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介護保険法令を理解し、使いこなそう! 第5回 介護保険制度の法令リスクが高くなりやすい理由④


一般社団法人あたご研究所 代表理事
後藤 佳苗

保有資格、役職など
一般社団法人あたご研究所代表理事、特定非営利活動法人千葉県介護支援専門員協議会理事、看護学修士(地域看護学)、保健師、介護支援専門員、千葉県介護支援専門員指導者など
【略歴と現在の活動】千葉県職員(行政保健師)として、保健所、精神科救急病院、千葉県庁母子保健主管課、千葉県庁介護保険担当課等に勤務し、2005年4月~現職
ケアマネジャー、介護福祉職、行政等職員、コメディカルなどに対し、年200回以上のセミナーを全国で担当する


法令を理解し使いこなすことは、自分と仲間と事業所を守る第一歩です

千葉県船橋市で、あたご研究所を経営している後藤佳苗と申します。

「介護保険制度は、法令リスクが高い」とよく言われます。

法令リスクが高くなりやすい主な理由として、①介護保険法の特徴と3年に一度の定期的な法改正があること ②運営基準(省令)が、事業者や施設で異なること ③運営基準(省令)の条例委任 ④ローカルルールができやすい条例体系 が主な理由として挙げられています。

本号では、主な理由④ローカルルールができやすい条例体系について確認を進めます。


理由④ ローカルルールができやすい条例体系

介護保険制度開始当初は運営基準(省令)で規定されていた基準が、2018(平成30)年度以降(現行で)は、全国の市町村が規定する条例に拠ることを前号で確認しました。

居宅介護支援については、「標準とすべき基準」が規定されていないため、①従うべき基準と②参酌すべき基準の2つの類型だけとなります。

指定居宅介護支援事業所の運営基準を条例制定する際の類型は、表のとおりです。

表 居宅介護支援における条例制定時の類型と運営基準の該当条項 出典:後藤佳苗.新訂 法的根拠に基づくケアマネ実務ハンドブック.東京:中央法規;2021.p15

例えば、運営基準第29条(記録の整備)で確認をしてみましょう。

運営基準第29条は、参酌すべき基準ですから、条例を制定する市町村が、自由に条文を変更することが可能です。

このため、2年間、5年間などの保存義務期間が異なる条例ができています。

ときに、「国が2年と言っているのに、5年とする市町村はおかしい! 国、都道府県、市町村の順で偉いんだから、国が2年と言っているなら2年でいいはずだ」などと誤った解釈を口にするケアマネジャーがいるため、注意が必要です。

確かに、国は「完結の日から2年間」と省令で示していますが、第29条は参酌すべき基準に該当するため、国が示している「完結の日から2年間」は、一つの例示と考えます。

このため、「完結の日から5年間」や「報酬の確定から5年間」などの市町村が条例で定めた市町村ごとに異なるルールに従う必要があるのです。


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