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高知大学で講義をしたら、めちゃジャズだった

高知大学の人文社会科学部の @desean97 先生からの依頼で「人文社会科学と職業」という授業において、「自分の人生とキャリアと」というテーマでこれから就職活動を控えた学生を対象にお話しさせていただきました。

まずは学生さんに向けて彼らが学んでいる人文社会科学を仕事にどのように活かすことができるのか?ということについて自分なりの見解を述べました。

これは勿論本心でもあるんですが「戦略の立案や他国の企業とのアライアンスなどの高度な仕事においては、文学、宗教、文化などの人文学的教養が無いと務まらない場合もあり、非常に重要な意味を持つ。通常の業務においても、物事を表層的にではなく、深く理解するのにその知識は有用であり、深い理解からしか出ないアウトプットこそが今企業では求められている」ということを話しました。

冒頭にこれを話した理由は、事前に国立大学協会の下記の文書を読み、大学は企業側から即効性のある実用的な知識を教えることを求められており、人文学の意義や価値を学生にどう伝えるのか?に苦労しているのであろう、と推測したからです。そして、大学側がそうであれば、学生さん達もきっと自分たちがが学んでいることと、世の中で求められている知識や技能とのギャップに悩みながら就職活動をしているのではないかな?と思ったのです。

少しでも彼らが自信をもち、これからも気持ちよく勉学に励んでほしい、と強く思います。

人文社会科学系分野の意義と国立大学の果たすべき役割 ~グローバル化社会におけるイノベーションの創出に向けて~ (中間まとめ)
平成27年3月31日 人文社会科学系の意義・役割に関する ワーキンググループ
https://janu.jp/.../03/20150331_jinsyakeiwg_midsummary.pdf

その次に生きていく上にも仕事をする上でも「豊かな想像力」が重要であるという私の持論を話した上で「では、なにが自身の想像力を最大化するのか?」を本講義を通して考える「問い」として提示しました。

そして、そこから私の自己紹介のパートに移りました。話をしている私が何者なのかわからないと、彼らもどう聞いて良いかわからないでしょうから。

いつも色々なところでお話するときにやっているスタイルなのですが、自己紹介では自分の表現する名詞として

・ベーシスト

・日系移民一世

・経営者

という3つをあげ、それぞれについてのストーリを語っていきます。そして、移民と会社経営のパートでは私が困難な状況に陥った際の様々なエピソードについて、「もしあなたがその立場だったら、どう考えて、どう動くだろうか?」ということを学生さん達に考えてもらい、時に発言を促しながら進めました。単に変わったおじさんの面白エピソードを聞く時間として終わらせたくはなく、色んな状況下で自分を助けてくれるのは「想像力」であるということを伝えたかったからです。

最後にグループワークを行い、4人一組で自己紹介をしあってもらいました。ただし、「所属、年齢などを言う事は禁止」「自分自身を表す名詞を3つ挙げる」「私は〇〇で、△△であり、かつ□□だ。まず〇〇である理由は・・・」という風に自分が何者かであるかを説明する、というルールが課せられています。特に「形容詞や動詞を使わず、名詞で言い切ること」は厳格に行います。なお、名詞は一般名詞でも良いし、固有名詞でも良いし、造語でもOKで、自分がこれだ!と思うものを選び、決めて、人に伝えてみよう、というワークになります。

※これは僕自身が自己紹介するときに前述した名詞3つを上げて、各名詞についての説明をするというスタイルを取ることが多いので、それを追体験してもらった形です。

学生からは「自由に決めていいはずなのに、自分を表す名詞が何も浮かんでこない」「他人に自分のことを○○だ、と名詞で言い切るのには勇気がいる」などの感想が聞かれました。普段自己紹介をする時には、ほぼ自動的に学校名、学部、学年、出身地、その次に趣味が来て、それすらも形容詞とか動詞で説明しがちですよね。自己紹介をするのに、ここまで考えるのは初めてという学生もいましたが、わかって欲しかったのは同じ学生同士のグループワークという緊張度が低い環境でも、端的に自分に表現するのは簡単ではないということ。

つまり、これから世の中に出て知らない人(特に大人相手に)に「自身が何者であるかを端的に伝える」ことは相当難しいのだということを、この名詞オンリーというルールをやってみることで気がつけたのではないかな?、と思っています。裏テーマとしてはDoingではなくBeingに意識を向けて欲しいというのもありましたけど、そこまで説明すると情報過多なので、それは言いませんでした。

最後に最初の問いである「なにが自身の想像力を最大化するのか?」の僕なりの解として

移動距離x出会った人の数x教養=想像力

を提示しました。これには賛否両論あるでしょうけど、その講義ではそう定義した、という感じです。

人間の体はセンサーの塊であり、そのセンサーを活性化させるには違う土地に行き、違う空気を吸うのが一番手っ取り早いということから「移動距離」。(人間は人間である前に動物ですから)

人は人からしか感動しない(極論)、そして人との出会いが化学反応を生むのだ、という考えから「出会った人の数」。ただし、自己紹介が下手だと相手に響かず化学反応が起きにくいので前述のワークショップを実施したと説明。

最後の「教養」というのは折角移動して体のセンサーが動いて感性が敏感になったり、人と沢山出会ったとしても、本人に「教養」が無ければ様々なハプニングや出来事を「楽しかった」とか「すごかった」という感情語でしか処理出来ない。つまり解像度が荒いため深く言語化出来ず、想像力の糧になりにくいということを説明。故に皆さんの学んでいる人文学、つまり人類の叡智を学び、人間を知るという学問は教養を得るために物凄く有意義であり、皆さんは今の学びを続け、そして動くことで想像力を最大化出来るんだ、ということを話してきました。

素直で真面目な学生さんが多かった印象。そして、ちょっと強引な僕の進行や無茶振りにも一生懸命応えてくれました。本当にありがとうございました。僕の方こそこの講義と準備を通して、皆さんから多くの事を学ばせてもらいました。

感想文も熱のこもったものが多く、とても嬉しかった。彼らにとってこの講義が何かの切っ掛けになれば嬉しいなぁ。そして、先生にも喜んで貰えたし良かった、良かった。

ちなみにこの講義、事前にスライドは作っていたんですが、当日の学生さんの反応や雰囲気で言葉や内容をちょっとずつ変えていきました。自分的にはジャズを演奏しているのを全く同じ感覚でした。教壇はステージ、パワポは楽器だ!!と思いながら講義を行っていました。やっぱりライブは良いですね。ジャズな空間でした。

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