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2024秋ドラマ「無能の鷹」「ゼンケツ」「わたしの宝物」「うみねむ」完走の感想
今期、珍しくなんとなくそれとなく、いくつかのテレビドラマをリアタイしていました。
結果的に完走したのは
無能の鷹
わたしの宝物
全領域異常解決室
海に眠るダイヤモンド
です。
完走した感想を書きますので、核心的な話はふんわりとは書きますが、最終話までのネタバレはあるものと思ってください。
無能の鷹
最終話までは「中身のないドラマ」だと思っていたんですけど、最終話を見たら本当に「中身がないドラマ」だったんですよ。
これはしてやられました。
最初は結構ノリがきついなと思ってて、でも雉谷だったりもずうかコンビだったり好きだなと思えるキャラが出来たりしてなんとなく見続けて、とはいえわざわざ時間使って見ることもないかなと思わないでもなかった。実際見てない回もある。
あたま空っぽで見られるドラマはあっていい。
海に眠るダイヤモンドみたいなドラマばっかりあればいいって話じゃない。
とはいえわたしは、一般的な物差しでこのドラマを測っていたんだろう。
「中身がない」というのは、「このくらいあってほしい」というものに対して「足りていない」と感じているということだ。
それが間違っていたと気づかされた最終回。
無能の鷹は「足りない」ドラマだったんじゃない。
「からっぽ」だったんだよ。
空っぽを作ろうとして空っぽを作ってたんだよ。
それを途中まではなんかあるように見せかけていた。
何もできない鷹野がそれっぽいこと言ったら相手が勘違いしてなんかうまくいっちゃうみたいな、そういうカタルシスを提供したりしていた。
でもそんなのはなんでもないことだった。
全てが砂の城だった。
夢や、蜃気楼のようなものだった。
ここまでの8話をすべてなかったことにするように、続編などありもしないのだと言うように、全てを更地にして無能の鷹は終わった。
立つ鳥跡を濁さず…
だから途中、なんかちょっと心温まったり、仕事や多様性みたいなものについて考える余地のあるドラマみたいに見えたのが、逆に残念だったかな。
鷹野はマジで意味がない存在だったらもっと途中も楽しかったのかも。
とはいえ「生きてるだけで偉い」みたいなことに励まされたという意見もあるので、合う合わないの問題だったような気もします。
しかし最後の最後になんかしてやられたみたいな気持ちになるとは思わなかった。
負けました。
わたしの宝物
最後まで本当に味がなかった…
これは無能の鷹と違って、ちゃんと味がないといけなかったやつ。
前の記事書いたのがちょうど宏樹が托卵を知ったところだったんで、「これから味がしそう!」って思ってそのように言ったけど、結局そのあとも同じだった。
まずくてもいいから、味がしてほしかった。
いわゆる「昼ドラ」っぽい、ジャンクフードのようなゴシップ欲を満たすコンテンツにはしたくなかったんだろう。
不倫、托卵、モラハラというそういう欲をかきたてる材料を並べながらも、そうならないように、下衆くならないように気を配ってる。
丁寧に、丁寧に、素材の味を生かして、綺麗に飾り包丁入れてるけど塩気も甘みもない。
そんなものを食わされていた毎週木曜日、2024年秋。
最近ありがちな「悪役不在」の物語。
宏樹はモラハラ夫だけど、本人も苦しんでて限界だった。
美羽も道を外れたことをしたけど、宏樹以上に苦しんだ結果。
冬月も、無駄にかき回していったリサと真琴も、悪い人間ではないけど、ずるさはあって、でもちゃんと反省できて、許されて、で?
ひろきもつらかったよね、みわもつらかったよね、りさにだって考えがあったんだよね…
じゃあないんだよ。
少しはぶつかり合ってくれ…
このドラマ、誰のことも好きじゃないんだよ。
しいて言えば名優・栞ちゃんだけ。
好きになれるキャラクターがほんとにいない。
だからせめて真琴くらいは視聴者が怒りの投書をフジテレビに送るくらいの悪女であってほしかった。
嫌いにならせてほしかった。
そういう大きな感情を動かす力が、あまりにもなかった。
勧善懲悪が流行らなくなって久しいし、自分も物語を見て「キャラクターが人間」であることを褒めることが多い。
人間にはいろんな面があるのが普通で、ステレオタイプなキャラクターはリアリティがない。
上質な物語には絶対的な悪人が存在しない。
なんかそういう風潮がなくもない。
でもこれって、人にはいいところもあって悪いところもあるよね、間違いもあるよね、傷つき傷つけることもあるよね、が結論でいい話なのか?
そりゃあ芸能人の不倫とかはどうでもいいじゃん。
「世間は関係ない、当事者だけの問題」って思いますよ。
配偶者が許しているならメディアや我々が断罪する必要は一切ない。
宏樹が許すなら、冬月がそれでいいなら、この話は穏やかに着地していい。
しかしそれをドラマにしてどうする???
「当事者だけの問題」っていうのは「だから報じる必要はない」の上の句じゃないですか。
知る必要がないんだよ、そんな話なら。
話題性のために一話を結構盛ってめちゃくちゃドロドロ昼ドラになりそうに作ってしまってたからその落差もあると思うんだけど、美しく終わってもだからなんやねんしかない。
ごめんで済んだら警察いらぬのドラマ化みたいな感じ。
そんな中で我々の光だったのが北村一輝じゃないですか…
風貌は地面師なのに、ほかのキャラがクソすぎて、この作品の唯一の良心、北村一輝だけが聖域、なんなら聖母くらいの扱いになってました。
キャラ名が頻繁に出てくるわけじゃないから「浅岡」という名前がそこまで浸透してなくて、みんな毎週「北村一輝」の名を呼んでるのがおもしろかった。
わたしもずっと北村一輝に助けを求めていた。
じゃあその浅岡のことを好きだったのかというと、あんまり好きじゃなかった。
北村一輝が好きなので登場すると喜んでたけど、浅岡が好きかというとそんなことはなかった。
いいこと言うキャラだし、宏樹の心の拠り所として機能してはいたんだけど、その在り方が「システム」のようだった。
教会でセーブするような、宿屋で回復するような、レベルアップに必要な経験値を王様に聞きに行くような、そんなシステムのような存在に過ぎなかった。
でも最後の最後の浅岡だけ突然味があった!!!!!!!
あれと真琴をぶった切ったときは最高でしたね。
田中圭と良太郎のお姉ちゃんは素晴らしかったし、なんだかんだ最後まで見てしまったのは北村一輝のせいだけではないんだろう。
まずくてもいいから味がしてくれとはずーーーっと言い続けてたけど、激マズだったら最後まで見てないだろうし。
あまりにも山あり谷ありがなさすぎたので、2時間ドラマとかにしてくれたらよかったんじゃないか。
そんな気がした。
全領域異常解決室
ゼンケツ、神ドラマでしたね…
これは前の記事の段階では見てなかったし、「ほかにも気になるドラマがある」と言ってたけどそこにも掠ってない。
藤原竜也が神を名乗ったことで世間がざわざわして、ようやく存在に気がついて一気見しました。
超常現象専門の部署って「未詳」じゃん「SPEC」じゃんと見せかけて、オカルトに見せかけた普通の事件でした~は「TRICK」じゃんとなり、でもやっぱり人知を超えた何かがあるっていうならほな「SPEC」か~と思えば、藤原竜也「わたしは神です」
つ よ い 。
パッケージはちょっとちんけなオカルトっぽい。
で、蓋を開けてみたら全然そんなことなかったんですよ!!!
と言いたいところだけど、そんなこと全然ないというわけでもない。
クソ真面目に「神様」たちがなんかやってるの、こっちもクソ真面目に見られるのかと言ったらかなりギリギリ。
それなのに大人を夢中にさせたのが構成の妙ですよね。
初めから神とか能力の話であるようには見せず、視聴者同様にゼンケツのことを全く知らない小夢がゼンケツ所属になるところから始まる。
オカルト紛いの事件を論理的に解決し、警察ドラマであることを提示する。
これで視聴者の間口は広く取られる。
とはいえありがちな一話完結の警察ドラマと思われてもいけない。
これは何か普通じゃないんじゃないかと好事家たちが引っかかるような要素を撒き散らし、まんまと釣られていく我々…
SPECも超能力の存在を隠して企画を通したらしいから、異能力バトルって受け入れられにくいコンテンツだというのは作る側ははっきり把握しているんでしょうね。
わたしも超能力とか言われたら興味出ないからなぁ。
そしてその構成と同じくらい重要なのがキャスト。
まず藤原竜也の安心感がやばい。
藤原竜也が藤原竜也としてそこにいてくれるから、わたしたちはぶれることがない。
だからこそ入りにくい入口も入れたし、途中もちゃんと歩けたし、最後まで安心して見てました。
あとユースケ・サンタマリアも。
冷徹そうで絶対この人悪い人じゃないってう感じを最初から出し惜しみしていないので、これもまた安心感。
その中に小日向文世とか迫田孝也という、めちゃくちゃ優しくて温和だけど実は黒幕でしたの匂いの人たちが混ぜ込まれているので全然安心できない。
このキャスティング良すぎる。
続編作る気満々の最終回は賑やかで最高でしたね。
劇場版ゼンケツ京都編あるし、出雲や伊勢の神もいるじゃん。
収集つかないくらいの展開は望んでないけど、もうちょっとワクワクさせてくれたら嬉しいなという感じです。
あーあとこれは喧嘩になるかもしれないけど、天宇受売命は猿田彦と結ばれますから、藤原竜也は横恋慕やめてください!!!!!!!!!!!!
申し訳ありません!!!!!!!!!!!!!!!!!!
海に眠るダイヤモンド
本当に、素晴らしいドラマでした。
美しくて上質で、知的で、でも高尚すぎないエンタメ性があって、こういうものをやれるのがテレビなんだから、やっぱり捨てたもんじゃない。
島民の生活と若者の恋愛を描くヒューマンドラマだけなら、わたしは脱落していた。
毎話毎話何かしらの謎が紐解かれる気持ち良さがありつつ、一番知りたいことは最後の最後まで引っ張る構成は見事でした。
脚本家も言ってたけど、このドラマは「ながら見」ができない。
それだけ目が離せないような重厚で深みがある物語という点でもそうだし、普通に目を離しちゃうと分からなくなっちゃう部分が多い。
見ればわかりそうなこととか、一般教養でしょっていうこととかはセリフで説明しない。
視聴者をめちゃくちゃ信頼している。
だから結構見るのは大変に感じるかも。
個人的には現代パートがめっちゃ好きで、玲央とか沢田とかいずみさんの家族とか好きで、過去パートは嫌いじゃないけど現代ほど好きになれてなかったので、はよ現代パート来いと思いながら見てた。
でも最後まで見て思うのは、どこに軸を置くかで物語の見え方が大きく変わってくるだろうなと思うので、どこかや誰かに肩入れして見るのはいい見方かもしれない。
好き嫌いはあると思うけど、凄いドラマ、素晴らしいドラマであるということは間違いないです。
視聴してない方は是非見てほしいです。
そして「海に眠るダイヤモンド」については次回また長々と語りつくそうと思います。
今回は以上です。
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