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セミ殻に思いを馳せる

千珠は、いつものように帰宅途中の路地裏で足を止めた。街灯に照らされた壁に、ひっそりと蝉の抜け殻がくっついていた。その姿は、まるで小さな小さな宇宙船が着陸したかのようだった。

千珠は、子供の頃に蝉捕りをしたことを思い出す。

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夏の暑い最中、友達4人と鎮守の森に出かけた。

蝉しぐれの中、友達は思い思いに蝉を探す。
ある友は首尾よく蝉を捕まえ、蝉かごに。
ある友は注意深く蝉の後ろに陣取るも、蝉は危険を察知し、身体を軽くするのか、水の尾を引く。
ある友は蝉が飛び立つ瞬間をうまく捕らえる。
千珠はなかなか見つけられず、鎮守の森の奥深く迷い込む。

皆の声に誘われて、蝉を探すのを諦めた。ふと見ると、木の下にセミの抜け殻。屈み込みセミの抜け殻を覗き込む。

(蝉は飛んでいったんだ・・・)

千珠を見つけた友3人は、千珠と並んで、取り囲むように見つめる。千珠の見つめる先には、セミの抜け殻。友4人でしばしセミの抜け殻を見つめる。それぞれがそれぞれの思いで抜け殻を見つめている。

日が西に落ち、三日月が現れる。その横に、2本の光柱が放射状に伸びる。友の一人が気づき。

「あれ・・」

指をさす。

(航跡に見えるわ・・・)

光の青い柱が濃くなっていき、やがて薄くなる。友4人は歌を歌いながら家路を辿る。

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宇宙船のような蝉の抜け殻が遠い記憶を呼び起こす。友達との笑い声、抜け殻が「神秘」を教えてくれた、あの日。大人になった今、その記憶はどこか遠くに感じられるが。

千珠は、勤め帰り、宇宙船のような抜け殻を見に来るようになった。月夜には、抜け殻がまるで月とつながっているように輝き、千珠の心を静かに照らした。

千珠は抜け殻に向かって語りかけた。

(蝉さん、あなたはどこへ ・・・)

着地している抜け殻の宇宙船から、蝉が抜け出し、飛び去るシーンが蘇った。同時に、友の成長していく様子が蘇る。家族の優しさが包んでくれていることを実感する。

ある朝、千珠は抜け殻がなくなっていることに気づいた。少し寂しい気持ちになった。が、同時に安堵感も覚えた。宇宙船に感じた抜け殻は、千珠の心に生命の象徴として長く残った。

---終わり