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よだれ
夜、何をしていてもよだれの匂いがした。
テレビを見ていても。
本を読んでいても。
ボーっとしていても。
原因は全く分からなかったが、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
しかし、このまま眠るのは少しもやっとしてしまうので、なんとか記憶を遡ると、原因が判明した。
娘のよだれが、顔についていたのだ。
娘が寝る少し前、よだれまみれの顔で僕をハグしてくれたことを思い出した。
おそらくこの匂いは、その名残りなのだろう。
そう考えると、この匂いがますます好きになった。
一生残しておきたいが、そうもいかないので、どこかで香水を開発するタイミングがあったら「娘のよだれ」を作ろう。
だいぶ危ない気がしたので、やっぱりやめておこう。