THE STARS 『PERFECT PLACE TO HIDEAWAY』

THE STARSの中心人物である石原洋は自分にとって"音楽とは"ということに真摯に向き合うきっかけとなった人物である。まだ大学生だった頃に知ったゆらゆら帝国というバンドは今まで聴いてきた音楽とは出自がまるで異なり、全てが新鮮だった。それからフロントマンである坂本慎太郎が紹介しているミュージシャン、アルバムをひたすら聴きあさる日々を送ることになる。

石原洋に出会うまでそう時間は要しなかった。ゆらゆら帝国のプロデューサーであり、サウンドメイキングの要として活躍していた彼がWhite HeavenとTHE STARSというバンドから音源を発表していると知り、即座に新宿のディスクユニオンで購入したのがWhite Heaven『OUT』と今回紹介するTHE STARS 『PERFECT PLACE TO HIDEAWAY』である。

かつて坂本慎太郎は"砂漠の真ん中に孤児院がポツンと立っている様にサイケを感じる"と言ったが、まさに本アルバムはそれを感じさせる内容となっている。1曲目「Subway(Aka Night Walker)」のオープニングから力強いストレートな荒川康伸のドラムと粘りのある亀川千代のベースを下地にslap happyを匂わせる栗原ミチオのギターが色を塗ることで妙なうねりを感じさせる。かと思えば「Double Sider」「Lemonade」「Ice Blues」では突如後頭部を鈍器で殴られたような衝撃を受けるが、それらのハードな楽曲の中にも奥底にある静寂さを感じさせる場面転換が存在する。これらの違和感に人は"サイケ"を感じ、酔いしれるのではないだろうか。カラフルで歪んだヴィジュアルではない。突如現れるその違和感が空間を歪ませるのだと。

本アルバムの発表から数年後、THE STARSは解散した。その後石原洋は石原洋 with Friendsとして年に数回のライヴを行い、そこでは新曲も披露いるが音源化はされていない。いつか音源が発売されたら、そこには今も変わらず感じさせるその叫びと静けさに自分はまた酔いしれてしまうのだろう。

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