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愛ある声は心に響き世界を震わせまとめゆく

vol.108【ワタシノ子育てノセカイ

愛という"私"が言動になる。言うことも動くことも愛する力が源で、私そのものが愛だから。

乏しい愛には薄さが宿り、満ちる愛には厚みが宿る。私に内包する愛が、言葉になり、動きになり、外の世界に現れるんだ。愛を育むほどに、私が育まれ、世界も育まれ、いつしか内と外が、ひとつになって育ちゆく。

今年の私はどんな愛を、世界で表現できるかな。

ところで私には「実子誘拐」で7年以上離れて暮らす、10代のふたりの息子がいる。

「恨みとか憎しみとかで戦っても、国は滅ぶだけやから」

2024年の12月21日、交渉術における戦国武将の凄さを、母へ熱弁する長男タロウ。

15歳のタロウは「キングダム」の漫画がお気に入りらしい。タロウ曰く、戦においては、武力はさることながら知略がかなり重要で、軍を率いる将しだいで勝敗が決まるとか。

紀元前に中華統一を目指し成しえた少年たちのおかげで、私たち母子の時間が健やかに盛り上がる2024年の年末。少年たちを支えたみなさま、歴史を記録したみなさま、記録を後世まで残したみなさま、漫画を世に出したみなさま、ありがとうございます。

実子誘拐から8年目となる私は「次」という未来の親子時間を想定しないようになっている。私の想像するありふれた未来が、どうしてもやってこない日々を3年ほど過ごして、自分が消えちゃいそうになったから。

母子でおやすみとおはようを日々交わす暮らしを願うほどに、母としての自分が押しつぶされて、私がいなくなりそうになったんだ。

そして消えそうになる自分を守ろうとしたら、ありふれた日々を求める傲慢な自分に気がついた。ありふれなくとも親子で会える今を、私はどれほど丁寧に過ごせていたのかと。

過去の痛みに惑わされて、未来に逃げようと怯える自分を、ある日フト私は見つけたんだ。

暮らしある私たち親子は、現実にはいなかった。泣いたり笑ったりして、今を生きるタロウとジロウと私だけが、確かに存在していたんだ。

12月18日、ひと月ぶりに私の元へやってきたタロウは、バイバイ間際の車の中で「次は久しぶりにこのお店に行こか」と指さし微笑む。

ありふれた親子時間を前向きに諦めた私だけど、目を背けるような諦めが心に宿るときもある。そんなときはいつだって、子どもたちが「次」という未来を私に運んでくるんだな。

15歳のタロウが示す未来を、今の幸せにしてかみしめると、未来を待たずとも今が未来となってゆく。このお店さん、ありし日から潰れずに、今も営んでくれててありがとう。

煩悩がゆるゆると溶けたせいか、翌19日には「明日ご飯食べに行こ!」とちゃんと未来がやってきた。以降も、これまでの親子時間を埋める勢いで、学期末のタロウはしばしば私の前に現れる。

併せて2学期の後半から、次男ジロウとの下校中の密会交流は、なぜかほぼ毎日となっていた。12歳ジロウのバイバイは今、「明日も来てな」となっているんだ。

そんな年の瀬の20日には「25、26は泊まりでいける」とタロウからLINEが入る。

タロウは翌21日の土曜日もやってきて「泊まりに来るからな!」と知らせ重ね、ジロウは23日の下校密会で「タロウに聞いた?泊まれるねんで!」とくり返し念押す。

どこか歪な家族のカタチを、年の瀬の家族のせわしなさとして感謝した。

25日がやってくる。高1のタロウはすでに冬休みで、小6のジロウは終業式。

朝からやってきたタロウは床屋に行かねばならないらしく、ジロウの下校時間と重なるっぽい。一方のジロウは父宅に帰宅してから、母宅へやってくる予定らしい。ジロウとの合流時間は散髪後で程よくなると想定するも、念のためにメモを残して私はタロウと床屋へ向かう。

到着すると床屋さんは大繁盛。思いのほか時間がおして、駐車場でタロウを待っているとスマホが鳴った。息を切らせたジロウからだ。

ソファにて順番を待つタロウに声をかけて自宅へ戻ると、ジロウはカウチで丸まっていつもの漫画を読んでいた。よく見ると汗だくで、足元には転がったランドセル。

6年生のジロウは生まれて初めて、ランドセルを背負って母の元へ帰ったのに、帰宅すると、家に母は、いなかった。

駐車場での小一時間の使い方がグルグルする私をよそに、ジロウは終始すまし顔。「さ、ランドセル置きに帰らなヤバいから行くで!」とおかえりとごめんねとありがとうで騒がしい私を、ジロウははにかみスルリとかわす。

未だソファに座るタロウへLINEでメモを残し、今晩に必要なお買い物をジロウとしていると、今度はタロウから電話がくる。迎えに戻る時間を伝えると、タロウはちょっと不機嫌そうな声で通話をプツンと切り閉じた。

床屋さんの駐車場にてエクボのタロウを発見する。親子3人が車に収まると、タロウはエクボを深めてゆく。

慌ただしくも幸せに時間は流れ、タロジロはお喋りしながら声が薄れていつしか眠りに就いていた。遅れて私も眠りに就くも、26日の夜明けに眩暈と吐き気で目が覚める。顔を洗って口をすすぎ、薄明り射しこむ寝室へ戻ると、タロジロは私のすぐそばで、ちゃんと、確かに、すやすやと眠っていた。

4年ぶりの我が子の寝顔に、私の心は、追いついているはず。

タロジロが元気に目覚めた26日も、あっという間に日が暮れた。バイバイしても心のゆらゆらが収まらずにいると、タロウから「明日9時前に来て」とLINEが入り、私が現実に戻りくる。

明日27日は、16回目のタロウの誕生日。

27日に会えるかわからないから、25日の夜に誕生日会を計画した私たち。床屋さんの駐車場にて、ジロウとお買い物した山盛りの飾りつけを見つけて、散髪後のタロウは「どんだけ飾んねん」とはにかんでいたんだ。

タロジロのいない家でゆらめく風船に、次の親子時間を投影しながら眠ると、ちゃんと明日という今日がやってきた。

27日はふたりきりの誕生日会となり、ほぼほぼキングダムで埋め尽くされた。誕生日プレゼントは「キングダム」の単行本。タロウからリクエストされて、ひとまず40巻までまとめて発注をした。

戦には武力はもちろん知略も大事で、なんだかんだで将しだい、と教えてくれたタロウが、和やかなお茶タイムにて、将に一番大事なことを私に問うてくる。

「お母ちゃん、戦いではな、" げき"が最も重要やねんで。苦しくなった局面で心に響く声をあげれば、みんなして踏ん張れるから。檄は最強やで」

お母ちゃんはこれまで、タロジロのたゆまない檄で、苦境の日々を乗り越えてきました。明ける日々に、感謝できる人生を、歩ませてくれて、ありがとう。

タロウ、私をお母さん16歳にしてくれて、心から感謝しています。



2024年12月25日@後光の射す"このお店"
散髪したてのタロウ15歳→
←26に散髪予定のジロウ12歳
↙しっかり食べなさいと注意うける母まどか

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