飲みニケーション問題
このセクションではチームマネジメントについて語ってきました。グループ内部の組織構造化=リーダー制の施行、そしてメンバーの異動・加入時のポイントを明確にしておくことで、組織のハード面はある程度見えてきたかと思います。あとはソフト面、つまりどのようにして組織を運営していくかを次のセッションで詳しく語れればと思います。
が、この記事では箸休めとして、よくマネージャーの同僚と話題になる「チームビルディングに懇親会は必要か?」という問題について考えたいと思います。あくまで私見なので、そんな考え方の人もいると思ってご参考程度に読み飛ばしていただければと思います。
懇親会は必要か?
結論から先に言うと、顧客への営業接点や関係各所とのお付き合いという業務上の側面ではなく、自組織の運営の円滑化を目的に据えた懇親会は、私は絶対的に必要とは思わない派で、
チームビルディングは業務時間内で完結すべき
メンバーが求めるなら絶対にやるべき
やるなら本気でやるべし
というスタンスです。
チームビルディングは業務時間内で完結すべき
最初に断っておきますが、私個人としてはどちらかというと懇親会は好きな方です。メンバーが業務時には見せないような素の部分を知ったり、差し支えない範囲でプライベートの情報を把握しておくことで業務が円滑に進む側面があることは否定しがたい事実です。
それでもあえてこう主張するのは「今はそういう時代だから」と安易に迎合しているわけではありません。懇親会は常に発動できるソリューションではないので、それを前提としたチームビルディングにはリスクが伴う、というのが一つ。そしてもっと大きい理由が「会社組織の人間は"利害関係"から切り離せない」というものです。
あなたがどんなにメンバーと仲良くなっても、あなたはメンバーの評価者であり、それは利害関係の最たるものです。あなたが意識していなかったとしても、あなたを評価者として意識しないメンバーはいません。あなたは気を使われているのです。メンバー同士においても、トレーナーとトレーニー、先輩後輩、ライバル、好き嫌い、いろんな人間関係があることでしょう。
そもそも会社は良い仕事をする目的で人が集まる場所です。そのために必要な「仕事仲間」を作る場所でもあるわけなのですが、これは業務時間内に全力で仕事に取り組んでいれば自然とできてくるものだと私は思います。
そしてどんな人にでも、利害関係がいっさいなく本音で話したり、愚痴をこぼしたり、仕事とは全く関係のない話をできる相手や、何もかも忘れて没頭できる趣味は必要です。ただ、それはいつも会社の外に存在するものです。会社の人間関係が全てになっている人はむしろ危険で、そんな人は今すぐ会社の外に安らげる場所を作りましょう。それが巡ってあなたの業務クオリティを上げることにつながることは私が保証します。
たいしてモチベーションのわかない懇親会に参加をさせられることで、業務に割くべき時間が奪われたり、自分のための貴重な時間を奪われるようなメンバーがいてはならないし、それをチームビルディングという名のもとにマネージャーが主導してはならない、というのが私の基本的な考えです。
メンバーが求めるなら絶対にやるべき
とはいえ、メンバーが(社交辞令ではなく心から)望むのであれば、ぜひ懇親会は実施しましょう。そんなチャンスを逃す手はありませんし、ここであなたがストッパーになってはいけません。そして参加するメンバー全員が楽しめる形態を考え、参加しないメンバーが疎外感を感じたり後ろめたさを感じないようなケアも全力で尽くす必要があります。
やるなら本気でやるべし
懇親会をやると決めたら、常に全力で取り組みましょう。幹事業務はメンバーに任せてもよいと思いますが、コンセプト設定とゴールイメージはマネージャーであるあなたがまず描き、幹事に伝えるべきです。
そしてチームビルディングとしての懇親会の目的はその言葉通りチームビルディングであるので、酔った勢いで始まる説教や、若手が知らない・興味もない昔話を年長メンバーで話すのは論外で、みんなが全力で楽しめることが必須条件となります。参加してくれた全員に最大限の敬意を表し、若手が考えたコンテンツにも全力で乗っかり、時には部下からいじられる覚悟もしておきましょう。それくらいの方が、結果的に現場とマネージャーの距離が近い良いチームになっていけるのではないでしょうか。
会の進行におけるちょっとした不手際も、特に支障がないのであれば私は目を瞑る派です。「いやいやお得意さんの接待の時にそんなことがあっては…」と思うのであれば、それはお得意さんの接待の時に自分がまずやって見せて教えてあげればよいことで、チームビルディングの場で別の業務の教育を行うことは目的のすり替えだと私は感じてしまいます。
昨今はコロナ渦を経て、懇親会に対する向き合い方も個人差が現れるようになってきたと感じています。また、私も結婚・子の誕生を機に懇親会に参加できる機会が減り、否が応にも費用対効果の意識が高まってきました。
そういった各メンバーの状況も敏感に察知しながら、懇親会というソリューションツールのメリット・デメリットを把握し、実行するのであればぜひ効果を最大化するため詳細設計に気を張り巡らせていただければ、と思っています。
【目次】