Cory Wongの音楽は魂解放ミュージックだ!
私が初めてCory Wongというギタリストを知ったのは5年ほど前だろうか。Motivational Music for Syncopated Soulというアルバムを聴いたのが最初だった。それからなぜか、彼の音楽ばかりと延々と聴き続けることになった。最近、ようやくその理由がわかった気がする。彼の音楽は魂を解放するのだ。まあ、あくまでも私の主観なので、聞き流してくれても結構だが、とりあえず言わせてほしい。
先ほどのアルバムの中に、Companion Passという曲がある。基本、彼の楽曲はインストゥルメンタルなので歌詞がないが、この曲には語りが入っていて、彼が「誰かを尊敬して、その影の中で生きるのではなく、自分を生きろ!現在、過去、未来の誰も、君より最高の君にはなれない!創造性を解放しろ!」と叫んでいる。私には正に、彼のこの思想が彼の音楽全てに流れているような気がする。
彼の音楽は本当に自由で楽しい。それぞれが研鑽を積んだ腕利きの、本物のプレーヤーたちを集め、それぞれの個性を存分に引き出し、あり得ないほど高いレベルで調和させる。オーケストラ一団を率いて行ったアムステルダムのライブなどは特に必聴だ。
私は実はこの10年以上、ボーカルが入った音楽をほとんど聴かなくなった。なぜだかわからないが、あまり耳に入れたくなくなったのだ。何となくだが、人の声には音としては聞こえないものも混ざる。音楽はさらにそれを増幅させるようで、余計なものを意識に入れたくなくなったのかもしれない。
逆に、楽器だけの音楽は純粋に楽しい。もちろんそこには、演奏者の技術以外の何かも加わるのだが、歌詞に込められた過去の感情のようなものではなく、その人が今、純粋に楽しんでいるかどうか、特にライブの即興演奏などは、完全にその時の今、今、今が連射されてくる感じが大好きだ。それは正に、瞬間が積み重なるこの3.5次元でしか楽しめない音楽の真髄だと思う。Cory Wongの音楽はそれを最高に体現している。
そんな Cory Wongの初来日ツアーの初日を今日見た。実は去年フジロックで来日していたのだが、それは行かれなかったので、今回は満を持して参加。そして思った。今まで見たライブの中で最高、というより、もう次元が違う、魂を解放する音楽。だから自分は聴き続けざるを得なかったと納得した。
大袈裟に聞こえるかもしれないが、時代は確実に個の自由、覚醒に向かっている。彼の音楽は正に、それを促進する。そんな彼も、実はほんの数年前までは全く売れていなかった。「Today, I'm gonna get myself a real job.(今日、僕はまともな仕事に就くことにする)」などという曲も書いて歌っていたぐらいだ。それが今は、4日間の初来日ツアーが全てソールドアウトだ。時代がようやく追いついてきた。
それはそうだよね。彼が売れるのは時間の問題だった。あれをあんなに楽しめる若者がたくさんいたのも希望が持てた。新しい時代は確実に始まっている。その中で、それを体現する本物が見つからないはずがない。これから各分野で、自分を突き詰める本物がどんどん台頭するだろうね。これは本当に楽しくなってきた。