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商社パーソンのスタートアップ挑戦について考える

今日で10Xに入社して丸2年になる。まさに、飛ぶように時間が過ぎるとはこのことだ。あわせて、明日から社会人10年目を迎える節目でもある。

この2年で自分のキャリアも、仕事に対する考え方や生活スタイルも大きく変わった。
あのまま商社に残っていたら今頃自分は何を考え、どんな仕事をしていたのだろう?と想像すると、なぜか笑ってしまう(なぜかは不明)。

きっと与えられた持ち場で頑張っているのだろうと思いつつも、この2年間スタートアップでもみくちゃになりながら得てきた経験はそれ以上に大きかったと胸を張って言える。それくらい濃密な2年間だった。

ちなみに、前職の三菱商事では9〜10年目にかけてマネージャーの職位を与えられ、給料が1.5倍くらいに跳ね上がる大イベントがある。
もし自分がまだ三菱商事にいたら、今頃の関心事は「マネージャーに昇進できるか!?」だっただろう。
10Xでも年度末は査定の時期だが、自分がどう評価されるかよりも、事業をどう大きくするか、そのために自分の能力を最大限ストレッチさせて何ができるか、に向き合う方が心地よいと感じている。

ちょっとエモい気持ちになったので、自分が20代後半にスタートアップへ挑戦することを決断してから、今になって見えている景色を少し書き留めておこうと思う。

転職時の思考プロセスについては、当時まとめた記事に全ての想いを込めているので、もし興味がある方は読んでみていただきたい。

TL;DR

このブログでは、3つの問いに答える形で自分の意見を書こうと思う。

・スタートアップに飛び込むことはリスクではないか?
・商社パーソンが活躍しやすいスタートアップの事業モデルとは?
・企業選びで意外と大切なことは?

これらの問いに対する結論はこうだ。

・リスクの捉え方で決断は変わる
・ステークホルダーが多い事業モデルに活躍のチャンスあり
・事業の成長可能性を信じられるか

リスクの捉え方で決断は変わる

転職を考え始めた時、商社をやめることのリスクについて考えた。終身雇用、高待遇を捨てるという決断が、生まれたばかりの子供を持つ自分にとって、家族を路頭に迷わせるリスクがある、と周囲からは何度も言われた。

たしかに、転職によって家族を不幸にしては元も子もない。経済的にちゃんと生きていけるかどうかはよく考えた方が良い。家族を困らせないという前提があった上で、リスクについては違う捉え方もできるのではないかと思うようになった。

一つは、時代の変化に伴って一つの会社に40年間勤め上げることが当たり前の世の中ではなくなったという点。もう一つは、短期的な待遇面の悪化を差し引いても、自分を成長させる環境を選択する方が長期的なリターンは大きいという点。言い換えれば、今居心地が良い環境にあぐらをかいて、チャレンジすることを止めてしまう方がリスクであると考えるようになった。

更に言えば、自分の人生を大企業に預けきることは、その会社が永続的に成長するとは限らないという不確実性に自らの人生を委ねているとも言える。

こうして、「チャレンジしないことがリスクである」という考え方が自分の中でどんどん大きくなっていき、自分の力で価値を創れる人材になりたい、という思いで転職を決意した。

ステークホルダーが多い事業モデルに活躍のチャンスあり

スタートアップで働き始めて以降、自分(商社出身者)が周りよりも得意だと感じることは、思惑の異なるステークホルダーの意見を集約し、プロジェクトや事業が最善の選択をするために各所と調整する能力だ。

過去の経験を遡り、なぜこれが得意と感じるのかを自分なりに分析してみると、商社時代に担当していた自動車ビジネスでの経験が多分に影響しているのではと思った。

メーカー・自社・海外の販売会社といったステークホルダーを相手に、モノを創ることもエンドユーザーに車を売ることもできない商社の価値を認めれもらうために、ありとあらゆる手段を使って情報を収集し、情報の見せ方や出すタイミングを駆使していたことを思い出した。

メーカーさんは何を考えていて、海外の販売会社は何を要求していて、客観的な今の状況から考えると誰に何を伝えどこに妥協点を持っていくべきか。そんなことばかり考えていた記憶がある。

今の10Xの事業も、小売事業者、自社、エンドユーザーというステークホルダーがいる中で、それぞれにとって最良な選択は何かを考え、思い通りにいかない時は社内外の調整役として走り回ることでプロジェクトを前進させる役回りを担っている。

商社は元来、自らの提供価値が小さい中でもスキマを見つけて事業機会を創出することを生業にしており、それを新人の時から叩き込まれて「お前のファンクションはなんだ?」と問われ続けていたことが今の自分を形成しているのだと思う。

そういった意味では、自らスキマで提供価値を見出していくトレーディングビジネスが商社から無くなりつつあることは、↓でラクスルの前田さんが言っている通り寂しさを感じる。

事業の成長可能性を信じられるか

スタートアップに転職する上で、最も重要視するべきは会社のカルチャーに自分がフィットするかであり、それは言い換えればその会社の人を尊敬でき、一緒に働きたいと思えるかだと思っている。

自分の転職の決め手も最後は人だった。

一方、この2年間10Xで働いてみて、カルチャーや人と同じくらい大事なことがあるということに気づいた。それが事業の成長可能性を信じられるかである。

スタートアップでは、驚くほど純粋に、全ての時間を費やして事業と向き合う。その事業を成長させるために全てを捧げると言っても過言ではない。組織作りも採用も、全ては事業のため。商社時代、ペルーに出向して現地の販売会社を成長させるために全てを捧げたあの時よりも、今の方がもっと密度濃く事業に向き合っていると思う。

そこまで猛烈に事業に向き合う環境において、マクロ環境含めて「この事業/市場は果たして成長するだろうか」という問いに真っ直ぐ「yes!」と答えられるかは、日々のモチベーションを保つために大切なことだと感じている。

僕は今、ネットスーパーやネットドラッグストアというマーケットが伸びると信じて、その中で10XのStailerが一番良いサービスだと確信し、精一杯小売事業者と向き合っている。このピュアな原動力こそ、誰に強制されるでもなく湧き出ていくるエネルギーの源泉になっている。

最後に

商社パーソンという括りやスタートアップという括りはどちらも曖昧かつ定義が広すぎてあまり意味のないものだと思っている。血液型みたいなものかもしれない。
ただ、人は同じ境遇の先人から学び、自分自身がそうであったように先人からの背中を押される一言に心を動かされ、人生の大きな決断をしたりする。

スタートアップの世界に来て2年。まだまだ生まれたての子鹿のように頼りないが、これまで僕が歩んできた道を見て、誰かが人生の新たな一歩を踏み出す勇気を出すとしたら、全力でサポートしてあげたいと思う。

告知

ちょうどこのタイミングでラクスルさんとのイベントを開催することになりました。このブログでは書ききれなかったことも赤裸々に話したいと思っているので、ぜひぜひ気軽にご参加いただけたら嬉しいです!

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