cero『Obscure Ride』

最初の記事で2015年一番聴いたアルバムはPIZZICATO ONE『わたくしの二十世紀』と書いたが、多くの人は2015年はブラックミュージックが面白い年であったと言うだろう。

D'Angelo And The Vanguard『Black Messiah』の発売をきっかけに(正式には2014年12月だが、このアルバムが2015年の幕開けとなったのは間違いないだろう)the Internet、Kendrick Lamar、Lianne La Havas、Tuxedoなど挙げればキリがないほどのブラックミュージックが高い評価を受けた。自分もD'Angelo And The Vanguard『Black Messiah』の1曲目である「Ain't That Easy」を聴いたことによってブラックミュージックを追い始める2015年となった。バスドラが強調されたドラムを中心に他の音たちとの絶妙なズレと何重にも重なる声が生み出すGrooveに酔いしれ、他のD'Angelo作品を買いに走ったのも約1年前の話。

上記に書いたGrooveを試みたアルバムが日本でも2015年に発売された。今回紹介するcero『Obscure Ride』である。


ceroは2ndアルバム『My Lost City』に収録されている「わたしのすがた」からもブラックミュージックの再現を試みているように感じるが、まだアルバムの核とはなり得ていない。あくまで今まで通りのexoticaが核である。

だが『Obscure Ride』ではブラックミュージックの再現がアルバムの核となっている。1曲目「C.E.R.O」からD'Angeloからの影響があることは誰が聴いても明らか。始めに鳴っているフィールドレコーディング的サウンドからもろに「Ain't That Easy」。ここで特記すべきことはその再現性の高さが尋常ではないということである。特にドラムのミックスやリズム感が素晴らしい。相当な時間や熱を費やしてGrooveの研究をしたに違いない。9曲目「DRIFTIN'」では大名盤、Marvin Gaye『What's Going On』の再現まで行っている。

ブラックミュージックの再現がアルバムの核と上記で書いたが、グッドミュージックな側面が希薄になっているかと言えばそうではない。アルバムのリード曲である4曲目「Summer Soul」を中心に、シングルとして発売されていた7曲目「Orphans」などは今までのceroと同様の側面が見られる楽曲となっている。

本アルバムはオリコンのウィークリーランキング初登場TOP10、音楽雑誌での2015年ベストアルバム選出、SMAP×SMAPに出演など、ceroにとって商業的にもクオリティ的にも最重要作品となっていることは間違いない。ただし1st〜2ndアルバムのExoticaとグッドミュージックの融合したサウンドから本アルバムへの遷移を体感することで、より本アルバムの意味を感じられるため、ceroを聴いたことがない方々は是非1stアルバムからの購入をおすすめする。そして本アルバムに到達し、そのGrooveに酔いしれて欲しい。

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