織姫と彦星はおおいそがし -七夕、みんなの変な願い事- #027
七夕の時期、誰かの書いた願い事を見るのが好きだ。
切実なのか、なんとなく思ったことなのかはわからないが、駅やお店などに設置された笹には、いろいろな願い事を書いた短冊が結び付けてある。
自分で直接見たものもあれば、インターネットで見かけたものもあるが、印象に残っているものがいくつかある。
『はやく血がとまりますように』
短冊を書くより前にすることがあるのではないか。絆創膏をあげたい。
『木村さんの持っている紅茶のはっぱがいつのまにかひじきにかわっていますように』
過去に木村さんと何があったのかはわからないが、分かりにくい嫌がらせである。紅茶好きの木村さんは戸惑うだろう。
15時のティータイム。お気に入りの紅茶(実はひじき)にお湯を注いでしばらく待つが、色はあまり出ない。
「なんか、薄いな」
ひじきだからである。
「…まあいいか」
それは、紅茶が好きだと言えるのだろうか。
そういえば大学生の時、友人が朝食用に買ったハンバーガーのパティを、彼が寝ている間にはんぺんに替えたことがあった。その友人は、起きてすぐに食べたのだが、半分食べてから初めて「あ、はんぺんだ」と言っていた。のんびりしている。
『かん字がきれいになりますように』
早く「かん字」を漢字で書けるようになるといいな、と思う。
何かになりたい、という願いもよくある。ケーキ屋さん、お花屋さん、消防士、アニメや漫画のキャラクターなどが定番だろう。
『パトカーになりたい』
乗るのでなくて、なるのでいいのか。きかんしゃトーマスやモルカーのような感じではなく、車の車体そのものになりたい、という情熱的な意気込みだ。
『アンパンマンのあんこになれますように』
中身とは、なかなかニッチな願いである。あんこが好きなのか。私はカレーパンマンのカレーを食べたい。
『おじいちゃんがカエルになりますように』
カエルが好きなのか、おじいちゃんがちょっと嫌いなのか。
「…わしにカエルになってほしいのか?」
「そうだよ!」
「…けろけろ」
孫と祖父のふたりが、仲良く平和でありますように。
『流年しませんように』
よく考えてみると、これはちょっとややこしい。「流年」は年が経つという意味だろうから、年が経ちませんように、だと「留年したい」ということになってしまう。留年しないためには、まず「留年」の漢字を覚えてはどうか。
『わたしはきまりをまもろうとおもいますように』
自分から「決まりを守ろう」という意思が感じられないのが、とてもよい。
『身長が妙に大きくなれますように』
「お前、なんか…妙に大きくなってないか?」
「願ったから」
『銀こうのお金がいっぱいいっぱいたまりますように!10兆100億円くらい』
『今年、辛ふくが多い月に』
「幸せの文字が¥(おかね)を含むのは何でなんでしょうか。一つ線を抜けば辛さなるのはわざとなんでしょうか」と、「ヒッチコック」という曲で、ヨルシカのsuisさんは歌っている。いい曲だ。
織姫と彦星は願いをかなえるのに忙しくて、ゆっくり会っている暇がないのでは、と心配になる。ふたりが面白い願い事を一緒に見て、楽しい時間を過ごしていますように。
(追記)
こういう短冊を前に観たんだよね、と友人に話したら、うちの娘は「だるまに、なりたい」って書いてたよと返信が来た。
2023年11月3日執筆、2023年11月20日投稿