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ケアマネジャーは誰の味方か?(9)~地域支援事業の活用策を考える~

ニッセイ基礎研究所主任研究員
三原岳

第1回では、ケアマネジャー(介護支援専門員)を取り巻く環境を俯瞰する図を示しつつ、本コラムの目的として、ケアマネジャーやケアマネジメントの「あるべき姿」から考える必要性を指摘しました。第2回ではケアマネジメントやケアマネジャーが創設された経緯を振り返りつつ、「代理人」の機能が期待される点を論じました。

第3回では代理人機能を考えることで、多職種連携の必要性を指摘し、第4回第5回はインフォーマルケアを巡る話題、第6回は介護サービス事業者との関係で発生する「公正中立問題」、第7回はローカルルール、第8回は「地域ケア会議」を中心に、市町村との関係を考察しました。

第9回も市町村との関係を考えます。今回のテーマは「介護予防・日常生活支援総合事業」、通称「総合事業」を含めた地域支援事業です。一見すると、ケアマネジャーの皆さんとの関わりが薄い話と思われるかもしれませんが、インフォーマルケアとの関係で繋がりがあると思いますので、ご一読下さい。


複雑怪奇な総合事業

2006年度改正で創設された地域支援事業では、地域包括支援センターの運営経費などが確保されており、2015年度改正を通じて、総合事業が創設されたほか、ボランティアとの連携を図る「生活体制支援整備事業」、65歳以上の高齢者に対する介護予防に力点を置く「一般介護予防事業」などが作られました。

図表1:総合事業、一般介護予防事業のイメージ
出典:厚生労働省資料を基に作成

このうち、総合事業と一般介護予防事業のイメージは図表1の通りです。かなり複雑怪奇なので、全て理解する必要はありません。要するに(と言っても複雑ですが)、総合事業については、下記の制度改正が実施されました。

  • 要支援1~2の訪問介護と通所介護(デイサービス)を予防給付から分離し、介護予防事業と統合

  • 市町村独自の報酬や基準を設定することを認めるとともに、市町村の判断で住民主体の運動教室などにも介護保険財源を投入することを容認

  • 市町村ごとに事業全体の予算に上限を設定し、高齢化の伸びの範囲内で運営することを市町村に義務化

この制度改正の狙いは軽度者向け給付のスリム化でした。つまり、介護予防の強化を図るとともに、ボランティアなど多様な主体の参加を促すことで、軽度者向け給付を抑えようとしたわけです。さらに2021年度制度改正では、総合事業や一般介護予防事業の活用を通じて、高齢者が気軽に体操などを楽しめる「通いの場」を増やす方向性も示されました。

しかし、当初の期待とは裏腹に、総合事業の住民主体サービスはほとんど拡大していません。その様子は図表2から分かります。

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