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しゃぼん玉の中の人

※『さざなみのよる』 木皿泉 河出書房新社 の感想です

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「しゃぼん玉の中で生き、生涯を終えた人」、ヒロインのナスミのイメージだ。きれいで危うく、たくましく泥臭く生ききった。

最後は妖精のように儚くなっても、ナスミは力強く生を全うした。ナスミが肉体を持った普通の人であったことを、ナスミの笑い声が主張している。「ゲヒゲヒ」「ゲラゲラ」と笑うナスミは、感情豊かな、怒りをもストレートに表現する人だ。あなたや私の隣にいつでもいそうな人。

死んでしまえば全てが無に帰すと思っていた。そうではないということを、ナスミが教えてくれた。
子どもがいなくても、自分を覚えてくれている人がいること。忘れないでいてくれる人がいるなら、死んでも無になったわけではないのだ。

残した人に見守っているとメッセージを伝えるには、形があれば長く伝わる。心の中で思い続けられるほど、人は強くないから。
そのためにナスミが仕掛けたトリックは、奇抜で美しい。
余命が宣告されているなかで、残す大切な人たちに何ができるか、を考えさせられる。

残されたものは、それぞれの思い出の中で、その人だけの故人を思い続ける。思い方は人様々だ。死後も愛されるように生きたのが、ナスミだ。力強く、思いが深い生き方だった。いい生き方だったな、と思う。憧れる。

読み進むにつれて現実離れした設定が少し出てくるのもご愛敬。舞台は、しゃぼん玉のなかだから。

本書は言葉が美しい。透明感のある表現はとても印象的だ。心の浄化をしたいときにお勧めの一冊。



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紬 余話(つむぎよわ)
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