「好きな人嫌いな人」というとらわれが苦しみを生む(『ダンマパダ』第212・213偈)
私は、好きな人と一緒にいられる時や、苦手な人と一緒にいなくていい時はまったく問題ありませんが、反対に、好きな人に振り返ってもらえない時や、苦手な人と一緒にいざるを得ない時、苦しみを感じます。
そのような私に対して釈尊は、「そもそも『好き』とか『嫌い』という自分の思いから、憂いや恐れや束縛が生じている。すべては自分の中から生まれている。自分を苦しめている原因は、自分の思い通りにしたいという思いそのものにある」と教えてくださっています。
けれどそれは、「『好き・嫌い』という思いをなくさねばならない」というのではありません。無理矢理自分の思いにフタをすると、どこかで心が破綻してしまいます。釈尊の言葉に促され、「『好き・嫌い』という思いはあくまで自分の問題だった」と気付くことで、相手に対する見方も少しずつ変わってくることでしょう。
「好き・嫌い」の感覚は、誰にでも存在します。今回の言葉は、ぬぐいきれない「好き・嫌い」という思いに苦しんでいる私たちに、その原因を知らせ、安らぎをもたらしてくれるのです。
(本願寺新報2022年6月1日掲載)