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学校がもたらすはずだった価値観の広がりがなくなった?

「学校」の役割は一言では語りきれない。教育だけではなく、福祉も含まれているわけだし。

そんな中でも学校の一つの役割は、家庭という最小単位の社会から、地域という次の広がりをもつ社会を子どもたちが体験できる環境の提供だと思う。


「こんな世界もあったのか」と感じることで、子ども自身が自分の見方を変えられる場所なのではないかと思う。

そうやって世界の広がりを感じながら、成長していける場所なのではないか。

ただそれが現在は機能不全に陥っているのではないかと思っている。

昔は・・・

学校制度ができた当初は、そのころメインの産業だった農業の人たちは、学校に行かせることにあまり好意をもっていなかったという話を聞いたことがある。


大事な労働力をお金になるかどうかもわからないところに行かせるのはもったいない、ということ。

そういう状況だったとしたら、家庭の価値観は、体が丈夫で屁理屈言わず、がんがん動ける子どもに価値が置かれていただろう。

そして、体は弱いが頭が回るような子はあまり価値が置かれなかったかもしれない。

それが「学校」に行きはじめると、体が弱い子だったとしても、その頭の回転のよさが「学校」というところでは価値がでてくる。

それまで自分が一番と思っていた体が丈夫な子が、自分の持っているメガネに気づき、体が弱かった子が自分に対する思いを転換するきっかけになるかもしれない。

もちろんもっと広い意味で「こんな世界があったのか!!」という知識を得ることで、その世界が広がっていったのではないか。

ともすれば、無意識かもしれないが、親の望んでいないような価値観が「学校」にはあって、それこそが視野を広げる機会だったのではないか。

現在・・・

現在はどうだろうか。その家庭の価値観と学校の価値観のギャップがほぼないような気がする。

家庭の価値観の延長線上に学校があるだけで、特に世界が広がるわけでもない。

家でも学校でも雰囲気として、「頭がいいこと」が最上位にずっとあるのではないか。

よそはよそ、うちはうちという感覚は減って、家庭でも学校でもみんないっしょがいいという空気が漂い続けているのではないだろうか。

親が望む価値観をそのまま学校も受け継いでしまっているのではないだろうか。

「できること」が何より大切で、「できないこと」が悪いことだという空気しかないのではないか。

そんな風だから、息苦しさがずっと続いているのではないだろうか。

その結果視野が広がることもなく、成長することもなく、子どものまま大人になってしまっているのではないだろうか。

そして、これは家庭と学校だけではなく、社会全体がそういった単一の価値観の支配されてしまうことにつながり、その結果、息苦しくなり、ちょっとでも隙がある人をみれば、その息苦しさのはけ口にしてしまうのではないだろうか。

だとすれば・・・

そんな風なことを考えさせられる本に出会ったことがあった。(どの本だったら思い出そうとしても思い出せない・・・)

そして、もし今の学校が、そういった息苦しさ、生きにくさを生んでしまっていて、子どもの視野を広くしてくれるような新たな価値観を提供できていないのであれば、そういった家庭や社会とは違った価値観を提供できるような学校をつくるのがいいのではないか、と考えた。

みんながいっしょになる必要はないんだよ。

自分のペースでやることもありなんだよ。

できることもできないこともそこに優劣はないんだよ。

そんなことを子どもが体感できるような学校をつくる必要があるのではないかと思った。

だからこそ・・・

これは言うのは簡単だ。ところどころでよく耳にする言葉だ。

しかし、それを実際に仕組みとして実践しているところはほとんどない。

既存の学校は、すべてこの単一の価値観の枠組みに飲み込まれてしまっているからだ。

そんな状態の中、大きく変えようとするのは、国単位では無理だろう。

全部に同じようにという発想自体がその枠組みの中にあるからだ。

だとすれば、各地域の、市町村単位でこうった取り組みをやることが大事なのではないかと思う。

もちろんそこには資源の格差がある。しかし、すべてを持っている地域などないのだと思う。だとすれば、その土地にしかもっていない資源に目を向けて、いかに活用していくかということを考えることが大事なのだと思う。

そして、なにより大人が学び、成長し、今までとは違う社会を創り上げていくのだということを強く思い行動することが大事なのだと思う。

家庭という安全地帯(そう願いたい・・・)から、違う世界に足を踏み入れ、新たな可能性を感じられる。そんな学校にしたいなぁと思って学校をやっている。

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