はじめに - #ベッドタウンが生き残るためにいま考えるべきこと
77万3千人
これは2022年一年間に生まれた子どもの数の推計値です。
前年2021年から4.8%の減少で、政府の予想よりも11年早い減少スピードです。
77万3千人、これがどれくらいの数か、ほかの世代と比較してみましょう。
私(鶴ヶ島たろう)が生まれた1975年(団塊ジュニア世代)の出生数は190,144人、団塊世代ピークの1949年生まれは269,664人です。
2022年の77万3千人は、団塊ジュニア世代の約4割、団塊世代の3割にも満たない数です。
人口減少と少子高齢化、聞き飽きた言葉です。しかし、これまでとはまったく違うフェーズにはいってしまいました。いま全力で知恵を結集して動かないと、完全に手遅れになってしまいます。
これから何が起きるのか簡単に述べます。
キーワードは団塊世代の健康寿命終了です。
今年は2023年です。
団塊世代の中央である1948年生まれの人が75歳になる年です。これが大問題なのです。
団塊世代とは、1947年から1949年の間に生まれた第1次ベビーブーム世代を指します。この3年間に約800万人が生まれました。
団塊世代は戦後の高度経済成長期に青春時代を送り、バブル時代を経験し、東日本大震災前後に定年退職しています。
経済的にも政治的にも、長らく日本社会の中心にいた世代です。
その団塊世代が健康寿命を終えます。
健康寿命とは、「日常生活に制限のない期間の平均」「自分が健康であると自覚している期間の平均」のことです。
日本人の健康寿命は、男性72.68歳、女性75.38歳です。
簡単に言えば、健康寿命を終えると不健康になります。それまで働いたり地域活動をしたり買い物をしたり旅行をできていた人が、不健康になります。認知症になり近所を徘徊したり、病気になって看護や介護が必要になってきます。
人口のボリュームゾーンである団塊世代が健康寿命を終えると、具体的にどんなことが起こるのでしょう。
まず、労働力が不足します。
会社を定年退職した後も、さまざまな形態で仕事をする人は少なくありません。人生経験を活かして若い世代にはできない仕事をしている人も多くいます。無理のない範囲で短時間労働をする人もいます。前期高齢者は重要な労働力です。
しかし、健康寿命を終えると働くことが難しくなります。
次に、消費が落ち込みます。
停年退職したあとの団塊世代は積極的な消費者でした。高度経済成長期やバブル時代を経験している世代です。現在の若い世代には想像もできないようなぜいたくな経験をしている人もいます。退職したあと、グルメや旅行、趣味にお金を使ってきたことでしょう。
しかし、健康寿命を終えると消費が難しくなります。ここ1〜2年くらいで、テレビにでる芸能人が世代交代したことに気がついている人もいらっしゃるでしょう。これは、コロナ禍でスポンサーが広告出稿費を削減したのが主要因でしょうが、もうひとつには団塊世代が消費しないフェーズにはいったからだと推測されます。
それから、地域活動への参加ができなくなります。
多くの自治体には、自治会があります(地域によっては町内会や隣組と呼ぶようですが、ここでは自治会とよびます)。自治会は地域のごみ捨て場の管理や、夏祭りの企画・運営、火の用心の見回りなど、さまざまな地域活動を担っています。行政も自治会ありきで制度を設計しています。自治会はどの自治体でも成り手不足に頭を悩ましています。地域コミュニティの中心であった自治会が消滅の危機にあるのです。コロナ禍の影響もあって、自治会活動を休止しているところも少なくないと聞きます。そこへ、団塊世代の健康寿命終了なのです。
労働力、消費者、地域活動の担い手が今年あたりから激減するだけではありません。
健康寿命を終えた団塊世代は要サポート者になります。ほかの誰かのサポートがなければ生活が困難になってくるのです。
現在でも介護士などのケア職は人手不足です。絶対的にケアの手が足りなくなります。
では、どうすればよいのでしょうか。
出生率を上げる?
いいえ、これは解決策にはなりえません。
無論、子どもを産み育てたいと望んでいる人へのサポートは様々に必要です。行政がやるべきことはまだまだたくさんあるでしょう。
しかし、出生率を多少増やす程度では、人口減少を食い止めたり人口動態のアンバランスを是正することには寄与しません。
このまま何も手を打たなければ、みるみるうちに街の風景がかわります。「強い」人からより住みやすい街へ脱出し、引っ越しができない人は急速に疲弊していく街で為す術もなく沈んでいきます。
手を打つなら、今がラストチャンスです。
現状を冷静にみつめ、課題を洗い出し、未来を予想し、具体的な対策を考えていかなければいけません。
どうぞ、あなたのご意見を聞かせてください。
このシリーズでは特にベッドタウンにフォーカスして考えていきますが、どの地域にお住まいのかたにも参考になるはずです。
数日以内に次の記事を書きます。
よかったらおつきあいください。
鶴ヶ島たろう
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