介護保険法令を理解し、使いこなそう! 第5回 介護保険制度の法令リスクが高くなりやすい理由④
一般社団法人あたご研究所 代表理事
後藤 佳苗
法令を理解し使いこなすことは、自分と仲間と事業所を守る第一歩です
千葉県船橋市で、あたご研究所を経営している後藤佳苗と申します。
「介護保険制度は、法令リスクが高い」とよく言われます。
法令リスクが高くなりやすい主な理由として、①介護保険法の特徴と3年に一度の定期的な法改正があること ②運営基準(省令)が、事業者や施設で異なること ③運営基準(省令)の条例委任 ④ローカルルールができやすい条例体系 が主な理由として挙げられています。
本号では、主な理由④ローカルルールができやすい条例体系について確認を進めます。
理由④ ローカルルールができやすい条例体系
介護保険制度開始当初は運営基準(省令)で規定されていた基準が、2018(平成30)年度以降(現行で)は、全国の市町村が規定する条例に拠ることを前号で確認しました。
居宅介護支援については、「標準とすべき基準」が規定されていないため、①従うべき基準と②参酌すべき基準の2つの類型だけとなります。
指定居宅介護支援事業所の運営基準を条例制定する際の類型は、表のとおりです。
例えば、運営基準第29条(記録の整備)で確認をしてみましょう。
運営基準第29条は、参酌すべき基準ですから、条例を制定する市町村が、自由に条文を変更することが可能です。
このため、2年間、5年間などの保存義務期間が異なる条例ができています。
ときに、「国が2年と言っているのに、5年とする市町村はおかしい! 国、都道府県、市町村の順で偉いんだから、国が2年と言っているなら2年でいいはずだ」などと誤った解釈を口にするケアマネジャーがいるため、注意が必要です。
確かに、国は「完結の日から2年間」と省令で示していますが、第29条は参酌すべき基準に該当するため、国が示している「完結の日から2年間」は、一つの例示と考えます。
このため、「完結の日から5年間」や「報酬の確定から5年間」などの市町村が条例で定めた市町村ごとに異なるルールに従う必要があるのです。
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