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習作童話:「蛙の帰る場所」
原作:メイP子「おばあちゃんの手」、編作:Goku
小さな町の片隅に、絹織物を織るおばあちゃんがいました。
おばあちゃんは大正生まれ、戦後の苦しい時代、家庭の事情、愛する祖父を支え続けました。おばあちゃんは商売に慣れないながらも、家族を守り、どんな困難にも立ち向かいました。姑の厳しい言葉や、事故で不自由になった夫の介護が続いても、決して弱音を吐くことはありませんでした。
自分の手で糸を紡ぎ、はたおり機を織り続けていました。
織物のひとつひとつを大切に。おばあちゃんは、はたおり機の音とともに、日々を静かに、確かに重ねていきました。
長い年月を経て皺だらけなっていきました。それでも、おばあちゃんは決して怯むことはありません。おばあちゃんはしっかりと織り続けていきます。
子供が育ち、孫が生まれても、続けていました。孫が大きくなり、機織りをしているおばあちゃんを尋ねてきました。機織りの休憩の時、おばあちゃんは孫の手を取り、手を握ります。孫の手に、おばあちゃんの手の皺を通して手のひらのぬくもりが伝わってきます。何千、何万の思いと力が込められていました。
孫が大きくなって、おばあちゃんを尋ねたとき、手縫いの小さな蛙のぬいぐるみを作っていました。蛙のぬいぐるみはとても可愛く、孫への愛情が感じられるものでした。蛙の顔に宿る眼差しはどこか静かで、力強さを感じさせます。
「これ、無事に帰る蛙だよ。」
おばあちゃんのまなざしは穏やかで、思いやりに満ちています。
「あなたにも、どんな道を歩んでも、自分のいるべき場所に必ず帰れるようにって、そんな思いを込めたの。」
自分の人生を重ね、孫に教えたかったことがあったのです。
どんなに辛いことがあっても、自分の場所を見つけ、そこに帰る力を持つことの大切さが、心の底に届いたのです。
おわり