堤幸彦ドラマを語りたい
最近やっと念願の「ハンドク!!!」が配信で見られるようになりました。
それきっかけで過去好きだったドラマを最近は結構見返してます。
そんなわけで今回は「みなさんに見てほしい堤幸彦ドラマ」について語ってみます。
昔見てたわーという方も、SPECだけ見たことあるという方も、全く知りませんという方も、興味を持って見てもらえたらという気持ちで語っていきます。
本編7000字くらいは全部無料で読めます。
よろしくお願いします。
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ケイゾク(1999年)
多分最初に目にしたのは「金田一少年の事件簿」で、堤幸彦を認識したのは「トリック」だと思うけど、自分の中で原点は「ケイゾク」ですね。
トリックよりケイゾクの方があとに見てるけど、堤監督と数々の作品を生み出していくTBSの植田博樹プロデューサーとの最初の作品でもあり、原点という気がします。
東大から警察庁に入庁したキャリアの柴田(中谷美紀)は、「警視庁捜査一課弐係」という未解決事件を扱う部署に配属となる。
元公安の真山(渡部篤郎)らと共に、迷宮入りとなった事件を再捜査し解決する。
基本は1話完結で事件を解決していくいわゆる刑事ドラマ。
その背後に真山さんが朝倉という男を追う物語があり、次第に柴田や物語自体もそっちに飲み込まれていく。
「ケイゾク」というのは、「鋭意継続捜査中」の「継続」。
「捜査一課二係」(架空の部署)が扱う未解決事件、建前は「鋭意継続捜査中」だけど実際は「迷宮入り事件」。
要するに二係は掃き溜め的な部署。
部屋も地下にあり、まさに「ショムニ」である。
陰鬱とした雰囲気、後味の悪いストーリー、それでいてヒロインが「チンコ」とか言ういびつな世界に、わたしはすっかり心を奪われてしまいました。
こんなに足場がグラグラしてて、暗くて奥が見えなくて、瓦礫のように積み上げられた建造物があるんだ、あっていいんだって、きっとこれで知った。
そういう雰囲気が好きな方、ミステリー、警察関係が好きな方、そしてアンナチュラルが好きな方は是非見てみてください。
中堂系もかっこいいけど、真山徹もバチクソかっこいいぞ。
ケイゾクとアンナチュラルについてはこちらで話してます
監督にとってもターニングポイントとなった作品であり、やりたいことをやるために植田さんはTBSの上層部と戦い、切り開いた作品。
だからこの作品は今見ても革新的だし、その後のドラマ全てに影響を与えたエポックメイキング的なドラマだと言っていいと思います。
設定やストーリーに行き当たりばったりなところは多々ありますが、それによるヒリヒリ感によって得られるものの方が大きい(と感じられる人向けではあるかもしれない)。
テレビシリーズ11話と約2時間のスペシャル1回、劇場版1本あります。
SPECみたいにそのあとを見ないとお話にならないというわけではなく、一応テレビはテレビで終わってるのでそれだけで大丈夫。
だけど最後まで見た人は続きも見ることでしょう。
トリックシリーズ(2000~2014年)
「堤幸彦ドラマ」の一番の代表作って、やっぱトリックになるんですかね(今はSPECかも?)
今回話す中では唯一TBSドラマじゃくて、植田Pが無関係のドラマです(しかし「上田」の由来は言わずもがな、「やまだなおこ」もTBSのスタッフである)。
自称天才マジシャンの山田奈緒子(仲間由紀恵)と物理学の大学教授・上田次郎(阿部寛)がインチキ霊能力者や超常現象のトリックを暴くミステリー
フォーマットとしては探偵もの。
上田のところに調査依頼が来て、奈緒子と一緒にうさんくさい宗教とか変な村とかにいって、殺人事件がおきて、奈緒子が「おまえらのやってることはまるっとお見通しだ!」と決め台詞を言うっていう、金田一少年の事件簿的な形式。
コメディ強め、パロディ、中の人、固有名詞、メタっぽいネタ多め。
いわゆるエセ因習村とか新興宗教みたいなところで、人々を騙して金を集めている「謎の信仰」「うさんくさいカリスマ」なんかのインチキを暴くみたいなのが多いです。
それに加えて奈緒子のルーツや霊能力者にまつわるストーリーもあるにはあるけど、それが本筋って感じでもない。
ケイゾク同様にトリックもまた、コメディ、陰鬱、後味の悪さを兼ねそろえていて、そこにさらに因習村や新興宗教みたいなものがのっかった結果、不思議な不協和音とか、不安になる色彩の絵、みたいな独特の世界になってる。
そういう様々な要素の中で不安定に漂う中で、鬼束ちひろの主題歌で一気に思いもよらない方向に流される。
そのせいか、なんかトリックって、印象的なようで何も残らないような、変な感覚がある。
テレビシリーズの1、2、3、スペシャルが3回、劇場版が4本、スピンオフドラマ「警部補矢部謙三」がなんとスピンオフなのに2シーズンあって、全部見ようと思ったら大変。
わたしは「最もトリックらしい」のはテレビシリーズ「TRICK2」とそのあとにやった劇場版だと思ってて、とりあえずそこを見てもらったらいいんじゃないかなと思います。
ハンドク(2001年)
ケイゾクやスペックなんかと比べたら注目度の低い作品かもしれませんが、わたしはかなり好きです。
実際一番は決めにくいけど、この中でどれが一番好きかときかれたら「ハンドク」と答えるかも。
前2作に比べるとシンプルだしテーマもまとまってて見やすい気もするし、続編とかもないし、二宮和也や佐々木蔵之介、高橋一生など今も大人気の俳優陣も多数出ているので、最初にこれを選んでもらってもいいかもしれません。
脚本は現在大河ドラマを書かれている大石静先生です。
池袋のギャングから医者になった狭間一番(長瀬智也)は、SMHという前衛的なシステムの大病院の研修医となる。
完璧に規律化された病院で同期の研修医と奮闘しながら、医療とは何か、命の価値とはという問題に直面していく。
ハンドクというのは「半人前のドクター」つまり「研修医」のこと。
ちなみに堤幸彦監督で長瀬智也が池袋のギャングをやっていた「池袋ウエストゲートパーク」はこの前の年に放送されていました。
池袋ギャング設定はもちろんここから。
マコちゃんとはキャラ全然違いますが。
長瀬智也の演じる役やイメージが「二枚目のイケメン」から「男くさいバカ」になった点がここなんじゃないかなぁ。
こういう長瀬になってからの方が格段に好き。
二宮和也にとっても、おそらくここが転機に近いのかな。
翌年に「青の炎」をやって「役者」の肩書になっていくと思うんだけど、その片鱗を露わにしたのがここかなと。
このドラマもまたお得意のコメディ×後味悪いのやつですが、ハンドクは「セオリーをことごとく崩してくる」のが特徴。
現実は不条理である。
セオリー通りにいくことなどない。
それが根本にあるテーマなのかなと思ってます。
キャラにしろギャグにしろ雰囲気にしろ、どういうドラマなのかは1話を見ると全部わかるので、とにかく1話見てほしい。
23年前のニノや佐々木蔵之介目的でもいい。
3話のモブで津田健次郎も出てるよ。
池袋の青果店、警視庁捜査一課二係、など、何かを彷彿とさせるものもチラホラ。
OP映像になぜか曲のコード進行が出てたり、スタッフロールにも「演出上等!!! 堤幸彦」など、クレジットに「上等!!!」などの言葉がくっついている。
回を増すにつれてクレジットも変化していくので、是非イントロスキップせずにご覧ください。
主題歌TOKIO「DR」も聴いてください。
愛なんていらねえよ、夏(2002年)
隠れた名作。
当時も別に隠れてはなかったと思うんですけどね。
わたしもリアルタイムでは見てはいなかったんですが、このタイトルのドラマがやってることは知ってました。
インパクトあるし、当時漫才とか見ててもネタにされてたりして、タイトルはみんな知ってたんじゃないかなぁ。
しかし視聴率は驚きの低さ。
これと映画「恋愛寫眞」がスベって、その後植田さんが異動になってたので、飛ばされたんだなぁと思ってました。
多額の借金を負った歌舞伎町のホスト、白鳥レイジ(渡部篤郎)のもとに、天涯孤独となった盲目の令嬢・鷹園亜子(広末涼子)の生き別れの兄・白井礼慈を探している弁護士が現れる。
彼女の財産目当てでレイジは兄のふりをして鷹園家に入り込む。
ここで紹介する中で唯一コメディ要素のないシリアスドラマ。
全体的に暗いです。
愛を信じないホスト(というか詐欺師)レイジと亜子が出会い、兄妹として生活し、次第に「愛」というものに気がついていく。
設定はベタだけど、大きな幹を見るというよりは、枝葉のざわざわに存在感のある作品だと思う。
登場人物が誰一人として善人ではなく、悪意や嫉妬、憎悪、打算みたいなもので全員が動いているけれど、それでいて悪人もいない(レイジは悪人といっていいが)
おとぎ話のようなストーリーと、人間のリアリティが倒錯する。
間違いなく傑作です。
しかしまあ、渡部篤郎の演技のクセがすごい。
渡部篤郎のモノマネくらいクセ強い。
でもそこを乗り越えて見てほしい。
広末涼子の感じも最初は受け入れにくいかもしれないけど、どうにか頑張ってください。
レイジを慕う奈留(藤原竜也)と季理子(西山繭子)がとても良い。
あと借金回収人のタクロー(森本レオ)の”物腰柔らかいけど激烈怖い人感”はこのドラマを語る際には外せない。
渡部篤郎とのシーンは毎回熱いし、子分のゴルゴ松本はほとんどしゃべらないんだけどその関係性に思いを馳せたくなる。
あー、タクローと須之内先生もいいなぁ。
これもまた回によってタイトルバックが変化するので、飛ばさずに見て欲しいですね。
あと、1話~10話とカウントアップしていくんじゃなくて、LAST10~LAST1と最終回に向けてカウントダウンしてます。
人を選ぶ作品だと思うし、紹介する中でもこれだけだいぶ毛色が違うので、他作品を見て堤×植田の世界をもっと知りたくなった人向けだと思います。
けどこの中で一番見てほしいのは実はこれだったりもする!
見て!!
韓国でリメイクしてそっちはヒットしたらしいです。
Stand Up!!(2003年)
これも最近やっと配信で見られるようになったので載せてみます。
「いら夏」とは別の方向でまた毛色が違う作品。
戸越に住む高校生の4人(二宮和也、山下智久、成宮寛貴、小栗旬)が、17歳の夏に童貞を卒業しようと奔走する。
そこに幼馴染の千絵(鈴木杏)が現れる。
本当にくだらねえ青春エロコメディ。
ほぼ戸越ロケ。
これはテレビドラマ版「ピカ☆ンチ」をやろうとしたんだろうと思ってた。
(ピカ☆ンチは2002年公開の堤監督・嵐主演映画。品川・八塩団地を舞台とした青春コメディ)
わたしは完全に彼らと同世代で、これをリアルタイムで見たからそこそこ楽しんでいたけど、今この時代にわざわざ時間を割いてみることを勧めるかというと微妙なところ。
出演者が好きな人は見たらいいと思う。
4人とも当時も今も魅力的。
わたしは塚本高史派でした(レイジのマネするとこめっちゃ好き)
「エロコメ」を名乗っていてテーマが童貞卒業なので、お下品だったり今はちょっと無理な表現もあるけど仕方なし。
ベッキーとか、DAIGO☆STARDUST時代のDAIGOとか出てきます。
当時あけすけなキャラでバラエティで爆発してた杉田かおるがそのまんまのキャラで出てたの印象的だった。
ちなみに例によって植田さんプロデュースではありません(のちに「仁」などのヒット作を続々生み出す石丸Pのプロデューサーデビューがこれらしい)
SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜(2010年)
やっとSPECまできた…これ長くなるなぁ…
SPECは「ケイゾク」の流れを汲む作品。
ケイゾクのメインスタッフが集結し、同じ世界が舞台であり、「ケイゾク」のキャラクターも登場するけど、「続編」というとちょっと違う。
今流行りのシェアードユニバースだ。
(なのでケイゾクを見ずにSPEC見て大丈夫)
この企画は通らないから、上に通すにあたって「ケイゾク2」ということにした方が通りやすいからそうした、みたいなことを植田Pは言っていた。
しかも超能力があるということも隠して通した、と。
(これの結構前から植田さんは「ケイゾク2をやりたい」と言っていて、それは正当な柴田と真山さんの続編をやりたいという意味だったのか、そもそもスペックのようなもののことだったのかは今も謎)
(ケイゾクの続編の報が出て、主演が加瀬亮と戸田恵梨香と書いてあって、渡部篤郎中谷美紀じゃないのか!!!ふざけるな!!!!!!!!となった日のこと思い出した)
超能力などを使った特殊な事件を捜査するために公安に設置された「未詳事件特別対策係」(通称「未詳」)に配属された当麻(戸田恵梨香)と元SITの瀬文(加瀬亮)、「SPEC」という特殊能力を持った人間による犯罪を解決していく。
警視庁が舞台で、ケイゾクと同じ世界観でありながら「能力もの」。
最初はケイゾクの続編だと思って見てたので、リアルタイムのときはそこまでハマれなかった。
のちのちハナから異能力バトルだと思って見たら面白かった。
ケイゾクの野々村係長が未詳の係長になっていたり、近藤さんが弐係長になっていたり、餃子をモリモリ食べたり、他局ネタ、裏番組ネタなど、らしいコメディは諸々ありつつも、話は結構シリアス。
ケイゾクのようにまた新しい常識を作った作品であり、堤幸彦作品といえば今は「SPEC」が一番に来るのかもしれないけど、そう簡単にはおすすめできない。
何故ならテレビシリーズを見ても全然終わってないから…
ドラマでそこまでハマらなかった&生活が変わったのもあって、そのあとのスペシャルとか映画とか全く見てなかった。
その後、何年か前に妹と話してたらスペックの話になって「テレビだけ見たってしょうがない」「あれは序章」「映画が本編」と言われて、え、そうだったのとなり、映画も全部見ました。
ほんとだ、起承転結じゃん、ドラマは「起」ってことじゃん!!と頭抱えた。
結構覚悟いる。
テレビシリーズ 全10話
スペシャルドラマ「SPEC〜翔〜」
劇場版「SPEC〜天〜」
劇場版「SPEC〜結〜 漸ノ篇」
劇場版「SPEC〜結〜 爻ノ篇」
これだけあります。
起承転結結よ。
覚悟して見てください。
(スピンオフと前日譚と続編もあるよ…わたしはまだ見てないよ…)
ヤメゴク~ヤクザやめて頂きます~(2015年)
紹介するのはこれが最後です。
これもわたしは結構好きなんですけど、あんまり注目されなかったのかなぁ。
警視庁組織犯罪対策部にある暴力団からの離脱=足抜けを支援する部署「暴力団離脱者電話相談室」通称「足抜けコール」
組対四課(マル暴)から左遷されてきた三ケ島(北村一輝)は、ヤクザを憎み、利益供与するカタギすら許さない冷徹な麦秋(大島優子)らとヤクザの足抜けを進めていく
「ヤクザを許さない」という作品の性質上、わりと漫画的と言いますが、ファンタジックなコメディだと思います。
ケイゾクやハンドクに比べたらタッチ軽め。
宣伝がSPEC人気にあやかった煽りをしていたから、そういうものを期待して見ると拍子抜けだと思うけど、軽い気持ちで見るドラマとしては結構面白い。
そしてこのドラマ、ストーリー以上にドラマ内で生きてる人たちのことが好きなんですよねえ。
面白いドラマの条件はいろいろあるけれど、一番はその人たちが生きていること、だと思う。
ドラマの外でも、終わった後も、彼らが生きていると思わせるもの、放送が終わってしまうことで彼らに会えなくなることが残念でならない作品。
ヤメゴクは結構それでした。
どの人物も役者とキャラクターのシナジーが素晴らしくて、このキャラならこの役者さん、この役者さんだからこのキャラクターっていうのを端々にまで感じる。
コテコテの関西弁の北村一輝とか、オネエっぽくて飄々とした掴めない勝地涼とか、だいぶ好きでした。
あと若頭の水田もすごく存在感があったんですが、元四季の方なのか…!
田中哲司さんが仲間由紀恵と結婚したのでドラマ内でいじられてる。
テレビシリーズ全10回
そんなに重く受け止めなくていいので、気軽に見たらいいと思います
あと「神の舌を持つ男(2016)」は今見てるんで、今回は間に合わず!
あとで追加するかもしれません。
↑この対談は相当面白かったです。
興味ある方は是非。
このあとは、ネタバレになる感想や個人的な思い、朝倉や「いら夏」のことなどをつらつら書いていきます。
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ケイゾク
とりあえず、好きな真山さんのセリフ発表ドラゴンになるね
「頭の悪い女だねえ
おまえには生きててほしいんだよ」
「真実なんてのはな、本当は存在しないんだよ
曖昧な記憶の集合体が、真実の顔してのさばってるだけだ」
(班目の「俺たちは刑事だ」に対して)
「ただの人間だよ」
「頭くせえ」
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