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喉なんか乾いていないのに、温かいミルクティーをついつい買ってしまう話

ここ最近外出をすると、喉は乾いていないのに
温かいミルクティーをついつい買ってしまう。

辺りが暗くなり始めた17時頃
風よけも何もない平らな駅に
ただぼうっと突っ立っていると
自分が冷たい
油粘土になった気がして
生きた心地がしない。
そもそも私は本当に生きているのか?
ようわからん。

(どうでもいいけど、触ると手が臭くなるよね、油粘土。)

そんな時、全然喉なんか乾いていないのに
温かいミルクティーをついつい買ってしまう。

この何もない駅に、
自販機だけがぽつりと立っているのが良くない。

ICカードをピタッとワンタッチ。
触れるだけでモノが手に入ってしまう便利な世の中。
いささか便利過ぎる気もしますけどね。
モノもヒトも飽和してるよなぁ。

自販機の出口に手を差し込んで
ペットボトルの体に触れた途端
その暖かさに、
自分の指先だけが生き返った感じがする。

(分かってる。ホントは気のせい。
だって私、今までずっと生きてたもん)

誰も聞いていない、心の中の独り言。


ミルクティはいつも
分かり切った味がする
当たり前か
何回も飲んでいるんだもの。

意外と淡白で水っぽい
面白みのない味
ありきたりで直接的過ぎる甘さ
舌が退屈してしまう

美しいパッケージから想起させられるような
濃厚な風味(そこからくる感動)
そんなものはない
いつだってない

封を切って
ミルクティーを口に含むと
その熱のおかげで
冷たい舌と、液体の境目がはっきりと分かる。

(体以外のものに触れてみないと、
自分の体の輪郭って分かんないものだよなぁ。)

ミルクティーを飲み込むと、
その温かさが、私の食道と胃の位置を教えてくれる。

自分の体なのに、私はそれを見たことがない。
不思議だね。
食べたり飲んだりした時だけに分かる
自分の内蔵の形。

(体以外のものを中に入れないと、
自分の体の中身って分かんないものだなぁ。)

なんてね。しみじみしちゃう、わたくし。



中身。自分の中身。
ミルクティーの味なんて知り尽くしてるね。
ホントに知りたいのは自分のこと。


全然喉なんか乾いていないのに
温かいミルクティーをついつい買ってしまって後悔する。

このミルクティーも、
電車が来る頃には温かさを失うはずだ。

(いっつも飲み切れないんだよなぁ)

飲みかけのペットボトルの蓋を閉めて、リュックに押し込む。
たぶん、もう口は付けないだろう。


ただ、温まりたかっただけ。
ただ、温まりたかっただけ。


私の部屋には、飲みかけのミルクティーが数本ある。
困ったなぁ。
早く片付けないとね。


ツナ缶に愛の手を🤚❤️