【レポート】普通の生活が物語の一部のように感じる毎日(阿部藍子さん)
先日の発表公演『ヴェニスの商人』をもって、2022年度の演技講座が終了しました。
約15名の講座生の中には、学校に演劇部がなく表現の場を探す高校生、子育てと両立した活動を目指す主婦、50代にして初舞台に挑戦となる方など、様々な背景を持った方が参加していました。
今回は、昨年札幌に引っ越し、第2学期から演技講座に参加した阿部藍子さんよりご本人の許可を得て、参加振り返りレポートを公開いたします。
札幌でもシェイクスピアをやりたい!
食べることが大好きで美味しいモノが盛り沢山の北海道に住みたいと思い続け、半年前に夫と5歳の娘と札幌に引っ越してきました阿部藍子と申します。
2年前に、東京を拠点にシェイクスピア作品を上演する劇団「Theatre Company カクシンハン」が運営する「カクシンハン・スタジオ」という演劇研修所に通い始め、あれよあれよと演劇自体が好きになり、フリーで俳優兼制作をしています。
なので札幌でも演劇に(できたらシェイクスピア作品に)関われたらいいなと思っていたところ、カクシンハン実験公演を観てくださったお客様のTwitterで「この作品は弦巻楽団のシェイクスピアに近しい感覚をうけた(意訳)」という内容を拝見し、今回はじめて弦巻楽団演技講座に参加しました。
講座への参加は2学期(8月)からだったので、馴染めるかどうか不安を感じながら稽古場の扉に手をかけたことをとてもよく覚えています。
中に入ってみると、会社の座談室みたいな大学の休み時間のような空間が広がっていて、「ココで本当に稽古がはじまるの?」という驚き半分、「優しそうな人達で良かった」という安心半分が入り混じった不思議な感覚を受けました。
でもいざ稽古が始まるとスッと稽古に移行していくのをみて「ああ、この人達にとってはお仕事とか学校とか遊びに行くとか呑みに行くとかの日常の一環で演劇があるんだな」と感動しました。
稽古は、ウォーミングアップや弦巻さん持込のシアターゲーム等をしてから作品創作に移る形式が多かったです。2学期は上演作品チームに別れて、3学期は場面ごとの出演者に別れて稽古をしていました。
2学期も3学期もすぐに作品づくりに移るのが面白かった。
全体で本読みを数回おこなったらすぐ配役が決まって「はい!作品づくり〜!」だったので、人見知りや緊張する間もなく、台詞覚えやら出来事整理やらチームでのディスカッションやらが始まるので直ぐに馴染むことができて大変有り難かったです。
もちろん長年継続されている演技講座生の方々の受け入れ体制がバッチリだったのもすぐ馴染めた要因です。
演技が少しだけ好きになれた
演技講座に参加して一番良かったことは、演技が少しだけ好きになれたことです。
今までは総合芸術としての演劇や戯曲に書かれている言葉は好きだったけれど、演技すること自体はあまり好きではなかった。演技をしようとしても、何を選択しても正解にならない気がして、動くことも止まることも出来ずに宙ぶらりんになっている感覚がありました。
でも他の演技講座生が楽しそうに戯曲について思っていることを話したり、実際に演技している姿をみて「演技には正解はない」という言葉がフッとお腹におちて、少しだけ演技が好きになりました。
演技が好きになりはじめてからは一日一日の生活がとても楽しく、普段の生活の感度が少しあがったように感じました。
朝お味噌汁を作って「アレ?今日いい感じにの出汁とれてるんじゃない?」とホマホマしたり、夫とお昼休憩によく並ぶカレー屋さんがすぐにはいれてヨッシャーとなったり、雪がチラチラふってて服の上で消えてくのを儚げなと眺めたり、ムスメが雪山に足を突っ込んで抜けなって驚きと笑いが一緒にきたり、取引先の人と折り合いがつかなくて腹に鉛を溜め込んだ気持ちになったり、洗濯物を畳むのが苦手だけど洗濯籠が満杯になっちゃたから苦渋をなめて仕方なく畳んだり。
一つ一つの日常の出来事や心の動きが、演劇の中の出来事(演技の結果)と同じなのだと思うと、今の普通の生活が物語の一部のように感じたり、逆に日常生活の出来事の中で「あの戯曲で役が感じてた心の動きって、今のコレなんじゃない?」と発見できたりと、演劇と生活が連関してきて、毎日がとても楽しいです。
来年度もまたいろいろな方と一年間ゆっくり演劇と向き合えたらいいな、と思っています。ご一緒の方いらっしゃいましたら仲良くして頂けたら僥倖です!
弦巻楽団演技講座は現在2023年度の受講生を募集中です。ご興味のある方は以下の募集要項をお読みの上、ぜひご連絡ください!
申し込み締め切りは2023年4月6日(木)です。みなさんと作品づくりができることを心待ちにしております!