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伊坂幸太郎「チルドレン」を読んで

好きな作家ランキングTOP3に入る伊坂幸太郎さんの「チルドレン」を読んだので、感想をつづります。

あらすじ

破天荒だがなぜか憎めない男・陣内は、大学時代に銀行強盗の事件現場に遭遇する。そんな彼と共に人質となった盲目の永瀬は陣内に出会い、彼の破天荒ながらも熱くまっすぐな性格に惹かれていく。クセが強く周りを呆れさせるばかりの陣内だが、人の心をグッと掴む天才でもある。そんな陣内を中心に描く、5つの奇跡が記された短編集。

感想

伊坂ワールド全開の物語に心が温まりました。伊坂さんの作品すべてに通じることですが、伏線の回収が見事なもので、読んでいてスカっと気持ち良かったです。短編5作品は、主人公の陣内が大学生の頃と、その後就職して家庭裁判所に勤める頃の物語が交互になって収録されていますが、私はどちらかというと、家庭裁判所で後輩の武藤と仕事する陣内が好きでした。理にかなっていない持論を展開して周囲を毎度呆れさせる陣内ですが、誰とでも対等に関わる、そして人間味全開の性格が、罪を犯した少年たちを動かします。最も好きだったのは、か弱い男子生徒を囲い込み、今にも殴ろうとする複数の不良少年を見つけた陣内が、か弱い男子生徒の方を一発殴ったシーン。「はあ!?」と思わずにはいられない奇行でしたが、「敵の敵は味方理論」が働き、不良少年たちが慌ててか弱い男子生徒を担いで陣内から逃げていったのです。思わずクスっと笑ってしまいました。
 この短編集も他の作品同様、伊坂さんが愛する音楽(主にビートルズ)について細やかにつづられており、音楽好きの私は読んでいてテンションが上がりました。また、親子の関係性についても考えさせられる物語です。子は親を選べない。この言葉が頭に浮かびました。読み応えたっぷりの作品に、大満足でした。



こんな人におすすめ


・温かい作品にほっこりしたい人
・クスっと笑える本が読みたい人
・元気をもらって前向きになりたい人

伊坂さんの物語ではよく死人が出るイメージですが、この物語はいつものような激しい事件は起きません。ハラハラせず、穏やかな気持ちで作品を楽しみたい方に読んでいただきたいです。

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