ランチェスター戦略でミズタニにしかできない挑戦を~株式会社ミズタニ~
株式会社ミズタニ様は、京都市南区の福祉車両専門店です。
昭和14年4月に、現在の代表取締役である水谷匡様のご祖父様が、自動車整備業として創業しました。“お客様に喜んでいただくこと、心からありがとうと言ってもらえることが私達の幸せです”という想いを大切にし、お客様や社員様の幸せをカタチにする企業様です。
そんな水谷様に、代表になるまでの経緯や、事業の戦略などを伺いました。
長い歴史を持つ会社の3代目社長として就任した
––水谷様が株式会社ミズタニの代表に就任した経緯を教えてください。
株式会社ミズタニは、昭和14年4月に私の祖父である水谷一昌が創業しました。その後、2代目社長として父が就任しましたが、30年ほど前に父が不慮の事故で車いす生活になってしまったのです。
この出来事をきっかけに、私は株式会社ミズタニの代表を務めると決意しました。
当時私は、自動車用品関連会社のBtoBの営業をしていましたが、まずは株式会社ミズタニの社員として入社。
それから課長や専務などを経験し、代表に至ります。
株式会社ミズタニに入社してからは、弊社の将来について、すべて自分で考え決断してきました。
第2創業として会社をアップデートした
––代表に就任してからはどのような会社を経営してきたのでしょうか?
私が代表に就任してから、「第2創業」という位置付けで経営をしてきました。私は3代目の社長であるにもかかわらず、なぜ第2創業と呼んでいるかというと、前述の通り私の父は社長2年目で事故に遭い、「守りの経営」になってしまっていたからです。
父は自分自身の身体をケアしながら経営をしていたため、攻めの経営は身体的理由で難易度が高かったのでしょう。そこで私はアップデートが必要だと感じ、様々な戦略を行いました。
まずは、当時2箇所にあった拠点を1つにまとめたこと。
具体的には、本社が整備工場と中古車販売に分かれていましたが、整備工場を撤退してドラッグストアさんにお貸ししています。そうすることで、営業外収益の確保に繋がっているのです。
また、拠点を1つにすることにより、1顧客1担当制を実現できました。お車の購入からメンテナンスまでワンストップサービスにすることで、お客様にもご安心いただける店舗となっています。
そして、拠点をまとめたことにより、社員のベクトルをひとつにすることに成功しました。
拠点が2箇所に分かれていると、それぞれの方針が異なり、社員のまとまりがなくなります。しかし、一つ屋根の下で働くことで、社員みんなが同じ方向を向いてお客様対応できるようになったのです。
経営理念である『京都のモビリティライフに幸せを運びます』には、様々な想いが込められている
––貴社の企業理念について詳しくお伺いできますでしょうか。
20年ほど前に『京都のモビリティライフに幸せを運びます』を企業理念としました。
しかし、介護福祉車両はまだまだ需要が少なく、ライバル店も少ない状況です。そのため、販売エリアは本社がある京都市南区から関西や関東にとどまらず、九州や北海道にまで及んでいます。
こうした理由から、ここ数年で『京都からモビリティライフに幸せを運びます』という理念に変更しました。
また、当初は企業理念に「カーライフ」という言葉を入れようと考えましたが、そうすると「タイヤが4つ付いている車」に限定されてしまいます。
今後は車だけにとどまらず、多角的な経営をしたいという想いを込め、スマホなどの移動体通信を意味する「モビリティライフ」にしたのです。
“ランチェスター戦略”を軸に事業を拡大してきた
––貴社は全国的にも珍しい福祉車両専門店ですが、どのような戦略で事業を展開してきたのでしょうか?
弊社は「ランチェスター戦略」を軸に経営をしてきました。
具体的には、「人と違うことをする・小さな領域でNO. 1を目指す・万人受けを狙わない・ターゲットを絞り込む・勝ちやすきに勝つ」という戦略です。
そこで、弊社は福祉車両専門店に転換しました。福祉車両専門店にたどり着いたきっかけは様々ですが、一番大きな要因は、やはり父が車いす生活になったことです。自由に移動できる喜びを多くの人に感じていただきたいという想いが強くありました。
また、福祉車両専門店は競合他社が参入しにくい分野でもあるため、安定的な利益を得られると考えたのです。
今後は日本の高齢化率の増加とともに、福祉車両の需要も高まるでしょう。3人に1人が65歳以上とされる日本において、福祉車両の購入やレンタル、月単位のサブスクリプションを通して外出を楽しめるようにしたいと考えています。
表彰や広報活動で多くの方に福祉車両を知っていただきたい
––福祉車両を多くの方に広めるために取り組んでいることはありますでしょうか?
弊社は様々な活動を行い、多数の表彰を頂いております。
例えば、京都商工会議所主催の「知恵ー1グランプリ」というビジネスコンテストで、優秀賞をいただくことができました。また、日本自動車会議所主催の「クルマ・社会・パートナーシップ大賞表彰式」でも表彰していただきました。
広報活動としては、車いすユーチューバーとして知られる「高橋しょうこさん」にタイアップ動画をアップしていただいたり、「おとなの自動車保険」にインタビューをしていただいたり。
このように、少しでも多くの方に福祉車両を知っていただきたいという想いから、様々な広報活動を行っております。
経営理念に基づき、社員やお客様だけでなく社会貢献も行う
––最後に、水谷様が経営されるうえで大切にしていることを教えてください。
弊社が大切にしているのは、松下幸之助さんが提唱されている「会社経営に成功する3つの条件」。3つの条件とは、「絶対条件」「必要条件」「付帯条件」です。
1つ目の「絶対条件」は「経営理念」のことで、松下幸之助さんは経営理念がなければ事業が成り立たないとおっしゃっています。
2つ目の「必要条件」は「能力を活かす環境」のこと。ですので、働く仲間やその家族の幸せを追求し、夢や目標に向かい成長することを私自身も大切にし続けたいと考えています。
そして3つ目の「付帯条件」は「戦略戦術」であり、前述の通り弊社はランチェスター戦略を取り入れています。さらに、SDGsや循環型社会への貢献も引き続き行う予定です。
これまで私は経営理念を非常に大切にしてきましたし、これからも変えるつもりはありません。
『京都からモビリティライフに幸せを運びます』という経営理念に基づき、今後も福祉車両事業にとどまらず、多角的な事業を展開していきます。
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