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10Xでの5年間

2019年6月@丸の内、DCMベンチャーズからのご紹介で10X代表の矢本さんとお茶をした日から僕の10X人生がスタートしました。

その日は僕が少し早く店に到着し、少しすると矢本さんらしき人が入口から歩いてくるのが見えました。

僕は無意識に立ち上がり、矢本さんに向かって「本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます」と頭を下げました。すると、

「そんなわざわざ立ち上がって挨拶してくれなくて良いのに。律儀ですね」

これが、矢本さんが僕に発した一言目でした。なぜだか、今でも鮮明に覚えています。

僕の10X人生は、あの日矢本さんとの会話で灯された情熱に突き動かされた、険しくも楽しい登山のような時間でした。


10Xを退職し1ヶ月がったこのタイミングで改めて、"この5年間は自分にとってどんなものだっただろう?"を振り返ってみます。

本当に色々なことがありましたが、まとめると以下の2つに行きつきました。

一つ:"失敗"の扱い方を学んだ
二つ:"自分が何者であるか"を自己認識できた

"失敗"の扱い方を学んだ

10Xでの5年間で得られたスキル・経験はそれなりにあります。

実績という意味では、会社・事業としては"これから"というタイミングで抜けたので、残念ながら自分が誇れる実績はほとんどありません。

10Xからの退職を決意したのは、起業という決断とセットだったこともあり、いわゆる"転職活動"はしませんでした。よって、自分が転職市場からどのように評価されているかも、正直よくわかりません。

それでも、僕にとって10Xでの5年間は、この後の人生を大きく左右する大きな意味を持つと確信しています。

そう思える理由は、在籍中に経験した数々の"失敗"にあると感じています。

2019年当初、まだ従業員が7名だった10X。そこから数年間で120名まで増えました。売上も大きくなりました。この間、個人としても会社としても、たくさんの失敗を経験し、その失敗によって学び、成長してきました。

例えば、2019年に立ち上げた自社ネットスーパーの「タベクル」。食品を自宅まで届けてあげれば便利で使われるだろうという仮説は見事に外れ、2ヶ月間で受注数ゼロ。。

また、大企業相手の事業開発において、僕が先方の要求や納期を容易く飲み込み過ぎた結果、開発側に過度な負担を掛け、大きな負債を負わせてしまったこともあります。

さらに、スタートアップだから、人数が少ないからと、四六時中仕事のことばかり考え続けた結果、家庭を疎かにし、家族の関係性が壊れた大失敗もありました。

失敗を挙げたらキリがないですが、それだけ失敗できるだけの"打席数"があったことが本当に貴重だったと感じています。

何者でもない自分が、身の丈以上の機会をもらい、とにかくがむしゃらにやりました。それは当然失敗するわけですが、いくつかの成功もありました。

折角のいい写真も、取引先でマスクを正しく着けていないということで×をくらう

そして、"失敗とは実は成功に向けての通過点であり、失敗なくして成功はないし、むしろ失敗してそこから這い上がることが何よりも成功の近道である"という、一見当たり前のようで実は難しいことを、肌で感じ、心に刷り込むことができました。これが今の自分にとって何よりの財産となっています。

大企業にいた時の自分を振り返ると、失敗するための"打席数"が圧倒的に足りていなかったと痛感します。

更に、数少ない打席では、失敗することを恐れ、失敗することがダサいという謎のプライドを持っていました。

当時は、日々の小さな事象からキャリア選択などの大きな決断も含め、失敗に対する考え方を"大きく"誤っていました。

「失敗を恐れチャレンジしないこと」
「いくつかの選択肢がある中で簡単な道を選ぶこと」

これらの決断によって、実は失っているものがたくさんあるということに気づきました。

そしてこれらに気づき、失敗に対する正しいマインドセットを持てるかは、人の成長・成功のカギなのではないか、とまで思うようになりました。

"You miss 100% of the shots you don’t take"

Wayne Gretzky

マニアックな余談ですが、レアル・マドリードに所属する18歳のブラジル代表、エンドリッキ選手のプレーが最近はお気に入りです。

スター選手揃いのチームでまだレギュラーには定着できていないものの、途中から出場してくると、世界最高峰のヴィニシウスとエムバペを無視して貪欲にシュートを打ちに行きます。

「いやそこはパスだろ…」と思っても、ゴールを決めれば誰も何も言えません。18歳のこのメンタリティに感服しています。

自分が何者であるかを"自己認識"できた

10Xに転職する前の29歳の自分にとって最大の悩みは、「自分の価値がよくわからず、自分はこのままで良いのか?」という漠然とした不安を抱えていることでした。

そこからスタートアップに飛び込んで5年間揉まれた結果、結局自分はジェネラリストで、特別優秀でもなく、カリスマでもなく、眼を見張るような結果を出したわけでもない、という点は何も変わっていません。

一方、自身が"本気"で取り組むことで、その熱量が周囲に伝播し、それによって人や物事を動かすことができる、という目には見えづらい力は、強みとして認識して良いのでは、と思えるようになりました。

10Xを退職するにあたり、お世話になった取引先には一人一人にご挨拶のメールを送りました。

その際、多くの人から「難しいと言われたネットスーパー事業をここまで前に進められたのは、赤木さんの情熱によるところが大きいです」という言葉をいただき、胸が熱くなりました。

退職時に同僚からもらった色紙でも、多くの人から「苦しい時に前も向いて歩く熱量に助けられた」という言葉をもらいました。

また、自分は何者でもないジェネラリストであるということを認め、ジェネラリストはジェネラリストなりに"その時その場面で必要なスキルを体得しなんとかする力"で生きていくのだと腹を括れました。

特別な力を持っていなくても、1.熱量を伝播させ、2.その場をなんとかする。

この2つは、実は事業を作る上で大事な素養なのではないかと思えた時、独立して自分で事業をやりたい、という思いが抑えきれなくなりました。

まとめ

「子ども向けの自然体験プログラムで起業する」と人に伝えた時の反応は大きく分けてふた通りあります。

「へ〜とっても素敵な取り組みだね。共感する。頑張って!!」
「本当にそれ大丈夫?事業として成り立つの?」

起業したら毎日不安が押し寄せてきて眠れない日々が続くのかな、と思いましたが、今のところはそんなことはないです。

それは、失敗の扱い方をわきまえ、自分が誰なのかを勘違いせずにいられているからなのかな、と感じています。

僕の心の中では、

「もしかしたら事業はうまくいかないかもしれない。でも、うまくいかないことがない事業なんてないし、諦めずに乗り越えることが大事だよね。」

「ひょっとすると乗り越えられない壁にぶち当たるかもしれない。でもそういう失敗を経験すること自体が人生の糧になるじゃないか。どうしようもなくなったら、また再出発すれば良いよね。」

「自分はカリスマでもなければ特筆した能力があるスペシャリストなわけでもない。でも自分が本気で取り組める領域に懸けたら、仲間になってくれる人がいるんじゃないかな。」

そんな気持ちでいます。

かけがえのない経験を与えてくれた、10Xという会社と仲間たちに心より感謝を込めて。新たなスタートを切ります。

新しいチャレンジはこちら。

常に自分のそばにいてくれる家族への愛も忘れずに。

気分転換に家族で北海道を周遊

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