この人生は夢だらけ(by 椎名林檎)。年をとっても、何をしても、自分の人生は自分のものです。【#14】
病院には様々な人が訪れます。
脳神経外科の外来にも様々な方が通院してきます。
いろいろな疾患を抱えている方が多いですが、なるべく前向きになってもらおうと取り組んでいます。
こちらを前向きにするかの如く、笑いを取ってくる方もいます。
脳神経外科外来には、さいこうの趣味があります。
てんかん発作とは脳のある部分が突然過剰に働きだすこと、またそれによって様々な症状がでることです。過剰な働きが脳全体に広がると意識を失うこともあります。
このてんかん発作が繰り返し起こるとてんかんと診断されます。原因となる基礎疾患(脳腫瘍、脳卒中、脳の血管異常など)が脳に存在し、発作が繰り返し起こる場合、症候性てんかんといいます。
今回は、80代のジロウさんの外来です。
ジロウさんは、はじめ意識障害、てんかん発作で運ばれてきました。そしてMRIで脳動静脈奇形が見つかり、塞栓術を行いました。
てんかん発作で運ばれる前から、認知機能の低下が進んでおり、時折ぼーっとしていたとのことでした。
周りからは、またぼーっとしている、と思われてても実はてんかん発作ですということもあるので注意が必要です。
脳動静脈奇形を塞栓し、抗てんかん薬を開始しました。
話しかけてもボーっとしているという症状は消失しました。
ただ認知機能の低下はあまり変わりませんでした。
家族と話し合い、リハビリを病院で続けるよりは、自宅で生活されたほうがよいだろうという結論になり自宅退院となりました。その後の外来です。
外来には奥さん、娘さん、本人の3人で来られます。
わたし「家では困ることはありませんか?ぼーっとしてる時間ありませんか?」
奥さん「話しかけても無視するような以前のようなことはないですよ。」
ジロウさん「うん、ないない、全くない(笑顔)。」
奥さん「ちょっと。あなたわからないでしょ。それよりフィットネスに行ってほしいんですけど、本人が嫌がるんです。」
ジロウさん「うーん、いやがったりはしてないけどなぁ。」
奥さん「じゃぁ行きましょうね。」
ジロウさん「うーーん、ちょっとどうかなぁって思ってるんだわ。」
奥さん「ほら、やっぱり。つれづれ先生なんかいってください!」
わたし「どうしてフィットネスいきたくないんですか?どこか調子わるいんですか?」
ジロウさん「いや、いま人生でさいこうにいいかなって思ってる。絵の調子がすごくいい。フィットネスは嫌いじゃないけど、ちょっと今じゃない。」
わたし/奥さん/娘さん「・・・・・・・・」
今じゃなかったらいつやねん!!!って突っ込みが入りそうですが(笑)
ジロウさんは趣味で油絵をかかれます。
入院前、油絵を描きながら突然フリーズしていた、とご家族はおっしゃっておられました。退院後は絵の調子がいいそうです。
趣味は大事ですね、そしてフィットネスではなくて趣味を断固選択する、そういう姿勢、個人的には大好きです。家族は心配でしょうが(笑)。
80歳を超えても”いま人生でさいこうにいい”って言えるなんてすばらしいと思います。人生の終盤を謳歌するためにも、今から趣味を作って楽しもう!!!
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