happiness"が披露される。バックダンサーを務めるジュニアたちも加わり、一気にライブの高揚感が増してきた中、3曲目の"CRNIVAL NIGHT part2"では、その熱量が更に高まっていく。(なお、この楽曲では、《CRNIVAL NIGHT》という歌詞が、「アラフェス」の祭り仕様で《FESTIVAL NIGHT》へとアレンジされていた。)


松本「観てるか? 届いてるか? 準備はいいか?」
二宮「嵐が来たぞ、嵐が国立に立ってるぞ、今から嵐が日本一の、世界一のショーを見せてやるよ!」
櫻井「画面の前のあなた、調子はどうなんだ!?」

メンバーそれぞれの熱いMCを経て、激しいロック・バイヴスに満ちた"BRAVE"へ。赤と青の炎が、夜のスタジアムにとても映えていた。


続いて、リクエスト投票ランキング(シングル曲)において第4位に輝いた"君のうた"へ。

《歩き出す  明日は僕らで描こう  涙に暮れたとしても塗り替えてゆく/強さ教えてくれた  君の温もりを/追いかけて  果てない未来へ繋がる/いつか巡り逢える虹の橋で  同じ夢を見よう》(”君のうた”)

2019年1月に活動休止を発表した時点における最新シングルであり、前回のツアーにおいても、幾度となくハイライトを担ってきた楽曲だ。


《最終電車に乗って憂鬱の駅を駆け抜けてこう/君の街まであと少し/僕らは泣いて笑ってそれでも明日を夢見てしまう/ありがとう素晴らしき世界》(”素晴らしき世界”)

2005年のアルバム曲"素晴らしき世界"についても同じことが言えるが、活動休止が迫った今このタイミングで披露されることで、本来秘めていた楽曲のメッセージが、さらに深みを増して聴こえる。今回の公演、および、それぞれの楽曲のパフォーマンスは、嵐からファンへのメッセージとして受け取ることができるが、しかし、このセットリストは、他でもなくファン自身が作ったものであることが感慨深い。


ARの幻想的な光の演出から幕を開けたの"Sugar"では、メンバーそれぞれのアダルトな魅力が冴え渡る。続く"a Day in Our Life : Reborn"では、同じくARの演出によって、それまで画面下に字幕として表示されていた歌詞が、国立競技場の広大な空間に浮かび上がっていく。これこそまさに、無観客の配信ライブだからこそ実現できた、新しい時代のエンターテインメントの形である。


今年の夏のシングル"IN THE SUMMER"では、フロア一面を海に見立てる大胆な演出も見ることができた。そして何より、この楽曲では、2020年の嵐が、次々と音楽的なトライアルを積み重ねている事実が、改めて浮き彫りになったように思う。J-POPの枠組みを大きく逸脱し、世界最先端のポップ・ミュージック・シーンとの接続を試みる。同時に、長年愛してくれたファンを置き去りにせず、新しい興奮と喜びを届け続ける。このエレクトロ・ダンス・チューンには、そうした5人の野心が秘められているような気がして、今回ライブパフォーマンスを見てとても痺れた。


中盤のMCでは、いつものように5人の和気藹々としたカジュアルなやり取りが続く。ふと、このグループが年末に活動休止するという事実を忘れそうになるほどだ。

松本は「夢のようだね。」と呟いていたが、約束の場所である国立競技場での公演が実現に至るまで、波乱万丈の物語があったからこそ、その何気ない一言に心を動かされる。


ライブは、いよいよ後半戦へ。

ブルーノ・マーズが作詞・作曲を手掛けた全編英語詞のミディアムバラード"Whenever You Call"は、嵐の表現が、日本だけではなく、更に遠く広く、世界へと届いていく可能性を改めて感じさせてくれた。そして、こうしてライブで聴くと、二宮のエモーショナルなロングトーンに圧倒される。

続いて、荘厳なオーケストラアレンジの"Monster"が披露される。やはり何度聴いても、1番のサビにおける大野のソロ歌唱が素晴らしい。

2009年『Everything』のカップリング曲"season"を経て、同じく大野のパフォーマンスをフィーチャーした"truth"へ。ドラマティックなオーケストラのサウンドが、壮絶でダークな楽曲世界を押し広げていく。


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そして、今回の「アラフェス2020」のハイライトへ。国立競技場の歴史を振り返るムービーを経て、「僕たちと、みんなはつながっている。この場所から、一筋の光を届けられたら。」という嵐からのメッセージがビジョンに映し出される。その言葉と共に、米津玄師が作詞・作曲を手掛けた"カイト"が披露される。

《嵐の中をかき分けていく小さなカイトよ/悲しみを越えてどこまでも行こう/そして帰ろう  その糸の繋がった先まで》(”カイト”)

2020年の今、嵐の5人が歌うメッセージとして、これ以上に美しく、正しい言葉はないと、僕は思う。横一列に並ぶ5人の晴れやかな表情が、真っ直ぐに未来を見据えるその瞳が、活動休止の先に、きっとまた嵐の新しい物語が続いていくことを予感させてくれる。


ここから、ついにクライマックスへ。リクエスト投票ランキング(シングル曲)のトップ3の楽曲が、カウントダウン形式で披露されていく。

3位は、運命のデビュー曲"A・RA・SHI"。2020年の今聴いても、このミクスチャー・ポップは、一切古びて聴こえないから不思議だ。櫻井の渾身のサクラップが、熱く鋭く、巨大な国立競技場に響き渡っていた。


2位は、"感謝カンゲキ雨嵐"。

《Smile Again  ありがとう/Smile Again  泣きながら/生れてきた僕たちは/たぶんピンチに強い/Smile Again  君がいて/Smile Again  うれしいよ/言わないけど  はじめての/深い  愛おしさは嵐》("感謝カンゲキ雨嵐")

21年にわたる歩みの中で、幾度となく、嵐の5人自身の心を奮い立たせ、そして何より、ファンと感謝の気持ちをお互いに共有し合ってきた至上のアンセムだ。この曲が、ファン投票結果の上位にランクインしている事実に、ただただ涙が止まらない。


そして1位は、新しい時代における、新しい代表曲"Turning Up"。これまで、20年以上にわたり、日本の音楽シーンを彩り、照らし、導いてきた嵐には、まだまだ挑戦すべきことがある。それが、J-POPの「革新」という一大テーマであり、この曲は、5人の新しいトライアルの一つの結実の形である。

《We got that something  Your guilty pleasure/ポケットには  Funky beats to drop/We bring the party  Let's get it started/世界中に放て  Turning up with the J-POP!》("Turning Up")

僕は、この楽曲が1位に輝いたことには、あまりにも深い意義があると思う。今回の公演は、ファン感謝祭の意味合いが強いものであっが、しかし決して、ただ過去を振り返るだけのものではなかった。次々と新しい表現に挑む嵐、その最新章の楽曲が、2020年の今、ファンに最も強く求められているという事実に、とても感動した。

その意味で、今回の公演は、21年間の集大成ではなく、またここから幕を開ける未来へ向けた最初の一歩なのだと思う。


松本「いろいろあったけど、ライブできてよかったよ。また、また、会いましょう。」

その力強い言葉は、活動休止のその先に広がる未来に繋がる「約束」に他ならない。またいつか必ず、嵐の国立競技場公演を観たい。



リクエスト投票  シングル曲ランキング

【1位】Turning Up
【2位】感謝カンゲキ雨嵐
【3位】A・RA・SHI
【4位】君のうた
【5位】PIKA★★NCHI DOUBLE
【6位】truth
【7位】Monster
【8位】言葉より大切なもの
【9位】Love so sweet
【10位】One Love


リクエスト投票  アルバム曲ランキング

【1位】5×20
【2位】Love Situation
【3位】5×10
【4位】エナジーソング〜絶好調超!!!!〜
【5位】Sugar
【6位】素晴らしき世界
【7位】P・A・R・A・D・O・X
【8位】Lucky Man
【9位】カンパイ・ソング
【10位】CRNIVAL NIGHT part2


リクエスト投票  カップリング曲ランキング

【1位】Still...
【2位】ファイトソング
【3位】season
【4位】五里霧中
【5位】僕が僕のすべて
【6位】ユメニカケル
【7位】時計じかけのアンブレラ
【8位】花
【9位】Count on me
【10位】明日に向かって




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