不安との闘いが繋がる強さとなって愛する力を育んでゆく
vol.98【ワタシノ子育てノセカイ】
愛の深さが壊せる世界の広さ。
愛の育みは螺旋を描くようにゆきどまりがなく、壊してのぼるほど渦が小さくなるのに、世界は果てしなく拡大してゆく。
渦の小ささは「私」の統合でもあり、自分がまとまりゆくほど、世界の広大さに心が震えるんだ。
自分を壊す営みが、愛する力となってゆく。
◇
ところで私には「実子誘拐」で6年以上離れて暮らす、10代のふたりの息子がいる。
◇
月曜日の代休が明けて、2024年10月2日の水曜日となる。次男ジロウとの下校密会日がやってきた。9月28日の運動会ぶりの再会で、当日の後悔を払拭させたい私はほんのりと緊張する。
実は前日の火曜日に会いに行ったけど、帰宅先が別宅だったらしく、会えずじまいで水曜日となっていた。
ジロウは小学生最後の運動会↓↓の話を、いったい誰と、したんだろうか。
運動会におけるジロウとの奇跡的な接点に、やたらと後悔ばかりだったからか、会えない時間が重なるほどに、あらゆる不安が積み上がっていく。実子誘拐から7年が過ぎようとしているのに、いつまでたっても普通の子育てをしたがる私が登場する。
我が子の運動会の後に、親子で運動会の話をして、たわいもない時間を過ごせないと、私はちゃんと、わかっている。
2024年の運動会では、2017年以来、初めてとなる事態が2つ重なった。内ひとつは、実子誘拐の問題あるあるだからクリアに想像できていた。なのに実際に目の当たりにすると、どうやら私はショックだったらしい。
まだまだ、自分が浅い。
◇
実子誘拐による親子の引き離しは、拉致だ。
年月を重ねるほどに、薄まりゆくかと勘違いしていた想いが、深く、深く、想定外の想いを創り上げてゆき、私に時折、覆いかぶさろうとやってくる。
日本の子どもたちの軟禁生活は、今や日常。社会が親子の引き離しを常識だと思い込んでいるから。実子誘拐の異常性に、誰も違和感のないこの国で、日常をたゆまなく過ごす日々は、強く自分がないと、気が狂う。
学ぶほどに、油断すると、どこにいるのか、わからなくなるんだ。
日常の端々が単独親権制度というイエにまみれていて、あちこちで無意識でただ溺れている姿に、私は時折、胸がつまりそうになる。
どうして私たちはこんなにも、自らすすんで、苦しみの世界で、生きているんだろうか。日本はもっと素晴らしい国であれるのに。
◇
運動会から4日後に再会したジロウにとって、運動会はとうに過ぎた日になっていた。頑張った練習の振り返りや、本番に感じた熱ある想いは、どうやらやっぱり、共有できそうにない。
子どもたちは、未来を生きている。4日前の話ともなれば、大人が想像する以上に、過去に戻らないといけないんだろうな。それでもジロウは、私に促されるがままに、運動会の話をしてくれた。
お母ちゃんがどこにいるか、最初から最後までわかっていたこと。お母ちゃんが休憩時間に、誰かとお話していたこと。お母ちゃんが6年生の記念撮影で、近くまで来てお話しできたこと。
運動会のジロウの主語は、すべてが、お母ちゃんだった。
私は何に不安を感じているんだろうか。失った過去にすがっても、何も生まれてきやしないのに。
◇
10月6日、日曜日。衆議院議員会館で野暮用があり、久しく東京へ足を運ぶ。
出立の昼前。最寄りの駅に向かう車で信号待ちをしていると、自転車を走らせる野球のユニホームを着た子どもが、チラチラこちらを見ながら横断歩道を渡るようすが視界の隅に映る。前の車で消えた姿が現れると、またこっちをチラ見。
ジロウだった。
慌てて窓を開けて「ジロウ!!おかえり!!いってきます!!」と私は叫ぶ。するとジロウはやっぱりお母ちゃんやったか、といわんばかりの顔をして、右手をひょいっと挙げて消えてった。
私の知らない日曜日のジロウと、初めての野球のユニホーム姿。東京に向かう電車の中で、静かに、乱れて、頭に、まわる。
◇
東京滞在中に私はうっかりして、2日間、タロジロにおかえりメッセージを入れ忘れた。3日目の下校時間を見計らい、タロウにLINE、ジロウにDiscord。ふたりして爆速で返信してきた上に、まずもって1往復で終わるジロウが、メッセージを何度も返してくる。
東京へ行く日取りがかたまったとき、タロウにはLINEで、ジロウには密会交流で、1週間ほど留守にする事情を伝えた。するとふたりの返事はなぜか同じで「いつ帰ってくるん?」。
大丈夫。お母ちゃんは、あなたたちを、捨てません。
ちゃんと帰ってくるし、消えてしまわないし、たとえ会えなくったって、心はいつも、そばにいます。繋がるという尊い営みを、私に深く教えてくれたのは、あなたたちなんだから。
いつなんどきも、愛してくれて、ありがとう。
お母ちゃんも、タロジロのように、愛する力をもっと磨いて、私にできる子育てを、一生懸命、頑張ります。
ご署名の受付最終日のスペースにて
社会が地鳴りする体験を
ご支援者のみなさまからいただきました
共同親権の社会へ日本は確実に動いています
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