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もう戻れないヒミツの愛人関係。

世界中で喫煙者が減っているという。
しかし、相変わらず僕は喫煙者の一人である。

特に食後の一服は欠かせないルーティンである。

食後の一服は、なぜあんなにも美味いのか。
食欲を満たした後の一服には、
相撲でいう手刀というか、
競馬でいうウィニングランというか、
そういった類の達成感を味わうことができるのだ。

僕は手刀もウィニングランも経験はないが、
恐らく脳の汁を計測したら、
食後に一服したときと同じ種類の汁が発見されるのではないだろうか。
いつか科学的に証明されると信じている。
(何を言っているのカナ?)

兎にも角にも、
今では喫煙可能な飲食店は少なくなってしまったので、
ぜひ、自宅であの達成感を味わいたい。

今回は、ただ食後に一服するというより、
最高の「食後に一服」をする「ために」食事をする
という目的で、料理に取り掛かろうと思う。

それはそうと、
食後の一服のために料理をするといっておいて、
なぜ、タイトルが「愛人関係」なのか。
それは本項を読み進めれば次第に明らかになるであろう。

まず、タバコに合う料理を決める。
必須要素は以下。
糖分、脂肪分、ニンニク、アルコール。
アッサリかコッテリかでいうとコッテリ。
そして満腹感。
これは最低限、譲ることはできない。

しかし、今家にある食材でできるのか?
焦って冷蔵庫を漁ったところ、
随分前にいとこから大量にもらった、
「ぎょうざの満州」を発見した。
だいぶ消費したがまだ残っていたようだ。

現在3月。賞味期限はどうか見ないでいただきたい。

少しだけ脇道に逸れるが、
読者諸賢は「ぎょうざの満州」をご存知だろうか?

「3割うまい!!」のキャッチフレーズでお馴染みの、
埼玉県所沢市から始動した、最高に美味い餃子を作る
会社である。

この「3割うまい!!」という謎のキャッチフレーズ。
これは「うまい、安い、元気!」でうまさ3割増し
という意味らしい。
また、原材料費3割、人件費3割、諸経費3割でバランスの良い経営をするという意味も含まれているのだとか。
なんて素晴らしい理念だろうか。

チャーミングな女の子と、丸みを帯びたフォントが
たまらない。

てなわけで、ぎょうざ定食を作ることにした。

僕が思う「ぎょうざ定食」とは、
餃子の王将の餃子定食のことを指している。
餃子と白米、副菜はキムチで中華スープが付いている。学生時代に呆れるほど食べたメニューである。
今回はあの定食を頭の片隅に置きながら
定食製作に着手したい。

お米を炊飯器にセットしたら、
まずは中華スープに取り掛かる。

創味シャンタンを切らしていたので、
今回は鶏ガラの素でスープを作ることにした。

ネギを斜めに切り、鍋にごま油をひく。
切ったネギと、小さじ1程度のニンニク、
生姜のチューブを鍋に入れ、
弱火で香りが出るまでじっくり炒める。

食欲をそそる良い香りがしてきた。

油に香ばしい香りが移ったら、鍋に水を入れ、
そこに適当な分量の醤油、オイスターソース、鶏ガラの素と、ほんの少しの酢を入れて、乾燥わかめも投入したら、しばらく火にかけ完成。

僕は分量を測ったり計算したりするのがどうも苦手で、大体どんなことも横着してしまう。
今回はニンニクチューブを入れすぎて、とんでもなく
ニンニク臭の強い中華スープが出来上がった。
お店でこのスープが出てきたら、
「周りからクセェって言われたんですけど」という
クレームが発生するだろう。

スメハラ製造スープの完成

続いて餃子を作っていく。
フライパンに薄く広がる程度の油を入れて中火にかけ、軽く温めたら火を止める。
次に餃子を並べ、大さじ一杯の油を餃子の上に回しかける。

1パック12個入り。

100ccの水を入れフタをし、
フライパンの底からはみ出さない程度の火力で約5分加熱する。
その後、中弱火で2〜3分加熱し、焼き色がついたら完成。

いかにも身が詰まってそうな、罪な見た目である。

そしてタレを用意する。
今回餃子につけるタレは、
酢ゴショウと、付属でついていた醤油ダレの2種類。

コショウはドバドバかける。くしゃみ注意。

餃子、中華スープ、キムチ、炊き立ての白米を盛り付けぎょうざ定食の完成。

タバコに合わないわけがない。

ぼく「いただきます。」
と、餃子に手をつける前に、重要なブツを忘れていた。

これを忘れたら、二度とシャバには戻れないだろう。

例のブツを用意し、

ぼく「ヨシ、今度こそいただきます。」

缶ビールを開け、飲む。
喉越し満点クリティカルヒット。

続いて餃子。
いかにも食べて欲しそうな目でこちらの様子を伺っていた。
仕方なくそいつを摘み上げ、シャワーに入ってもらった。
いや違った、タレをつけた。
そしてとりあえずベッドへ座らせた。
いや違った、白米の上に乗っけた。

肉汁と共に豚肉の旨み、続いてキャベツと玉ねぎの甘み、そしてニンニクとニラのパンチが同時に押し寄せる。
そしてぼくはケモノのように白米をかき込んだ。
もちろんビールでそれらを流し込み、発情。
じゃなくて、大変ジュゥシィで美味しかったです。
申し訳ございません。

胃袋に入るため、餃子達が後ろで待機している。

今度は酢ゴショウでイってみよう。

ぎょうざ「もう、焦らさないで一口でいきなさいヨ!」

ぼく「ウン、酢ゴショウ美味い!」

さっぱりかつスパイシーで、
肉の味をしっかり感じることができる。

今後ぎょうざのタレ機関(通称GTO)に
酢ゴショウも加入するべきだ。
さすればそう遠くない未来、世界平和が訪れるだろう。

続いて白米ウィズキムチ。

餃子を背景に、白米の白とキムチの赤。
正月よりめでたい。

ビール→餃子→白米→ビール→スープ→キムチ→白米
→ビール→キムチ→餃子→白米→ビール・・・。

奈良県にあるお餅屋さん「中谷堂」の高速餅つきのようなテンポで平らげた。

ぼく「グアーー食ったァ・・・!」
胃がもたれ、ぐったりしてきた。
十分過ぎるほどの満腹感である。

これで準備万端だ。
ようやく本項の企画を実践することができる。
いよいよ最高の「食後に一服」を執り行う。

台所の換気扇を「強」にし、
タバコに火をつける。

脳汁不可避。

ぼく「・・・。」

僕の目の前には、間違いなく楽園が広がっていた。

僕の言う楽園とは、
ハワイのワイキキビーチやタイの繁華街というよりも、
マレーシアかインドにある、
密林の中に佇む装飾が美しい寺院の中で、
現地で買った大きな絹地の布を纏い、
金色の椅子に深く腰掛け、
静かに微笑みながら虎を撫でているイメージである。

そうして全細胞が歓喜と安堵に包まれ、
圧倒的な「達成感」を得たのだった。

しばらく明後日の方向を向きながら黄昏ていたところ、
ぼくは、ある真実を導き出した。

タバコとぎょうざ定食。
前世ではきっとヒミツの愛人関係だったに違いない。

ぎょうざ定食は、ビールやハイボール達と、
友達以上恋人未満のような、
甘酸っぱい三角関係のような、
持ちつ持たれつな関係だったのに、、、。

しかし、結局タバコという、節操のないダメ男と
出会ってしまった。
しかもコイツときたらなかなか厄介で、
誰とでも寝るし、手が早いし、多分テクニシャンだ。

ぎょうざ定食は、タバコの愛人になってしまった。
出会ってしまったらもう戻れない。
残念ながら相性抜群なのだ。

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