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ごくう日記:「食べるごくうに」あるいは「メイラード反応」

妻が右手を打ち身して、料理ができなくなった。代わりに、ごくうに食べさせなければならない。もう4ヶ月を越えた。その間、ごくうが食べなかったのは2日。妻が料理するときには週に1,2度食べない日が出ていた。なんとか苦労して、宥め賺して食べさせることもあった。

ごくうはペットフードを選んで食べさせてみるが、少し食べることはあっても、必要なエネルギーほどには食べない。色々試みた結果、豚肉だけが残った。

ごくうの主食は豚肉である。豚肉を炒めて与えている。ごくうは小さい(3.6kg)ので、50グラムあれば、食べさせえすれば、腰回りがゆたかになっている。

50グラムの豚肉を炒めるが、コツがある。まず、豚肉に火を通すためにまんべんなく炒める。このとき、ミリンを注ぐ。甘さが出る。豚肉は炒めると水が出るので、ミリンは少しだけに止める。

ごくうは豚肉が大きいと食べてくれない。刻む必要がある。炒めた豚肉を小さく刻み、再び、炒めるが、バターを少々。バターを溶かしながら、豚肉をさらに炒める。

炒めながら豚肉の色づきを注視している。豚肉が褐色になり始め、次第に褐色度が高まっていく。風味というか、香りが漂ってくる。褐色度と香りが頃合いの頃(判断が難しい:焦げる少し前だが)、火を止める。

肉やナッツ、穀物、野菜は140度程度になると、タンパク質を含んでいるので、複雑な反応が始まることが知られている。アミノ酸(タンパク質を作る材料)と糖の反応が起こることが知られており、発見者の名を付けて、「メイラード反応」と言われている。発見は1912年のことである。

グッと若い頃、家の料理をせざるを得ないとき、体感で感じ取っていたのだろう。妻に代わって料理を始めると、その体験が生きており、妻の戦略「お父さんの料理は美味しい」に乗せられ、料理し続けている。ごくうはその恩恵を受けているに過ぎない。

料理すれば、分子の変化が起こり、風味や香りが心知良くなってくるが、メイラード反応は160度を超えると、熱分解が起こり、焦げ始める。香りが悪くなり、食べると苦くなる。160度よりも少し前で火を止めるのが重要、頃合いが肝心である。(実際の料理では、温度を測れない。見た目と香りを嗅ぎ取る)

ちなみに、ごくうが2日食べなかったのは、散歩の時に、ガールフレンドに会ったときである。ごくうも恋している。