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映画「ファーストキス 1ST KISS」初日感想 人類は靴下には勝てない

塚原あゆ子監督 坂元裕二脚本 松たか子主演の映画「ファーストキス 1ST KISS」


初日に見てきたので、ちゃんとしたレビューはまた書くと思いますが、率直な感想を勢いだけで書いていこうと思います。

全体の感想部分は内容には触れますが核心的なネタバレにはならないはず。
最後の項だけ有料で、ラストまでのネタバレを含む超個人的感想です。




本当に、とても素敵でしたね。
素敵な映画でした。

坂元裕二のカルテットとか大豆田とわ子のあの感じが好きなら絶対に楽しい。
そして松たか子と松村北斗が素敵すぎて。


松たか子と松村北斗を見る映画

この映画は松たか子と松村北斗を楽しむ映画です。
素材を味わうコースです
野菜をたべるスープです
そういうかんじで、もちろん物語全体をいただくのですが、何がメインかというと主演のおふたかた。

吉岡里穂やリリーフランキーという名のある俳優陣もいるはいるし、もちろん素敵なのだけど、二人以外はモブ同然。
ふたりは何度も出会い、そして何度でも恋をする。
何度でも恋の最初の顔をする。
その尊い瞬間を何度も見せてくれる。

奥手っぽいカケルが自分からかき氷に誘うとか、そんなすぐ好きになります?20代からみたらおばさんだし?って疑問が湧きそうなところだけど、そうなるのは必然なんだって思わせてくれる。
それは会話の妙と、松たか子の表現力。

カンナは当然カケルのことが好き。
だけど死んだことは怒ってて、離婚するくらい仲悪くなってて、でも当然恋に落ちた頃のカケルのことは好きに決まってて、今会える喜びと、死なないためにどう振る舞うべきかと、いろんな思いがカンナには詰まってて、それが詰まった状態がカンナで、あーほんと松たか子って素敵!!!

あの、もう1回って繰り返すところで3回目にはパーティー楽しむつもりで綺麗な服着てきてるのとか最高なんですよね。
ただこのときを楽しんでるっていう。
カケルが死なないためになんとかしなくっちゃ!って奮闘するだけの話だったら、きっとこんなに魅力的じゃない。

そして松村北斗さんね。
ビジュアルや話し方も完璧にカケルがそこにいましたね…
でもなんかただメロいっていうんじゃなくて、カンナを好きだからこそ魅力があるという感じがいい。

このふたり、そこが好きなんです。
カンナのことを好きなカケルが好きだし、カケルのことを好きなカンナが好きなんですよね。
ほんと、このふたりのことが大好きになってます。愛おしい。


SFでもファンタジーでもない

タイムスリップする映画だけど、タイムスリップについて気にならないのがとてもよかった。

時間移動系の作品て、この世界のルールが分かるまでそればっかり気になってしまったり、設定でもやもやして話に乗れないみたいなケースがある。
今作はなんでタイムスリップしちゃったのかとかはよくわかんないけど、別にどうでもいいんですよね。
作中でそのなぜを一切気にもかけないので、こっちも気にしなくていい。
語らなければいらぬ矛盾も生まないし、タイムスリップすることで世界が大きく変わってしまうバタフライエフェクト的なことはないこと、しかし同じカンナの軸で干渉は可能なことは簡潔に提示されてストレスがない。
安心して「ドタバタやり直しコメディ」を楽しめたのがとてもよかった。

タイムスリップはするけれど、SFでもファンタジーでもない。
日常と地続きだけど、どこかおかしい。
そんな普段の坂元裕二世界の延長に見える。

時をかけるのはどこかおかしいで済む話じゃないはずだけど、その程度に感じられる。
それは坂元裕二の世界がもともとどこかおかしいからだ。

坂元裕二ドラマ特集(を映画の公開前にアップしようと思ってたのに間に合ってないんですが、そこ)でも書いたんですが、坂元裕二の世界っていつもちょっとはみ出している。
魔法もタイムリープもない日常世界でも、ちょっとはみ出している。
決められたリアリティラインをたまにちょっとだけ突き破るんですよ。
野木亜紀子は突き破らない。
めいっぱいギリギリまで攻めることはあっても、穴をあけて向こう側にいこうとはしない。
坂元裕二ははみ出る。
それが独特で味があるし、たまにやりすぎるし、それを嫌う人もいるだろうけど。

だからカンナが時間を超えて死んだ夫に会うというありえない状況も、大豆田とわ子が自動ドアに挟まって動けなくなるというあり得ない状況と同じくらいの感覚で見られる。
全然ファンタジーな気がしない。
そこが本当に好きだった。


そんな中で、劇中で印象的なモチーフとなるシャンデリアみたいなやつ、あれはなんだかずいぶんとファンタジックでロマンティックでしたね。
タイムスリップも日常のように見せてしまう世界とはちょっと世界観が違う気がしてしまうくらいなんだけど、悪くない。
美術の人と恐竜の人がうまくひとつになってるし、あれがカルテットでも大豆田とわ子でも花束でもない、また別のジャンルの作品であることを強く提示してて印象的だった。
アニメ的、新海誠的なエモさみたいなものがある。

あえて分類するなら「大人ジュブナイル」じゃない?と思った。
あんまり詳しく聞かれると困るけど。

ポラロイドのくだりも好き。


主役が「光」に食われる

主演の二人を見る映画だって言いましたけど、この映画、光もずっとすごい。
後半のあのシーンなんか、物語を見てるのか、二人を見てるのか、光を見てるのかわからなくなった。
そのくらい、光が主役になっていた。
それは不思議な体験だった。


坂元裕二、靴下への想いが強すぎる

この人また靴下の話してる。
結婚のこと靴下だと思ってる。
結婚じゃなくても靴下の話はあったか。
靴下に人生を重ねている。
もしかして人類は靴下に支配されているのではないか。
靴下を履かない人生を選んでいる人はニュータイプなのではないか。

しかし松たか子に何回離婚届書かせるんだよ。


そのほかの気になったことなど

・冒頭から、竹原ピストルだ!花江夏樹だ!東京ダイナマイト松田だ!ってなってなんかそのチョイスも含めて楽しかった。

・YOUが話してる間、カンナは何食べてるの?
こういうところとても好き

・餃子が焦げ付いたとしても、焦げ付いた部分を剥がせないかもう少し努力してほしい
それを剥がそうとしてそれでもああなる、それは諸行無常の響きだけど、いくらなんでもあれはない!

・2009年、絶妙な時代。
スマホは持ってる人はほとんどいなかったと思うけど存在していたし、PDAはもっと昔からあるのでスマホを持っててもそんなにおかしくはない。
そういうデバイスだと思われるだけだろう

・ガラケーの充電器はドコモ・ソフトバンクとauで違っていたので、合う充電器を持っててえらかった

・ホームドア、すべてのホームについてほしい
普段つかってる電車はどの路線もホームドアついてるから、2か月に1回くらい京葉線乗るときに「なんて野蛮な!」と思うようになった
電車が剥き出しなのは普通にこわいよ

・めちゃくちゃ春のパン祭りだった

今思いつくのはこんなところですかね。
このあとはラストまでのネタバレを含みつつもっと個人的な感想を書きます。
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薄情人間と恋愛映画

あまりにも素敵な作品なので言わなくてもいいような気がしつつも、とはいえ他の人の感想を見ていても共感できていない部分もあるので、自分の感想はやはりそれとして残しておきたい。

本当に素敵な作品なんですよ。
作品の素晴らしさとは全く別問題。
味の好みの問題。


わたしはファーストキスのこと、カンナとカケルのこと、めちゃくちゃ大好きです。
その上で、どこで泣くのか分からなかったです。

べしょべしょに泣いたという感想をたくさん見るし、映画館でもすすり泣きがそこらで聞こえてた。
涙は出なかったとか泣くほどではなかった、じゃなくて、そのベクトルにいってない。

話を畳みに入ったくらいからちょっと退屈になってしまった。
たぶんわたしは恋愛映画がすきじゃないんだろう。
花束も、映画の話だけをすれば退屈な映画でした。

恋愛映画を見に行って、恋愛映画が好きじゃなかったって言ってるだけ。
しかも恋愛映画に見えない恋愛映画を見に行ったんじゃなくて、恋愛映画にしか見えない恋愛映画見に行ってる。
カレー好きじゃないのにカレー屋行ってカレー注文しておいてカレー好きじゃないからこれ好きじゃないって言ってる人の感想文です、これは。


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