介護保険法令を理解し、使いこなそう! 第11回 ハラスメント対策をケアマネジメントの質の向上に活用しよう!
一般社団法人あたご研究所 代表理事
後藤 佳苗
法令を理解し使いこなすことは、自分と仲間と事業所を守る第一歩です
千葉県船橋市で、あたご研究所を経営している後藤佳苗と申します。
連載第11回目の本号では、運営基準第19条 第4項に令和3年4月から示されているハラスメント対策のうち、事業者が取り組むことが望ましいとされたカスタマーハラスメントについて、確認をします。
1.カスタマーハラスメントとは
顧客等からの著しいハラスメントのことを、「カスタマーハラスメント(略してカスハラ)と呼ぶ場合が一般的です。
介護保険制度は、従前の家族が行うものとされていた介護を社会が支えること(介護の社会化)を成り立たせるシステムとして誕生し、年数を重ねるごとに成長(機能)しています。
しかし、介護保険制度の浸透の後を追うかのように、利用者やそのご家族(以下、利用者等)からのカスタマーハラスメントについて、耳にする機会も増えてきました。
本来、介護を受ける利用者等と介護サービスを提供する事業者や事業所は、対等な立場にあります。
このため、それまでの生活習慣も異なる利用者等とサービス事業者等が、制度を使いこなし、同じ目的(利用者の自立支援)に向かうためには、それぞれの立場から思ったことは伝え合い、すり合わせをしていく必要があります。
しかし、事業者はやむを得ない理由をのぞきサービスの提供拒否ができないこと、高齢者支援においては、利用者の利益とその家族の利益が一致しないことなどもあるため、利用者の自立を支援するためには、そのご家族との対立するような場面もあります。
また、腹立たしいことですが、介護業界を他職種等に比べて格下にみる(見下している)ような風潮があることも事実です。
このような背景等から、介護を提供する職員と利用者等との感情がぶつかり合い、その結果、制度の枠を越えた要望や、著しい迷惑行為が発生しやすい状況になってしまうこともあります。
2.解釈通知に示された事業者の望ましい取り組み
令和3年度の介護報酬改定において、運営基準(法令)が改正され、事業者に事業所内のハラスメント対策が義務付けられました(2023年2月号のColumn参照)。
しかし(残念なことに)、利用者等からのカスハラについては、解釈通知に事業者が講ずることが“望ましい”取り組みとして追加されるにとどまっています。
このため、ハラスメントは許されるべきではないということはみなが共通理解していても、事業者や事業所全体が一丸となって、カスハラに対峙するという風潮までは生まれていない様子です。
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