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50年物のアラジンストーブを修理する町の電器屋さんの話

日中のほとんどを過ごす仕事部屋の照明が古い天井直付けのタイプで、蛍光灯もカバーも年季が入っており、暗かった。賃貸契約したときから「照明変えたかったら変えていいですよ」と言質をもらっていたのだけど、先日蛍光灯が一本切れてしまったので、さっそく替え時が到来。

むかし同様な照明の設置された部屋に入居したことがあった。そのときは、その前の部屋で買って使っていたLED照明を持ってきていたので、それに取り替えたくて隣に住んでいた大家さんに頼んでみたら、電器屋を呼んで費用大家さん持ちで引っ掛けシーリングに取り替えてくれた。

謎のストーブが並ぶ町の電器屋

ということでパターン自体は学んでいたけど今回は自分で手配する必要があった(費用も自分持ち)ので、せっかくだからローカルにやってみようと思い、近所にある町の電器屋さんに行ってみた。

すると、電器屋の店頭のガラス窓の向こうにレトロなストーブが大量に並んでいた。なんだろう?

店に入ると御年92になるというおばあさんが顔を出した。店を切り盛りしている息子さん(かな?)は外に出ているので戻ったら電話させますね、ということなので、電話番号を伝えて店を出た。年齢を感じさせないしっかりした受け答えをされるおばあさんだった。

謎のストーブの正体

午後、電話がかかってきて、それからしばらくして店主の気さくなおっちゃんが電気工事しにやってきた。やっぱり相当古い照明だったらしいが、難なくさっさとシーリングに取り替えてしまった。そんなんでいいの?というぐらいの費用だった。ありがたい……。

店主が乗ってきたハイエースにも、さっき店頭で見たようなストーブが積んであった。何かと尋ねてみたら、アラジンストーブという英国生まれで根強いファンのいる歴史の長い灯油ストーブブランドだそうだ。知らなかった。

そこの電器屋さんが愛知県で唯一の正規修理代理店らしい。だから店頭にも大量に並んでいたわけだ。売り物ではなく、修理待ちの列だった。

50年物のアラジンストーブ

ハイエースに積まれていたストーブは、修理できない故障品を長年付き合いのあるオーナーから引き取ったものだという。なんと遡ること50年前、そのストーブのオーナーの父親が、当時の月給のほとんどを叩いて当時受験生だったオーナーのために買ってくれたものだったそうだ。

なぜ修理できないのか? 致命的な部品が壊れてしまって、交換部品があれば修理できるらしいが、なにせ古いものなので交換部品が手に入らないのだそうだ。いつか同型品のタマが出てくれば修理できるかもしれないが、それがいつ出てくるかもわからない。だから、修理できない。

オーナーも「鬼嫁に二束三文で処分されるぐらいなら」ということで泣く泣く手放し、電器屋のおっちゃんが引き取った次第。車に積んであったのは、これ自体を修理はできないけど、出張修理先で部品取りに使えるかもしれないからだそうだ。

長年アラジンストーブの修理に携わってきたおっちゃんからすると、50年前の型でも「まだ50年」ぐらいの感覚だという。オーナーと50年を共に過ごしてついに壊れてしまったこのストーブも、使える部品はまた別の壊れたストーブに付け替えられて、次の歴史を生きていく。

アラジンストーブとはそういうプロダクトらしい。

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実はちょうど最近灯油ストーブでも導入してみようかと考えていたところだったので、アラジンストーブに俄然興味が湧いてしまった。ちょっと調べてみると、オークションで出ているものなどは相応に年季の入った外観のものが多いと気づく。ハイエースに積まれていたストーブは50年物とは思えない、錆一つない綺麗な外観をしていた。50年間、オーナーが父親から贈ってもらったものを大切に手入れしていたのだろう。

愛知県唯一の修理店ということもあり、おっちゃんは修理に呼ばれれば岐阜の中津川だろうが馬籠だろうが、どこへでも行くそうだ。50年以上生き続けるアラジンストーブと、それを支える町の修理職人。カッコいいな。

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みずのつくる
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