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寄稿論文「ステレオタイプと新聞広告 第三回日経ウーマンエンパワーメント広告賞の一日も早い開催を求む」について


さて先日、僕も寄稿している「対抗言論 3号」が発売されました。 その論考は「ステレオタイプと新聞広告 第三回日経ウーマンエンパワーメント広告賞の一日も早い開催を求む」と題したもので、いわゆる「月曜日のたわわ」新聞広告炎上騒動について考えたものとなります。

「対抗言論 3号」

https://www.h-up.com/books/isbn978-4-588-61613-6.html

論考は4つの節にわかれており、「新聞広告をめぐる報道」の節で経緯をまとめ、「見たくない表現とステレオタイプ」「アンステレオタイプアライアンスと三つのP」というふたつの節で問題点を整理し、最後に「時代に対応しつつ進歩的になりすぎない」という節で一応の結論を出しております。

その内容は「月曜日のたわわ」広告を全面的に批判したい方とも一方的に擁護したい方とも、違ったところになっているかと思います。そもそも今回の騒動における議論の多くで広告業界の動向や慣習が無視されており、元広告業界の人間が解説しなければいけないかも、と思ったのが執筆動機でもあります。

一番大きいポイントは、2010年代から広告業界全体で進めている各種差別などへの反対キャンペーンについてです。この背景を踏まえないと騒動に内在した問題点の核は見えないはず、と考えております。気になる方は、論考の後半で言及しておりますので、ぜひ確認いただければと思います。

先日も日経新聞は、自社Web広告の表現が女性蔑視的なものではないかと指摘され、Web媒体だからと安易に表現を変更し、そのずさんさにさらなる批判が続いております。正直、あの変更はなさけない対応だったと思います。

広告表現の問題を議論することは、見た目のわかりやすさと裏腹に難しいものです。比喩や誇張が多用されるため、論者によって解釈が分かれることも多いからです。なので、安易な変更よりまずはコンセプトや意図などを説明すべきだったのではと思いました。安易な変更は非を認めるも同然です。

実際、今回の論考でも解釈の違いを検討しているパートがいくつかあります。とはいえ、僕の解釈が正しいともかぎらない(なるべく根拠は提示しましたが)。なので、むしろ解釈のすり合わせが必要だったのではというのが結論になっている……はずです。

あと、結論では新聞広告について「(商品)ニュース」「エンターテイメント」「ジャーナリズム」という三軸で議論する予定でした。近年、広告業界では「ブランドジャーナリズム」という概念が提唱されており、それも踏まえ議論できればと思っていたのですが、紙幅の関係で諦めることとなりました。

結論がちょっと駆け足気味なのはそうした理由ではありますが、それよりも騒動の経緯や解釈のズレといった争点のポイントを記録・説明することを重視したことによります。

主にSNSを中心に(最近はそうでもない?)根拠薄弱な断定が続くなかで、丁寧な議論があらためて必要と思いますし、僕の原稿でもまだ十分ではないことは実感しています。引き続き、この問題は考えていきたいと思っております。

(以上は、2023年2月1日のツイートをまとめたものになります)


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