見出し画像

覆面駒のルールの補足

WFP作品展登場ルール一覧 には覆面駒の説明が下記の通り記載されています。

【覆面駒】
種類が不明の駒。着手の合法性、攻方王手義務を満たせる可能性があれば、それを満たしているものとして手順を進めることができる。駒種が確定すると通常の駒に戻る。
[補足]
・透明駒と異なり所属・位置は判明している。
・手順表記上「成」は指定できるが、「生」は指定できない。つまり、移動についての情報と、駒が裏返ったという情報は与えることができる。
・初形が合法局面であることが仮定される。つまり、駒の枚数が正しいこと、行き所のない駒や二歩がないこと、(受先形式でない場合)受方玉に王手が掛かっていないことを推論に含められる。
また、特に指定のない限り標準駒数であることも推論に利用できるが、ルールから明らかでない限り双玉・単玉両方の可能性がある。
・フェアリー駒を使う作品の場合、特に注釈がなければ通常の駒以外に、初形に存在するフェアリー駒にもなれる。

本記事では

・手順表記上「成」は指定できるが、「生」は指定できない。

について説明します。

これは、覆面駒では「成・生を選択できる駒が生を選択して動いたこと」と「そもそも成ることができない駒が動いたこと」を区別できないということです。具体例で説明します。

もし初手34▲成とすれば、後ろに動けて成れる駒は飛車しかないので、33飛が34飛成と動いたことが確定します。受方は15玉と逃げるしかありません。

初手34▲成に15玉の局面

上図は打歩詰の局面になっています。これは失敗です。

もし上図で34龍が生の飛車だったとすれば、16歩、25玉、37桂で詰ますことができます。しかし、初形で「34▲生」として、「後ろに進むことができる駒で、不成ができるのは飛車しかないから▲=飛」と主張することはできません。覆面駒では、「34▲」という棋譜表記ができません。

実際の将棋盤の3三の地点に、何と書いてあるか掠れて全く読めない先手の駒があるのをイメージしてください。先手がいま、3三にあるその駒を中指で引いて3四の地点に移動させました。この動作から考えられる可能性は下記の2通りです。

  • 3三飛を不成で3四に移動させた

  • 3三金(小駒成駒)を3四に移動させた

先手の動作からは、飛車を不成で動かしたことは確定しません。金やと金などの成れない駒を3四に引いた可能性があり、両者を区別できません。

以上から、覆面駒において手順表記上「生」を指定できないのは、自然なルール設定であることが分かります。

34▲、15玉の局面

ちなみに、例題の解答は下記の通りです。

25歩、15玉、27桂、14玉、15歩、25玉、34▲成 迄7手

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?