99%のパッションと1%のロジック
メンバーのこれからの活動を喚起/変革させる活動計画とはどのようなものか?私はここまで読んでいただいている読者の50%がここで離脱することを覚悟して書きます。活動計画に絶対的に必要なのは
マネージャーが夢を語ること
です。
何を青臭いことを、と思われるかもしれませんし、自分にはそんな夢はないという人もいるでしょう。むしろ会社員の中では仕事に夢を持っている人のほうが少ないと思いますし、会社員にはもしかしたら必ずしも必要なものではないかもしれません。それでもあえてこう言わせていただくのにはきちんとした理由があります。
マネージャーこそ夢を語れ
あなたはマネージャー、管理職であり、会社の経営側の人間です。あなたのグループが年間50億円を売上げるのであれば、あなたは年商50億円の会社の経営者です。会社員の中には明確な夢を持たない人も多数いるかと思いますが、経営者の中には夢やビジョンのない人はまずいません。
私はマネージャーに就任した時、キング牧師の「I have a dream.」になぞらえて自身のマネージャーとしての夢をいくつか語りました。具体的な例を挙げると、「担当クライアントのA社を社内No.1クライアントにする」などです。
管理職としての夢は、後付けで構いません。私も入社前に具体的な夢を持っていたタイプの社員ではありませんでしたし、A社をNo.1にするためにキャリアを積んできたわけでもありません。なので、「管理職になったからには〇〇を実現したい」という語り方で十分です。ただし、後付けで夢を設定するとしても、いくつかのポイントがあります。
後づけであっても、あなたが本気でその夢を叶えたいと思っており、きちんと理由を説明でき、そのために自分が一番汗をかく覚悟を見せる必要があります。そうでなければメンバーは誰もあなたについてこないでしょう。
ここでの夢は、会社の方針やメンバーの評価指標とマッチしている必要があります。この夢を実現すること、あるいは実現に向かう過程において会社からチーム・メンバーが評価されるものでなくてはなりません。
夢は、簡単に叶えられるものであってはいけません。1年後に達成できるものは目標であって、夢ではありません。夢を数字に置き換えたとき、会社から与えられる目標よりも低いものであってはいけません。
夢は、一言で語れる必要があります。全員が理解し、事あるごとに思い出せ、流れ星に3回唱えられるくらいシンプルである必要があります。
私が「A社を社内No.1クライアントに」と掲げたのは、それによって社内でゲームチェンジを仕掛ける目的でした。当時、年間の利益で6位だった我々の担当クライアントは社内での注目度もさほど高くなく、我々は決して経営資源を潤沢に投下してもらっているチームでもありませんでした。
でも、1位のプレーヤーは、ゲームを変えることができる。世界を変えることができる。No.1になれば、我々のやり方が社内のスタンダードになるかもしれない。媒体社は最新のソリューションや相談を真っ先に持ってくるかもしれない。人事、組織も我々のために動くかもしれない。新たな次元の世界が、ワクワクが、見えてくるかもしれない。だから単月でいいからNo.1を取りたいんだ、というメッセージでした。
あなたの管理職としての夢は何ですか?もしそれがまだ明確でなければ、ぜひ時間を取って考えてみてください。
活動計画のアジェンダ
あなたが提示する活動計画も、この「夢」を軸において組み立ててみてください。きっとアジェンダもこんな流れになるはずです。
自身の「夢」の発表/再確認
現状把握
夢の実現のためにこれまで取り組んできたこと
その結果、途中経過(=前期の成果)
会社の方針
自組織に求められる具体的な事象への落とし込み
それが自分の「夢」とどう整合するか?
目標、アクションプラン
会社から設定されている数字目標
その数字の達成手段、夢の実現まで見越したアクションプラン
前記事に記載したアジェンダ例と見比べてみてください。「会社から求められているからこれをやっていこう」ではなく、「私が夢を実現したいからこれをやっていきたい」という文脈になっているはずです。WeメッセージはIメッセージに、MustがWillに、命令からお願いに、伝え方も変わってくるでしょう。この活動計画は誰にでも言える内容ではなく、あなたという個人にしか語れない内容になっています。
人は誰だって、顔のわからない人のために働くことはできません。「会社のため」「組織のため」に働く人はいません。距離の遠い人、すなわち社長や上位マネジメント職の人のために働ける現場メンバーも稀でしょう。いつだって顧客、会社、関係各社のいつも相対している誰かのために働きます。あなたもそのモチベーション対象の一人に入れてもらうために、自身の言葉で自身の意志を示し、メンバーに理解してもらう必要があるのです。
もちろん個人で夢を持っているメンバーもいると思います。その時はぜひ、そのメンバーの夢を聞いてあげてください。そしてあなたの夢の実現を助けてもらう代わりに、その人の夢の実現にも手助けをしてあげましょう。同じ会社に属している以上、きっとお互いの夢にも多くの共通項があるはずです。そこをお互いに認識するだけで、そのメンバーのパフォーマンスは大幅に上がるでしょう。
ロジックの必要性
しかし、夢や情熱だけでは現実はうまく進まないことがあります。活動計画を発表した後にメンバーみんなが「よし、やってやろう!」と意気込んでも、次の日には冷静になり、「なぜこれをやる必要があるんだろう」と疑問に思ってしまうこともあります。残念ながら人のパッションは長続きはしないのです。それを避けるには、1%のロジックが必要です。ここでのロジックとは、数字ではなく論理的な考え方のことです。なぜその夢を追い求めるのか、その夢はどれほど困難なのか、達成するためにはどれだけの時間と労力が必要なのか、そしてそれによって得られるものは何なのか、さらにはどのようなロードマップを作り、今日は何に取り組むのか、ということです。これらを冷静な頭で明確にしておくことで、夢という曖昧な概念と現実を結びつけることができます。もちろん、考えている夢の進行は、想像とは異なることもありますし、途中で外的な要因によって妨げられることもあります。また、マネージャーの立場から後から考えた夢である以上、ポジションが変わることによって夢自体が変わる可能性もあります。その場合は、遠慮せずに計画を変更しましょう。ただし、その際には「以前話した時と現在では状況がこのように変わったため、今日からは○○を目指し、やり方は△△に変えていく」という説明が必要です。いずれにしても、常に達成したい夢があること、それに向かって行動するための明確な状況をマネージャーは常に作り続ける必要があるのです。
以上、かなり抽象化した文章なので具体的なイメージはわきづらいかと思います。ぜひ具体例もお見せしたいのですが、業務内容に深く関わる内容なので…私の元出向先のメンバーでご興味のある方は、私が作成した活動計画もお見せしますのでお気軽にご連絡ください。
いずれにしても、活動計画なんてそもそもメンバーはほとんど聞いていないものだと思います。私もそう思っていました。なんでこんな話を聞くために1時間も拘束されてしまうのか、と。オンラインで実施したら全員が内職しながら聞き流していることでしょう。なので私は可能な限りオフラインで開催し、メンバー全員に参加するように要請していました。そんなメンバーたちの耳目を集め、心を動かして組織をあるべき場所に導いていくためには、マネージャーであるあなたが偉大な演説者になる必要があります。
人を動かすのは数字ではありません。上からの命令でもありません。いつだって誰かのパッションによって人は動くのです。
【目次】
マネジメントの本質
ビジョン
チームビルディング
組織運営
メンバー育成
目標設定、評価、フィードバック