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アワードには全力で臨め

アワードに対しては様々な捉え方があります。アワードをポジティブに捉えてそれを目標に業務を頑張るメンバー。自分が仕事をするのは受賞が目的じゃないといって目を向けないメンバー。それぞれ異なる立場や考え方があり、いろんなスタンスがあって良いでしょう。
しかし我々マネージャーの立場としては、「アワードには全力で挑む」ことが正しいと考えます。



アワードは自組織の全社アピールの場

メンバーは常に「自分のやっている仕事は会社にとってどんな意味があるのか」という不安を抱えています。これを払しょくし、承認欲求を満たしてくれるのがアワードです。受賞できればそれはそのメンバーやチームの誇りとなるし、次のより高度でやりがいのある仕事を獲得するための営業装置にもなりえます。もし受賞できなかったとしても、最終候補に残って多くのオーディエンスに向かってプレゼンし、インパクトを残すことができれば同等の効果が期待できるでしょう。
たとえそうでなかったとしても、審査の過程で審査員の目には必ず止まります。社内のアワードであれば、役員や社長に「○○の案件でアワードにエントリーしていたメンバー」として認知してもらえることでしょう。
こうして社内の認知を高めておくことのメリットは非常に大きいです。認知があれば単純に評価が上がりやすいし、それまで接点のなかった部署からも新たな相談が舞い込んできます。アワードが取れなかったからと言って評価が下がることもありません。「応募する工数」以外のデメリットが0で、メリットしかないのです。ですから、マネージャーとしてアワードを活用しない手はありません。

アワードの目的と戦略を考える

アワードにもいろんな種類があり、そしてどんなアワードにも開催の目的があります。単純に社員のモチベーションをあげる目的のものもあれば、クライアント主催のものは代理店をねぎらう目的があるでしょうし、媒体主催のものはソリューションの認知や拡販を狙ったものもあります。
よって、アワードで一定の成績を残すためにはその目的を正しく認識し、正しくアピールする必要があります。アワードを獲るためにも戦略が必要なのです。社員の個人アワードであればなぜそのメンバーがいま必要とされている社のロールモデルになりえるのか、クライアント主催のアワードはどれだけ顧客のビジネスに貢献できたのか、媒体主催のものであれば自身の作った実績が他の業種のクライアントにどうやって適応可能なのかを説明しなければならないのです。
ここには深い洞察と、緻密なメッセージ設計が必要になってきます。メンバーの出した成果を、一つ上の視座からどう意味づけし、審査員に伝えるかのコミュニケーション戦略設計は、現場メンバーだけでは限界があります。ここにマネジメントであるあなたの出番があります。

費用対効果を考える

上記のように、アワードごとに毎回エントリーに全力を注ぐことにはかなりのコストがかかります。「エントリー時はありものの資料だけでOK」といった応募規定であっても、それでそのまま最終審査まで進むことはまずありません。
また、アワードに特定の目的がある以上、残念ながら現実的には完全にフラットな選考が行われるとは考えない方が良いでしょう。全社員のモチベーション向上が目的なら、たとえどんなに優れた成果を残していたとしても表彰台をひとつの組織のメンバーが独占することはありえないはずです。全社アワードの中で部門ごとの予選がある場合は、部門として受賞数を増やすために「一番受賞が期待できるA社の事例は○○賞に応募する、B社の事例も本当は○○賞の方がアピール力があるけど△△賞の方に移して…」などといった調整が働くこともしばしばです。
ですので、マネジメントのあなたはこのあたりの情報にもアンテナを張り、どのアワードに全力を投下して取りに行くか?という取捨選択の戦略的思考も必要になってきます。

ないアワードは自分で作る

それでもアワードを狙って獲ることは非常に難しいものです。こんな偉そうなことを書いている私も最高到達点は準MVPで、優勝経験はありません。(それでもプレゼンで大きなインパクトを残したり、社内認知を獲得できたので最低限の目的は達成できたと思っています。)
では評価したいメンバーや案件があるのに既存のアワードではなかなか受賞できない場合、どうすればいいのか?答えは「自組織内でアワードを作る」です。
私の所属していた事業部では四半期に1回QBRを実施していたのですが、このアジェンダの中で必ず事業部内アワードを設定していました。審査員は事業部長とグループマネージャーで、その四半期で事業部の模範となる成果やアクションを残したメンバーを表彰するものです。もちろん全社アワードなどと比較すると規模は劣りますが、それでもある程度の承認欲求は満たされるものだったと思います。
余談ですが、受賞者には事業部長のポケットマネーからの賞金と、受賞理由にちなんだ「ミドルネーム」の副賞が贈呈されていました。この副賞の設計が秀逸で、例えば私がマネジメントの業績で受賞したら「吉田・ベスマネ・統樹」(Best Manager)のようなミドルネームを授けられ、受賞後の一定期間は社内チャットツールの氏名をこれに変えなければならない…という恥ずかしすぎる副賞だったのですが、これが部署外の社員からの「ずっと気になってたんですけど"ベスマネ"って何ですか?」「いや実は事業部でアワードを受賞しまして…」「そうなんですね!副賞は罰ゲームみたいですけど…おめでとうございます!」などといったコミュニケーションのきっかけになり、部署外からの承認の獲得と、自組織のアピールに貢献してくれたものでした。もちろんこれがワークするようになるには相当なカルチャー醸成が必要ですが、このレベルまで到達することができれば自組織に限ったアワードでも組織外の規模の効力を享受できますし、あなたがメンバーのモチベーションをコントロールをするための非常に強力な武器を手にすることになるのです。


以上、メンバーのモチベーションコントロールの観点からアワードについて考えてみました。次の記事では、組織運営の最後の要素として「知見の共有」についてまとめてみたいと思います。


【目次】

0.はじめに

  1. マネジメントの本質

    1. 「マネジメント」という不確定性の高い職務

    2. 組織マネジメントは「個人競技の団体戦」

  2. ビジョン

    1. 活動計画に全力を注げ

    2. 99%のパッションと1%のロジック

    3. アクションプランに必要な要素

  3. チームビルディング

    1. 中間管理職が持つリソース

    2. リーダー制のメリット

    3. メンバーの異動、加入

    4. 飲みニケーション問題

  4. 組織運営

    1. 会議体は組織を表す

    2. 個人成績はトラッキングして公表せよ

    3. アワードには全力で臨め ←本記事

  5. メンバー育成

    1. 若手の育成方法

    2. リーダーの育成方法

  6. 目標設定、評価、フィードバック

    1. 目標設定はゲームのルール×期待の伝達

    2. 評価者になるな、共闘者であれ

    3. ネガティブなフィードバック


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