【本の紹介・探究学習】読書メモ 安藤昭子『問いの編集力 思考の「はじまり」を探究する』⑤
出版社 ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日 2024/9/20
第3章 Emerging 「問い」を発芽させる
リンキングネットワークの拡張へ―関係の発見
(p136)ネットワークとしてのテキストの働き
(p137)テキスト(言葉)は「絶えず外部と交信する多次元の空間」
探究型読書では、本に書かれたテキストを、著者やその先行者と自分自身の想像力が混ざり合う空間的な踊り場であると考える。
「作者が書いたこと」を読み取るにとどまらず、「そこに書かれた言葉によって自分の想像力の中に何がふたたび書かれうるのか」を読むことが読書
著者に代わって複数冊の書物の間に新しい意味を見出すのは読者
(p138)「問い」は単独で生まれるものではない。問いはまた次の問いを生んでいく。
(p139)著者が観察した「本を読む松岡正剛」の読書風景
(p141)読書とは、思考のための「場」をつくり出す行為
「探究型読書」は、著者と読者の主従関係をひっくり返す「多元性が収斂する場」
(p143)企業や学校で探究型読書をナビゲートした結果、体験した人の多くには「本を媒介にするとコミュニケーションが格段に豊かになる」という感覚が残った。書物という共通の器を介して、ふだんは届かないような深い思索が進み、対話が繰り広げられる。
(p144)探究型読書で体験される「見方の創発」が起きるような「場」を、オフィスや学校などの公共空間につくり出すことはできるか。「問い」が連鎖する場とは、どのような性質があるのか。
江戸時代の「連」と呼ばれたコミュニティは、職業の領域を超えて人が集い、さまざまな創作活動が発露した経済文化サロン
(p145)江戸文化研究者の田中優子さん
「連」という「場」のなかでは、いかようにも変化しうる未完の個人として場の一部になることができたが、近代になって「場」が消滅したのは、無条件で絶対的な個に、より高い価値が置かれるようになったから。
(p146~148)江戸の出版プロデューサー蔦谷重三郎のサロンのように、江戸のサロンは別のサロンや文化様式を派生させていく性格を持っていた。
日本人は「連なる」こと、「俳諧的な共創の一部になる」ことを得意としているのではないか。
自らの価値を表明して利害関係を調整していく主体性より、相互に才能を引き出し合い、想像力を自由にする風を送り合う、共創の成果よりもそのプロセスにこそ価値を置く連なり方が可能な「連」のような場が、現代にも期待されている。
(p149~153)探究型読書のメソッドを搭載したコミュニケーション誘発装置を編集工学研究所と丸善雄松堂が共同開発した。 ~問いと本と対話を創発する一畳ライブラリー「ほんのれん」~
一畳ほどのスペースに入る、スタンディングバーのようなテーブル型の本棚に、編集工学研究所が厳選した100冊の本「百考本」を設置し、そこに毎月設定される「今月の問い=問いのれん」について考える5冊の本「旬感本」が届けられる。「今月の問い」の例は、「『働く』ってなんだ?」「環境問題、何がモンダイ?」など。日常の中にあっていかに「驚き」に出会うか、セレンディピティを呼び込むか。