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若手の育成方法
このセクションでは、メンバーの育成方法について語りたいと思います。大きく分けて「若手の育成方法」「リーダーの育成方法」です。
まずこの記事では多くのマネジメントが頭を抱える「若手の育成方法」についてまとめたいと思います。
目指すべきゴールは「自走化」
若手社員の育成のゴールというと「業務スキルの習得」をイメージされることが多いでしょう。しかしもう少し現実に即して考えてみてください。何をもって「このメンバーは業務スキルを習得できた」「このメンバーはまだだ」と判断するのでしょうか。そもそもどんなに熟練したメンバーにも局所的な不足スキルは存在しますし、それは私やあなたのようなマネージャーだって例外ではないはずです。もし仮にあなたの組織の業務に必要なスキルを完璧に習得することを目的においてしまった場合、そこには途方もない時間と労力がかかってしまうことでしょう。
そのような曖昧な定義でもって育成のゴールを設定することはできません。ゴールが明確でなければ、そこまでの到達手段も調達が必要なリソースも想定できず、そもそもゴールに到達しているかどうかも把握できないため、延々と「教育期間」が続いてしまいます。これはトレーナーにとってもトレーニーにとっても大きな浪費になってしまいます。
では、育成のゴールは何になるのか?答えは「自走可能な状態になること」です。自走可能な状態とは、周囲からのお膳立てや細かい指示がなくても、自発的に考えて行動を起こせる状態になること、と定義します。実務スキルが不足していても問題はありません。不足状態を正しく認識し、自ら不足分を調達できればそれは「自走化ができている状態」と捉えます。私のグループではこの状態を「一人前」とし、トレーナーを外す基準としていました。
若手育成をコスト効率で考える
まず育成は投資であり、利益を回収するためには最初に支払わなければいけないものがあります。それは「トレーニングにかかる教育工数」です。若手を育成できるトレーナーはある程度の経験を積んだメンバーですので、そのメンバーの貴重な勤務時間を短期的な成果にはつながらない若手の育成にあてることについては、強いコスト意識をもって臨まなければなりません。
例えばトレーナーが33%の稼働率を割いてトレーニーの業務に当たった場合、トレーナーとトレーニーが案件に割ける人工は合計で66%になります。これは新メンバーが来る前(=100%)よりも目減りしている事実に目を背けてはいけません。
無事にトレーニーの自走化が完了するとトレーナー・トレーニーの関係は解消され、晴れて200%の人工で実案件に当たれることになります。ここからが投資の回収期間となりますが、この回収効率は非常に高く、この場合は教育にかけた期間の1/3で回収が完了し、そのあとはただただ+100%の「ヒト」リソースを獲得し続けるボーナスステージに突入します。この数字は非常に暴力的で、たとえばどんなに秀逸な業務システムを新規に導入して業務効率を5%改善できたとしても、足元にも及ばないものです。この意味でも、「ヒト」は最大のリソースであり、教育に勝る投資はないことを示しています。
マネージャーであるあなたが考えるべきことは、一日も早く若手メンバーを自走化させ、コスト期間=教育期間を終了し、早期に投資の回収期間に転じることなのです。
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早期自走化の実現のために
それではどうしたら自走化を実現できるのでしょうか。会社が用意してくれる座学や研修だけでは不十分なことは、あなた自身も気づいていると思います。あなたの組織の仕事を自走できるようになるためには、あなたの組織の仕事をやってみる、すなわちOJT以外に道はありません。
その中でも、どんな案件にアサインしてOJTを実行するのか、にもコツがあります。重視すべきは「獲得できる経験回数」です。案件規模/高度さよりも、「実案件を何回施行できるか?」が重要な指標になります。なぜか。目的は何度も言う通り、「自走化」です。自走化のためには、作業の連続性・全体像の理解が最も重要なのです。規模の大きな案件は、得てして開始から終了までの期間も長く、それはすなわち教育期間=コスト期間の長期化を意味します。また、作業も複数メンバーで分担・細分化されるため全体像の把握も困難になり、教育効率が非常に悪いのです。
アサインすべきトレーナー
トレーナーの「質」も、自走化までの期間に大きく影響します。ここで私がお勧めしたいのは、人員が許す限り「リーダークラスのメンバー」と「中堅メンバー」の2名体制で育成に当たることです。なぜかというと、トレーナーのアウトプット効率もトレーナーのレベルによってさまざまだからです。
育成には中長期的視点、つまり詳細なゴールの設定や進捗確認、アクションプランの設定とブラッシュアップ、必要なリソースの手配などといった要素から、庶務サポート、すなわち実務レベルでの具体スキルの伝授まで幅広い対応が必要になってきます。前者は一定の業務経験を積んでいたり、多方面に人脈を持つリーダークラスのメンバーでないと務まらない部分です。しかし後者は、業務に慣れれば慣れるほど無意識化・非言語化され、他者に伝えるためのアウトプット効率は落ちていく部分なので、ここはスキルを習得して間もないメンバーのほうがトレーナーに向いています。リーダーとして優秀なメンバーをトレーナーにアサインすればそれですべてが事足りる、と短絡的には考えがちですが、現場スキルの伝授にはそういった経験豊富なメンバーの中での「再言語化」のコストが発生することを認識しておかなければなりませんし、トレーニー視点で「何が/なぜ分からないのか」を理解して先回りしてくれること、困ったときにすぐ聞ける関係性が重要であり、早期自走化を実現するための教育コミュニケーションの量の担保につながることを忘れてはなりません。
以上、若手の育成方法、自走化についてまとめさせていただきました。次の記事ではリーダーの育成方法について述べさせていただければと思います。
【目次】