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入山100日目 思いもよらぬ終幕(山小屋長期スタッフの話)

今シーズンの営業もあと残すところあと1日となりました。
7月からの長いようで短かった山での生活も残りわずかです。

気が付いてみたらおよそ100日間北アルプスの山の中にいたわけですが、
慣れというのは恐ろしいもので「終わったー!」という達成感のようなものは無くて、
このまま山での生活が延々と続いていくような感覚になってしまっています。
(1年目だとまた違うのかもしれませんね)


営業が終了すると、さらにそこから2~3日かけてお客様が利用していた場所も全て片づけて、
完全に小屋を来シーズンまで眠りにつかせる準備をしてから下山となります。


が、今シーズンはここで一つ問題が発生。

明日の天気予報がなんと雪、
しかも30cm以上積もる予報とのこと。

10月に北アルプスで積雪があるのはあり得ないことではありませんが、
近年は下山までに雪が降ることはほとんどありませんでした。


春から働いている社員さんたちは冬装備を持っている上に、冬場の北アルプスの経験もある方もいますが、
私に関しては最後まで残るつもりではなかったためチェーンスパイクしか持っておらず、
他のバイトスタッフも積雪した北アルプスの経験はなく、それほど完璧な冬装備は整えていません。


少しの積雪であれば歩けますし、溶けることも期待できますが、
今回の予報の量の雪だと根雪になるかもしれないということで

やむを得ず、一部のスタッフを残して他のスタッフは下山、ということになりました。


最後まで閉め切って区切りをつけたいところでしたが、山における安全に関して背に腹はかえられません。小屋にお別れを済まして下山します。


晴れの中下りた先日の一時下山と違って
雪がチラつく中での下山は、
すれ違う登山者は1人もおらず
いかにも冬のもの悲しさがあります。


また歩荷やヘリ準備で何度も歩いた登山道ですが、
もう今シーズンは歩くことは無いんだと思うと
いつもの道もなんだか特別な道です。

景色を目に焼きつけつつ今シーズンのことを振り返りながら歩きます。




普段よりゆっくり歩いて日が暮れかけてきたころ、ようやく山麓の小屋に到着です。
この日は特に何かをするわけでもなく
夕食をいただいて就寝。


その翌日…


山麓なら積もらないだろうな、
と思っていたらまさかの銀世界。

スタッフ同士で「昨日降りてきて正解だったね」と安堵。

しかしあまりにも早い降雪に
紅葉が始まったばかりの山麓では
落葉する前の葉に雪が積もり、その重みで倒れてしまった木がそこかしこに。

本来であれば落葉した後に雪が降るため
木が倒れることはないはずなのですが。

ずいぶんと早い積雪だったんだけどなぁ、
と木々の可哀想な状況を見て実感します。


その後は登山道の整備に行ったり、山麓の山小屋を手伝ったりと、
しばらく山の中にいたのですが、

どうにも締まらない内容になりそうなのと、
ちょうど100日でキリが良いので
山小屋日記はここまでとしたいと思います。




日記っぽくない日記になってしまったなぁ、とか
実際の出来事との間に大きなタイムラグが生じてしまったなぁ、など
反省点は数えればキリがありませんが

最後まで書ききれたこと、
また1シーズンの記録として残せたことに
満足ということで。




最後に長期スタッフの話を。
なんと言っても1シーズン勤めきった、
と実感できるのが大きいのではないか
と思います。

半年にも満たない期間ですが、
初夏から冬まで、
目まぐるしい季節の移ろいを
目と肌で感じられます。

また山小屋が
冬の眠りから目覚めるところから、

盛夏を経て、

再び眠りにつくまでを経験することで、

山や山小屋のことをより深く知ることができます。


「ここが私のアナザースカイ」

ではありませんが、
山がそんな場所になります。


もちろん下界と比べて遙かに不便な山小屋で、

複雑な人間模様が繰り広げられるなか、

長期間過ごすのは状況によっては非常に大変なことですが、

良くも悪くも良い経験になるのかな、と思います。


時間があって、本当に山が好きで、覚悟があれば長期スタッフもオススメです。




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