第13回「食べる」を取り戻す
名前のない料理
自炊をしている、と言うと「ひとりなのに偉いね~」と言われることがままある。今ひとり暮らしをしていて、自炊をする人なら共感する人も多いのではないか。
おそらく、自炊=節約している、身体に気を遣っているというイメージがあるからだろうが、自分について言えば、別にそんなことを目的にしているわけでは無いのだ。
仕事が終わって、腹が減っている。
机を片付けながら、さて、何食べるかな…と考える。
会社を出て、最寄り駅まで歩く道。
ラーメン、牛丼、そば、中華、居酒屋、ハンバーガー…
どれも食べる気にならないのである。
結果、スーパーに寄って、その時々の葉物野菜、白菜だの小松菜だのと、きのこ類、豚肉なんぞを買って帰り、ざっくり切ったら煮るか蒸すかして、ポン酢や七味で食べる。
これが実にうまいのだ。
なんだかんだで食材だけで1000円近く食ってしまうので、全く節約にはなっていないのだが、このわがまま自炊がやめらぬ。
料理する人ならわかると思う。
茹でたジャガイモを崩し、缶のツナを入れて、バターとマヨネーズで和えたやつが。サッポロ一番塩ラーメンにキムチ乗せたやつが。単にコンロで炙った海苔が。食べたいときってあるでしょう。
名前のない料理を作って食べられるのが、自炊のよいところなのだ。