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贈り物
先日、友人が結婚式の日取りが決まったと報告してくれた。
友人とは10年ほどの付き合いになる。
結婚式の日取りが決まったら、一番に報告したかったと嬉しそうに話してくれた。
友人代表挨拶を頼みたい。そう言われて、初めての依頼に嬉しい気持ちと一緒にまずい事になったぞ。。と焦りが湧き起こる。
困り果てて他の友達に相談した。で、勧められたのがとある本。
『本日は、お日柄もよく』
お、聞いたことあるし、何なら読んでみたかった本だわ。
ウキウキで某フリマアプリを開き、すぐに購入した。
数日後、手元に届いた本の表紙は、水引の装飾に柔らかな字体。。何か素敵な物語の予感がして、はやる気持ちを抑えながらページを捲ってみる。
物語は序盤、つまらない結婚式のスピーチに退屈した主人公が、スープに顔から突っ込む所から始まる。今回スピーチをする側の身からすると冷や汗の滲む展開だ。
そして退席した主人公にそこで待っていたのは、インパクトのある出会い。。。
というつかみのところまで読み進め、とっても気に入った私は、すぐに勧めてくれた友達に報告した。
勧めてくれた本、買って読んでみてるよ。面白い!!
スマホ越しにそう言いながら、手元にあった本をペラペラしつつ膝の上に置いた時、不意にカバーが外れて、見知らぬ名前と手書きの文字が目に飛び込んできた。
???
見間違いじゃない、見慣れない誰かの字が書かれていた。
ペロリと剥がしたカバーに書かれていたのは、会った事もない人から見知らぬ人に向けての手紙だった。
おかえり。
優しさの滲み出るような平仮名から始める手紙は、
大好きという言葉で結ばれている。
右手にあったスマホですぐに購入元に連絡し、この手紙の差出人に心当たりはないか確認した所、友達との返事だった。
見つけたのは偶然だったけれど、見つけたからには受取人に届けるのが私の役目。
このまま今すぐ届けに行きたいとも思ったが、生憎このコロナ禍では他人の手を借りざるを得ない。
ヤキモキしながら夜を越し、翌日郵便局で速達発送して、結局手元に届けられたのは、手紙に気づいてから2日後だった。
受取人曰く、2年ほど前に書かれた手紙であろうとの話。
気付かれないかもしれない場所に手紙を残す。
どんな心持ちだったのだろうかと、他人ながら送り主に思いを馳せてはみたものの、知る由もない。
一つ分かっていることは送り主が受取人を大切に思い、寄り添おうと思っているという事。
少し母親を思わせるような心配や慈しみも感じる内容が胸にせまる。
素敵なお友達。
手紙を持つべき人の元に返せて良かったと思っている。
偶然が重なって目にした、知らない人から知らない人に宛てられた手紙。
本も最後まで読めてはいないし、スピーチについてのヒントには現時点で全くなってはいないけれど、私自身も友人に素直な気持ちを祝福を伝えたいと思う。
暖かくなり始めた春先に、こちらまで贈り物をもらったような、温かい気持ちになれた出来事だった。