中間管理職が持つリソース
経営にはヒト、モノ、カネ、時間、情報、知的財産の6つの資源があるといわれています。中間管理職がマネジメントを執り行うにあたっても、この6つをいかに活用できるかがカギとなります。
特に中間管理職レイヤーでは活用できるリソースにも限度がありますし、企業や組織によっても変わってくるので、改めて自身が持っているリソースを再確認し、自身は何を重要視してマネジメントを行っていくのかを、ここで整理していただければと思います。
マネジメントの6つのリソース
1.ヒト
これは言わずもがな、あなたの部下となります。そしてこれは中間管理職が持ちうる最大のリソースになります。詳しくは後述します。
2.モノ
モノとは会社が保有する有形物、すなわちオフィスやPC、工場、社用車などを指します。これに関して中間管理職の関与できる幅は少ないでしょうから、ここでは割愛させていただきます。
3.カネ
これはあなたの組織がコストセンターであるか、プロフィットセンターであるかによって捉え方は大きく異なるでしょう。コストセンターの場合、予算の使い方そのものがあなたの組織の業務になるわけですから、有限なリソースの有効活用については相当高い意識を持っているはずです。一方、私の所属していた部署はプロフィットセンターでしたが、それでもカネをリソースとしての側面からとらえることがマネジメント業務をの円滑化に役立ちました。それは、稼いだ利益をそのまま会社の利益として計上するだけではなく、利益を削ってコスト競争率を高めて扱いを増やしたり、自グループの利益を削って他部署や業務委託先から人的リソースを借りる原資とする等、利益の投資、再投資によって自組織の活動を拡大することができたのです。
4.時間
管理職になって業務制限が緩和され、時間外や休日の勤務が可能になったことであなたが業務に割く時間は拡大したことでしょう。しかし残業代が出ないので、時間単価の側面で考えると業務時間は必要最小限にとどめた方が良いので、その観点からは時間のリソースは減少することになります。これはあなたの仕事に対する姿勢次第なので、私や周囲がとやかく言うことではないと思っています。
大事なのは、メンバーがもつ時間です。彼ら、彼女らの勤務時間こそ有限であり、それを何の活動にあてるかは、非常に大きな問題です。これをメンバーの自由意思に任せて結果を出せればよいのですが、たいていの組織はリソースに対して業務量や解決すべき課題が山積しており、これは優先順位をつけて対応していかなければなりません。そこには組織としての方針、アクションプランに準じる必要があります。管理職としてのメンバーの労務管理とは、単純に出勤・大金の時間を把握するだけではなく、その中で実行すべき業務に十分量の時間を充てられているかを常に把握、調整し続けることを意味します。
5.情報
管理職になって大きく変わることの一つが、情報の入手経路でしょう。
まず、会社のインナー情報についてはメンバーよりも早く入手することができます。今期の目標数字、成果指標、会社としての注力領域、他部署の状況、人事情報、、これらは重要な組織運営の資源となります。ここで気を付けたいのは、秘匿性が高い場合を除き、「得られた情報は可能な限りメンバーとシェアすること」です。情報はただ持っているだけでは何の価値もありません。また、自分一人で活用するのは二流のビジネスマンです。一流のビジネスマンとは、情報をメンバー間でシェアし、全員で活用することで最大の成果を上げられる人です。もちろんセンシティブな情報は伝え方にも工夫が必要ですが、恣意的に編集・切り取りを行うこともここでは避けた方が良いでしょう。
他方、顧客や現場に関する情報の入手速度は、管理職になると著しく低下します。これに対する対抗策はただ一つ、メンバーとの関係値の構築です。よく「社会人は報連相が大事だ」と言われますし、それ自体は間違っていないのですが、マネジメントの観点からは部下からの報連相を待っていても有用な情報は得られません。部下の立場からは、上司がどんな情報を求めていて、何を伝えればよいかを正確に把握することが困難だからです。ですので、あなたの側から定例会で議論の場を設けたり、1on1などの定期的な接点を持ちながら、常に自組織のビジネスと運営に生かせる情報がメンバーの中に眠っていないかを探り、引き出していく努力が必要になります。
6.知的財産
これについては企業、組織によって大きく捉え方が異なるかと思いますので、ここでは割愛させていただきます。
中間管理職が持つ最大のリソース
前述のとおり、上記に挙げた6つのリソースの中で中間管理職(あるいはすべての管理職)にとって最も重要なリソースは「ヒト」です。なぜか。理由は明快で、他の5つのリソースは「ヒト」によって使われることで初めて価値を発揮できるからです。逆にどんなに価値の高い「モノ・カネ・時間・情報・知的財産」も、使う人にその能力がなければ全く意味のないものになります。巷にあふれている「経営にはヒト、モノ、カネ、時間、情報、知的財産の6つの資源がある!」と記載しているビジネス書はすべてミスリードで、「ヒト」と「モノ・カネ・時間・情報・知的財産」は並列関係ではなく、主従関係に当たるのです。
さらに「ヒト」は、他のリソースをさらに拡大させることができます。カネを稼ぐ、それでモノに投資できる、生産性を上げて時間を作る、そうして作った余剰の業務時間で情報を取ってくる、知的財産を生み出す、etc…すべては「ヒト」でないと実現不可能なことばかりです。
なので、中間管理職の仕事は「ヒト」というリソースを最大化すること、と言い切ってしまってもよいと私は考えます。あなた一人が実務に当たるよりも、あなた二人分の「ヒト」のリソースを創出した方が高い成果を上げられることは明白です。
「ヒト」を広義でとらえる
「ヒト」としての中間管理職のリソースについて述べましたが、この場合、組織に所属しているメンバーだけではなく、今後入社する新入社員や中途採用者も同じくリソースとなり得ます。リソースとして考える際には時間の要素も考慮する必要があります。なぜなら、リソースの量はその時点での能力と時間の積分によって決まるからです。これらのメンバーが一人前として業務を遂行できるまでの教育期間を短縮することが、リソース拡大の重要な要素となります。そのためには、教育環境を整えることや、早期に自走が可能となる仕組みを整えることも、マネージャーの重要な役割となります。
「ヒト」のリソースを拡大できるのも「ヒト」
そして、「ヒト」のリソースを拡大できるのはあなただけではありません。旗振りはマネージャーであるあなたがやるべきですが、実行は部下でもできます。それはトレーナー・トレーニーの教育関係にとどまらず、自主的な案件サポート、各自の得意領域のスキル伝授、共創による新たなビジネス開発など、形は様々です。これこそが「個人競技の団体戦」の本質であり、組織運営の中で目指すべき姿となります。
「チームビルディング」という言葉から、懇親会や研修(パスタとマシュマロを使ったゲームなど)を想像する人も多いと思いますが、そして私自身も懇親会は好きですし否定はしないのですが、それをやるだけでチームビルディングを実行した気になってしまうのは危険です。最終的に目指すゴールは「メンバー同士がお互いの能力を高めあえる状態」を作り出すことです。ではそのために具体的に何を実行していけばよいのか。このセクションではそこについて詳しくお話しできればと思います。
【目次】
マネジメントの本質
ビジョン
チームビルディング
組織運営
メンバー育成
目標設定、評価、フィードバック