パインぱん、な夏①
パインぱん、な夏①
4月から他県の大学に通いだして、3か月ぶりに地元に帰って来た。
たった3ヶ月だけど、私にとっては3年ぶりくらいの感覚だ。一人暮らしというのはなかなか大変だった。高校1年から付き合っていた彼氏と別れたことも大きい。
実家は最寄駅から徒歩10分。大きめのかばんを抱えて少し歩きだしたところで、新しいカフェができていることに気がついた。前はおにぎり屋さんだったところだ。
この時間に家に帰っても誰もいないし、小腹も空いてるし、寄ってみようかな。窓越しに見る限り混み合っても、ガラガラでもなさそうだ。
可愛らしいマリンブルーの木の扉を開けた。
「いらっしゃいま………せ」
黒エプロンのスタッフがこちらを見た。
「あっ…」
うわ、中学の同級生の泉くんだ。
「あ、あ、あちらの席どうぞ」
ちょっとぎこちない?バイト始めたばかりかな?そんなところに中途半端に知ってる人が来るのが1番気まずいよね。なんだか申し訳ない。
「ありがとうございます」
案内された2人用の席に座る。
海の家のような白い木のテーブルに白いイスは高級感はないけれど清潔で清々しい。
かばんを向いのイスに置いてメニューを見る。
何があるかなぁ…🎵
ナポリタン、ピザ、パンケーキ…あ、これにしよう!
季節のフルーツサンド!
夏季(桃・キウイ・パイン)
いいじゃない、いいじゃない♡
スタッフが中途半端に知ってる人だった気まずさも忘れて、テンションが上がる。
いいタイミングでスタッフ泉くんが水とおしぼりを持ってきてくれた。
「お待たせしました。ご注文はお決まりですか?」
「このフルーツサンドとアイスコーヒーのブラックお願いします」
「だと思いました。フルーツサンドとアイスコーヒー、ブラックですね」
だと思いました?
「あ、はい。できれば氷少なめでお願いします」
「氷少なめ、かしこまりました」
さっきはぎこちなさそうに思えたスタッフ泉くんは、少しニヤけていた。
だと思いましたって、そんなに私のこと知らないくせになんなんだ。まあ、取り合わないようにしよう。フルーツサンドに集中しよう。
つづく